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宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

宇宙の歴史に関わる新しい数値

2013年05月21日 | 宇宙のはじまり?
欧州の天文衛星“プランク”の観測による、
初の“宇宙マイクロ波背景放射”の全天マップ発表されました。

宇宙誕生時の名残りを伝える微弱なマイクロ波が“宇宙マイクロ波背景放射”です。
この“宇宙マイクロ波背景放射”は、宇宙全体に満ちていて、
これにより、宇宙の年齢や構成割合など、宇宙の歴史に関わる新しい数値が求められました。

“宇宙マイクロ波背景放射”は、宇宙誕生からわずか38万年後に放たれた光の波長が伸びて、
現在マイクロ波として観測されるものです。
なので、“宇宙マイクロ波背景放射”には誕生直後の宇宙に存在した、
わずかな密度のムラが反映されています。

こうしたムラは宇宙誕生直後に起こった、宇宙空間の急激な膨張(インフレーション)で大規模に広がり、
その後、恒星や銀河などの構造が生れる種になっていると考えられています。

NASAの宇宙マイクロ波背景放射観測衛星“COBE”や“WMAP”の後と継ぐために、
2009年に打ち上げられたのが欧州の“プランク”です。
“プランク”は、従来以上の高い解像度と感度で、宇宙マイクロ波背景放射の全容をとらえています。

1年あまりの観測から得られた今回の観測結果は、大枠では宇宙論の標準モデルを踏襲しています。
でも、モデルでは予測されていなかった、エネルギー分布の非対称性や模様も見られたんですねー
プランクによる宇宙マイクロ波背景放射の全天マップ

なので今後は、この観測結果に一致するようなモデルの構築を目指すことになります。

また、高精度な観測による宇宙全体に関する様々な値も新しく求められ、
宇宙の年齢は、これまでより1億年古い138億歳になりました。

そして、宇宙膨張の加速を示すハッブル定数は、67.15±1.2キロ/秒/Mpcになっています。
これは、距離が1メガパーセクト(約326万光年)離れるごとに、膨張速度が秒速67.15キロ大きくなり、
従来の値より遅くなっています。

宇宙の構成に占める物質やエネルギーの割合についても、
宇宙の加速膨張の元となるダークエネルギーが減り、
逆に重力の元となるダークマターの割合が増加しています。  
今回の観測研究から宇宙の構成の割合が新しく求められた。

“プランク”による観測成果の完全版は2014年に発表される見込みです。
まだまだ、新しい発見があるかもしれませんね。

宇宙誕生から数億年後の銀河を7つも発見

2012年12月22日 | 宇宙のはじまり?
ハッブル宇宙望遠鏡の近赤外線観測から、
宇宙の歴史を、130億年以上さかのぼった時代の銀河が7個発見されました。







ハッブル宇宙望遠鏡の
観測から発見された
7つの遠方銀河
画像の中の数字は
光の波長が地球に届くまでに
引き伸ばされる赤方偏移の度合い
大きいほど遠方の銀河になる




これにより、銀河の数の統計的なデータから、
今につながる宇宙の重要イベント“再電離”を、探る有力な手がかりが得られたことになります。

これらの銀河は、137億年前の宇宙誕生から、3億5000万~6億年後のものと見られています。
その1つは、わずか3億8000万年後という、これまでに発見された銀河のうちもっとも遠くのものかもしれません。

こうした初期宇宙の銀河を、まとまった数で観測できたのは初めてのことなんですねー
宇宙の歴史をさかのぼるにつれて、銀河の数が減るという推測に沿う結果となりました。

このことは、この時代の銀河が徐々に集まって、
宇宙誕生から数億年後にその放射で“再電離”が起こったとする説を裏付けるものです。

“再電離”とは、宇宙誕生後初めて作られた中性水素原子が、銀河などからの紫外線で再び電子と陽子に分けられ(電離し)、宇宙の暗黒時代が終わりを告げたという、宇宙の歴史における一大イベントのことです。

初期の銀河に含まれる恒星の放射が、この電離を起こすに「じゅうぶんなものだった」っかどうかは、これまで議論の的になってきました。

そして今回の研究から、“再電離”は数億年以上も続き、銀河はゆっくりと星や物質を生み出していったと考えられます。
一瞬の劇的なイベントではなく、長期間のゆるやかなプロセスだったということなんですねー

初期宇宙のてがかり 最遠のX線ジェットを発見

2012年12月21日 | 宇宙のはじまり?
X線天文衛星“チャンドラ”による観測から、
約124億光年かなたという遠方宇宙にある、クエーサー“GB1428+4217”から噴き出すX線ジェットが発見されました。








124億光年かなたの
クエーサー“GB1428+4217”から
放出されているX線ジェット





この発見は、これまでに発見された122億光年と、120億光年の距離を上回る最遠記録となるんですねー
初期宇宙におけるX線ジェットは、ほとんど観測例がないので、これは貴重な発見になるようです。

遠方銀河の中心にある大質量ブラックホールが、高速で物質を飲み込んだときに放出されるエネルギー。
これが強い放射として見えている天体がクエーサーです。非常に明るく輝く、活動銀河の一種です。

噴き出すジェットに含まれる高速の電子が、
ビッグバンの名残りとして、宇宙に広がるマイクロ波背景放射の光子にぶつかります。
すると、より高エネルギーのX線に変換される“逆コンプトン散乱”と呼ばれる現象が起きるんですねー

X線の強さは、ブラックホールから電子が放出される速度によるのですが、
今回のようなジェットの発見から、ビッグバンから間もない初期宇宙における、銀河とその中心の巨大質量ブラックホールの環境について、手がかりを得ることができます。

“GB1428+4217”のジェットの長さは、
少なくとも23万光年、天の川銀河の直径のおよそ2倍あると考えられています。
クエーサーの片側のみにジェットが観測されていることなどから、
ほぼ地球に向かう方向で噴き出しているようです。

また、世界各地の電波望遠鏡を組み合わせるVLBI観測からは、
“GB1428+4217”のジェットのより詳細な姿が観測されています。
X線ジェットと同じ方向に、長さ1900光年ほどの小規模なジェットが存在しているようですよ。

ビッグバンから、わずか4億2000万年後の銀河

2012年11月27日 | 宇宙のはじまり?
“ハッブル宇宙望遠鏡”と赤外線天文衛星“スピッツァー”、
そして、重力レンズという自然の拡大鏡を利用した観測により、
これまで知られている中で最も遠い銀河が発見されました。

この銀河は、“ハッブル宇宙望遠鏡”による銀河団拡大観測および超新星サーベイプロジェクト(CLASH)で、発見されたんですねー

ビッグバンからわずか4億2000万年後のものと見られています。
つまり、この銀河の光は約133億3000万年の時間を経て、たどり着いたんですねー

これだけ遠い銀河は、本来なら非常に暗くて観測することはできません。
なので、天体の姿をとらえるには重力レンズの助けが必要になります。

重力レンズとは、地球から見て手前にある天体の重力の影響で、向こう側にある天体の姿や光が移動したり、変形したりして見える現象です。

今回は、この銀河の80億光年手前にある大質量銀河団です。
その強い重力によって、光が屈折し拡大されることによって観測ができたんですねー




大質量銀河団の
重力を通して見える
遠方銀河(左枠)
重力レンズ効果で
拡大された3つの
像が見える


“MACS0647-JD”と名付けられたこの銀河の幅は600光年ほどしかありません。
天の川銀河の直径が約15万光年なので、“MACS0647-JD”はかなり小さな銀河になるんですねー
質量も、天の川銀河の星を全て合わせたものの0.1%から1%しかなく、どうやら銀河の初期段階にあると見られています。

今見える“MACS0647-JD”は、銀河の部品のようなものなんですかねー
この後130億年の間に、数十回、数百回の合体によって、大規模な銀河になっているのかもしれません。

こういった遠方にある銀河は、近傍にある赤い天体と似たように見えます。
遠方の銀河ほど高速で遠ざかるため、その光の波長は伸びて赤みを帯びる“赤色偏移”を見せるからです。

なので、研究チームでは数か月の間慎重な検証を行ってから、遠方の銀河に間違いないという結論を出しています。

今回は、様々な波長域に対応した“ハッブル宇宙望遠鏡”の17のフィルターを通した観測で、この銀河が強い“赤色偏移”を示していることが分かりました。
さらに赤外線天文衛星“スピッツァー”の遠赤外線画像で明るく見えなかったので、遠方の銀河だと確認できています。

銀河までの距離を確実に知るためには、
光を細かい波長に分離して“分光赤色偏移”を測定する方法があります。
でも、“MACS0647-JD”は非常に遠く暗いんですよねー

なので今回は、精度は落ちるのですが、より暗い天体に適用できる“測光赤色偏移”を測定する方法が使われています。

ということで、“MACS0647-JD”との距離は、とりあえず参考記録となっています。

宇宙が5億歳だったころの銀河の光

2012年09月24日 | 宇宙のはじまり?
アメリカのジョンズ・ポプキンス大学の研究チームが発見した、小さくかすかな銀河の光。
この光は宇宙がまだ5億歳だったころの、若い銀河の光なんですねー

132億光年を旅して地球に届いたこの光は、2つの天文衛星の性能に重力レンズという自然の拡大鏡が加わってとらえられたものです。





重力レンズの役割を果たした銀河団(左)と、
それにより15倍も明るく見えた
遠方銀河“MACS 1149-JD”(右)



これは宇宙の歴史において「暗黒時代の終り」というとても重要な時期の光で、
宇宙が星の無い真っ暗闇の広がりから、銀河がひしめく場所へと変化していった頃のものです。

過去にも同じような年代の銀河の候補が検出されていたのですが、単独の波長でしかとらえられていませんでした。
でも今回は、5つの異なる波長で観測できたんですねー

“CLASH”プロジェクト一環として、ハッブル宇宙望遠鏡は4つの可視・赤外線波長域で、
赤外線天文衛星“スピッツァー”は、より長い波長の赤外線で観測と記録を行えました。

極限の距離にある遠方の天体のほとんどは、今の大型望遠鏡では検出することはできません。
なので、天体の姿をとらえるには重力レンズの助けが必要になります。

重力レンズとは、地球から見て手前にある天体の重力の影響で、向こう側にある天体の姿や光が移動したり、変形したりして見える現象です。

今回発見された銀河と、天の川銀河の間に巨大銀河団があるので、小さな銀河からの光が増幅されて実際の15倍も明るく見えたんですねー

一般に支持されている説では、宇宙で最初の銀河はとても小さくて、その銀河同士が合体を繰り返して今見られる大きな銀河に成長していったと考えられています。
今回、発見された銀河の年齢は2億歳以下で、質量は天の川銀河の1%ほどなので説に合うんですよねー

このような銀河は、“宇宙再電離”に大きな役割を果たしたようです。
最電離とは、宇宙で最初に誕生した星や銀河から放たれる紫外線によって、中性水素が再び陽子と電子に分けられ(電離し)、宇宙の暗黒時代が終りを告げた時期のことです。

137億年前ビッグバンによって宇宙は誕生したのですが、その直後の宇宙空間は水素原子が電離した陽子と電子のプラズマ状態でした。
約40万年後には宇宙の膨張により温度が下がり、陽子と電子が結びついて中性水素原子となります。

その後の数億年間は中性水素ガスに埋もれた宇宙の暗黒時代が続くことになるのですが、
約2~5億年後には、水素ガスの濃い部分から宇宙で最初の星や銀河があちらこちらで作られるんですねー

中性水素は作られた星々が放つ紫外線により、再び陽子・電子のバラバラの状態に電離しプラズマ状態になります。
これが太古の宇宙における大イベントの一つ“宇宙再電離”で宇宙の夜明けとも言われています。

この銀河の観測は信頼性が高く、これまでで最も遠い天体です。
宇宙で最初に誕生した天体や、宇宙の暗黒時代がどのようにして終わったのか?
今後、このような銀河の研究が謎を解いてくれるんでしょうね。