宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

【冥王星探査】衛星ニクスとハイドラはサイズは同じでも多くの違いがある

2015年08月07日 | 冥王星の探査
冥王星の衛星ニクスとハイドラの高解像度画像が公開されました。

この画像は、NASAの冥王星探査機“ニューホライズンズ”が、
冥王星系をフライバイ(接近通過)した際に撮影したもので、
7月18日に地球に届いたものです。

これまで公開されていたニクスとハイドラの画像は、
解像度が荒い、ドット絵のようなものでしたが、
今回初めて、その姿かたちが分かるほどの画像が公開されたんですねー
左がニクスで右がハイドラ


ほぼ同じサイズでも多くの違いがある

ニクスは約16万5000キロ離れたところから撮影されたもので、
ジェリービーン形の姿がくっきりと写っています。

この写真の解像度は3キロほどで、
写真から分かったニクスの寸法は42キロ×36キロほど。

なお、元の写真は白黒で、
そこに“Ralph”という観測機器で得られた色情報を加えて、
カラー画像に加工されています。

ハイドラは約23万1000キロ離れたところから撮影し、解像度は1.2キロほど。

この写真から、長さは55キロで幅が40キロほどだと分かりました。

両者は、ほぼ同じサイズということ以外は、多くの違いが見られます。

たとえばニクスには、赤味がかった領域が見られます。

解像度が低いので、はっきりとしたことは不明なのですが、
科学者らによると、この部分はクレーターだと推測されています。

なお“ニューホライズンズ”には、まだ多くの観測データがため込まれていて
現在、順次送信されているんですねー

なので、この赤い領域の正体も、
今後追加のデータによって明らかになるのかもしれません。

一方、ハイドラの画像では、
少なくとも2つの大きなクレーターがあるのが見えています。

1つは右下の黒く影になっている部分で、
もう1つは上部にある、他の地域より一段暗くなっている部分です。

後者は、表面の地質が異なるため暗く見えているようです。

衛星ニクスとハイドラは、
2005年5月にハッブル宇宙望遠鏡によって発見されています。

ニクスもハイドラもひじょうに小さい星なので、
“ニューホライズンズ”が接近して観測するまで、
その正確な形は分かっていませんでした。

なお冥王星にはカロン、ニクス、ハイドラの他にも、
ケルベロス(2011年発見)とステュクス(2013年発見)という衛星があります。

この2つの衛星の画像は、今年の10月中旬以降に送られてくるそうです。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 【冥王星探査】広がる氷の平原と、太陽風ではぎ取られる大気

【冥王星探査】広がる氷の平原と、太陽風ではぎ取られる大気

2015年08月06日 | 冥王星の探査
地形の観測

“ニューホライズンズ”が撮影した冥王星のクローズアップ画像に、
クレーターのない、広大な氷の平原がとらえられました。

氷の平原には、溝で区切られたような不規則な地形などが見られ、
地形の年齢は1億歳以下と若いんだとか…

ひょっとするとこの地形は、
いまでも地質学的なプロセスが進んでいるのかもしれないんですねー
冥王星の氷原。冥王星から約7万7000キロの距離から撮影。

氷原が位置しているのは、
すっかり冥王星のシンボルとなった「ハート模様」の西側(左側)。

氷原は非公式には“スプートニク平原”と呼ばれています。

この地形が、どのようにできたのか?
については、説明は簡単にできそうにないのですが、
再接近前の予想を上回る発見になったそうです。

連続する不規則な形は幅およそ20キロほどで、
溝のように見える地形に囲まれ区切られています。

溝の一部には暗い物質が存在し、
溝に沿って周囲の地形よりも盛り上がった丘のような地形が、
集まっているところもありました。

さらに、表面に小さなくぼみができている領域も見られ、
氷が昇華した際にできた可能性があるそうです。

氷原には、同じ方向に揃った長さ数キロの暗い筋も見つかっていて、
これは氷原に吹く風が作ったものかもしれません。

また、可視光・紫外線撮像装置“Ralph”による観測からは、
同領域に一酸化炭素の氷の存在が明らかにされました。

一酸化炭素の量は中心にいくほど増えているようです。
「ハート模様」の西半分に見られる一酸化炭素の分布。
等高線は一酸化炭素の濃度を示す。

さらに高解像度の画像やステレオ画像が見たいところですが、
それには、膨大なデータ量を速度が遅い通信で送る必要があるんですねー

なので届くのは、しばらく先のことになりそうです。


大気の観測

“ニューホライズンズ”は、
冥王星の地表だけでなく、大気や上空の観測も行っています。

上空1600キロまでの大気を観測したところ、
窒素の豊富な大気が広範囲に広がっていることが分かりました。

また、冥王星周囲太陽風観測装置“SWAP”は、
再接近から1時間半後に太陽風内の空洞を観測。

冥王星の背後(太陽の反対方向)に10万キロ前後にわたって長く伸びる、
窒素イオンで占められたプラズマの尾を検出しています。

どうやら冥王星の大気が太陽風によってはぎとられ、
宇宙空間へと放出されているようです。
窒素イオンで占められている太陽風内の空洞、プラズマの尾などを示した図。

今後、紫外線撮像装置“Alice”と電波実験装置“Rex”による大気計測データから、
冥王星の大気喪失の割合が解明されることになるようです。

冥王星の大気と表面の進化の謎が明らかにされたり、
太陽風との相互作用の範囲が決定できたりすると期待されています。


衛星ニクス

また、冥王星最接近前の7月13日に59万キロの距離から撮影された、
衛星ニクスの画像も公開されました。

画像では丸い天体に見えるのですが、これは見る角度によるもの。

実際のニクスの形状は、長さ40キロほどの楕円体と考えられています。
望遠撮像装置“Lorri”がとらえた衛星ニクス。約6キロほどの小さい地形まで見えている。



こちらの記事もどうぞ ⇒ 【冥王星系探査】冥王星の衛星ハイドラは、じゃがいも型

【冥王星系探査】冥王星の衛星ハイドラは、じゃがいも型

2015年08月05日 | 冥王星の探査
今回は衛星ハイドラのおはなし。

画像はNASAが公開した
探査機“ニューホライズンズ”が撮影した冥王星の衛星ハイドラ。
姿を現した衛星ハイドラ

ハイドラは、2005年5月にハッブル宇宙望遠鏡によって、
衛星ニクスと共に発見されました。

ハイドラもニクスも小さい星で、
これまで、その正確な姿かたちは明らかになっていませんでした。

この画像は、ハイドラから約64万キロ離れたところから撮影されたもので、
不鮮明ながらも、ジャガイモのような形をしていることや、
明るい領域と暗い領域があることが確認できます。

画像の1ピクセルは約3キロに相当し、
この写真から横の長さは約43キロ、縦は約33キロほど、
また、暗い領域は直径10キロほどと推定されています。

同じ冥王星の衛星カロンと同じように、
ハイドラもまた水氷によって構成されていると考えられています。

とりあえず“ニューホライズンズ”は、
ハイドラの基本的な物理的特性を明らかにできたと言えます。

これから届くであろう多くの画像によって、
ハイドラのさらに鮮明な姿をみることができることを期待しましょう。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 【冥王星探査】カロンは若く変化に富んだ地形を持つ衛星

【冥王星探査】カロンは若く変化に富んだ地形を持つ衛星

2015年08月04日 | 冥王星の探査
NASAの冥王星探査機“ニューホライズンズ”が撮影した、
冥王星の衛星カロンの高解像度画像。

この画像は、カロンから46万6000キロ離れた場所から撮影されたもの。

地形の凸凹が分かるほど、
高解像度の画像が得られたのは史上初のことになるんですねー

中央の少し下を横に走る、谷や崖のように見える部分は、
おそらくカロンの地殻が広がって割れたことで形成されたと考えられ、
長さは約1000キロほどと推定されています。

また、右上には渓谷のよな地形も見え、その深さは7キロから9キロほどだそうです。
カロンの驚くべきべきで、若々しく変えられた地形。


想定よりもクレーターが少なかった

科学者たちが驚いたのは、
カロンの地表にあるクレーターが想定よりも少ないこと。

特に、写真の下にあたる部分は、太陽の光が斜めに差し込んでいるので、
クレーターが見つけやすいはず。

なのにクレーターは、まばらにしかなく、
また巨大なクレーターも確認できず…

カロンに良く似た大きさで、
やはり氷が主体となっている土星の衛星テティスやディオネには、
大小さまざまな数多くのクレーターがあるんですねー

それと比べると、その違いがよりはっきり分かります。

今のところNASAでは、
ごく最近に地質活動が起こり新しい地面が現れたことで、
クレーターが消えたと考えているようです。


冥王の星の衛星にある「黒い領域」

カロンの北極域には、これまでの観測でも見えていた黒い領域が、
より精細に写っています。

この部分は黒い鉱物があると考えられています。

また非公式なことですが、
この部分は「指輪物語」に登場する国の名前“モルドール”と、
名付けられていています。

“モルドール”は冥王サウロンの王国で、
シンダール語で「黒の国」という意味を持っているそうです。

冥王の星の衛星にある「黒い領域」には、ふさわしい名前になっているんですねー


より鮮明な画像は後のお楽しみ

今回公開された写真は、ファイルサイズが大きいので、
地球へ送信しやすいように“ニューホライズンズ”によって圧縮がかけられています。

なので、いくつかのディテールが失われているそうです。

無圧縮のデータは探査機内に残っていて、
今後時間をかけてダウンロードされる予定です。

また、別の距離、角度から撮影された画像もあるので、
今後の分析によって、渓谷やクレーター、
そして“モルドール”の、より鮮明な姿が明らかになるはずです。

“ニューホライズンズ”は7月14日に、
冥王星系を猛スピードでフライバイ(接近通過)し、
最接近時には冥王星から約13000キロのところまで迫りました。

無事に冥王星系を通過した“ニューホライズンズ”は、
これから16か月かけて膨大な量のデータを地球に送信し、
研究チームが、そのデータを解析することになります。

冥王星系への接近は終りましたが、
これらか多くの発見が私たちを驚かせてくれると思います。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 【冥王星探査】これまでより「大きくなった」冥王星

【冥王星探査】これまでより「大きくなった」冥王星

2015年08月03日 | 冥王星の探査
NASAの冥王星探査機“ニューホライズンズ”の
望遠撮像装置“LORRI”による観測データから、
もっとも大きな謎のひとつ、冥王星の大きさが明らかにされたんですねー

その直径は2370キロで、
これまでの推定値より、やや大きな数値になったようです。
冥王星と衛星カロン。望遠撮像装置“LORRI”による白黒の観測データに、
可視光・赤外線撮像装置“Ralph”によるカラーデータを合成したもの。
2つの天体の明るさや色の違いがハッキリと分かる。

実は、この結果は推測されていたことだそうです。

今回の観測で分かったことは、
冥王星が、海王星以遠の天体の中で一番大きいこと。

これまで冥王星の大きさについては、議論が続いていたのですが、
やっと終止符が打たれたことになります。


大きくなるとどうなる

冥王星が少し「大きくなった」ことで、
これまでの想定よりも密度は少し低くなり、内部の氷の割合は高くなりました。

冥王星の大きさが数十年間も謎になっていた理由は、
大気という複雑な要素のためでした。

一方で、最大の衛星カロンには大気がないので、
地上の望遠鏡からでも簡単に直径が分かったんですねー

“ニューホライズンズ”の観測により、
これまでの値(直径1208キロ)が再確認することができました。
地球、冥王星、カロンの大きさの比較。冥王星は地球の18.5%、カロンは9.5%。


近づいて分かってきた冥王星の衛星たち

望遠撮像装置“LORRI”は、
冥王星の小さな衛星ニクスとヒドラにも焦点を合わせています。

ハッブル宇宙望遠鏡によって2005年に発見されたニクスとヒドラは、
ハッブルの能力を持ってしても、小さな光点にしか見えませんでした。

なので“ニューホライズンズ”が、
冥王星最接近を迎える最終週に行われる観測が待たれていたんですねー

ニクスの大きさは約35キロ、ヒドラは約45キロで、
表面がひじょうに明るいので、氷が存在しているのかもしれません。

また、さらに小さい衛星ケルベロスとステュクスの大きさについては、
今後送信されてくるデータを待つことになります。

カロンについては、さらに新しい画像が公開されています。

広く深い谷のような地形が明らかになっていて、
これはグランドキャニオンよりも大きいんだとか。

周囲に明るい物質が飛び散ったように見える、
衝突クレーターと思われる地形や、北極領域の暗く不思議な模様も見えています。
7月12日に250万キロから撮影された衛星カロン。


ライブ・コンピュータ・シミュレーション

NASAは“ニューホライズンズ”のライブ・コンピュータ・シミュレーション
Eyes on Piuto”(英語のみ)をウェブ上で公開しています。
“Eyes on Piuto”のトップページ。
冥王星とその背景にある衛星カロンに最接近する“ニューホライズンズ”(イメージ図)。

LIVEモードを選ぶと、
冥王星までの距離や“ニューホライズンズ”の速度、最接近までの時間などが、
リアルタイムで変化するようすを見ることができたそうです。

他にも、探査機がどの搭載機器を使用して、どの天体を観測しているかも分かるようですよ。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 冥王星に氷の山脈を発見! 探査機“ニューホライズンズ”が最接近直前に撮影