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宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

見えてきた初期宇宙の姿? 124億年前の銀河から窒素を検出

2012年06月17日 | 宇宙のはじまり?
京都大学と英ケンブリッジ大学の研究チームが、124億光年かなたの銀河に窒素を発見しました。

発見といっても窒素自体を見つけたのではなく、窒素が発する電波を検出したんですねー
これにより初期宇宙の銀河の元素組成が、激しい星生成活動により現在の宇宙に近いものになっていたことがわかりました。

銀河が宇宙の歴史の中でたどってきた経過を調べるには、過去の銀河の成分調査が有効な手段となります。

過去から届く光を見るということは、それだけ遠くの天体を観測することになるし、
次々と星を産み出している銀河は、大量のチリに覆われているので高感度での観測が必要となるんですねー

以前、研究チームはヨーロッパ南天天文台の電波望遠鏡“APEX”を用いて、“ろ座”の方向124億光年かなたのサブミリ波銀河“LESS J0332”を観測しています。

サブミリ波銀河は、サブミリ波と呼ばれる波長の極めて短い電波を強く放射する銀河で、
激しい星生成活動からモンスター銀河とも呼ばれています。

ここで炭素の検出には成功したのですが、観測装置の感度が十分でなかったんですねー 残念ながら他の元素は調べることができませんでした。

でも、昨年初期科学観測が開始された南米チリの“アルマ望遠鏡”により、同じ銀河から窒素を検出することに成功したんですねー





銀河“LESSJ0 332”の窒素が発する電波
   (画面中央)



さらに成分調査を行って分かったことは、現在の宇宙における太陽の元素組成に近いこと。
ビッグバン後わずか13億年後という初期宇宙に存在する銀河にもかかわらず、様々な元素が豊富に存在する状況だったんですねー
ビッグバン直後の宇宙といえば、ほぼ水素とヘリウムだけなので急速な変化があったようです。

サブミリ波銀河は比較的大質量の銀河が進化途上にある姿だと考えられています。
“LESSJ0 332”が太陽に近い元素組成を既に持っているという今回の研究結果は、こうした大質量銀河の化学進化が初期宇宙において急速に進行したことを意味します。
つまり初期宇宙で短期間に活発な星形成が起こっていたということです。

アルマ望遠鏡は来年から初期科学観測の2倍以上のアンテナを使うことができます。
驚異的な感度と空間分解能で“LESSJ0 332”の内部の元素組成にまで迫れるかもしれません。

宇宙の最初の光

2012年06月16日 | 宇宙のはじまり?
NASAの天文衛星“スピッツァー”が、宇宙で最初の大質量星やブラックホールが由来と思われる赤外線背景放射をとらえました。
これまでより広い範囲の観測で、130億年前の光の分布パターンがより確かなものになってきました。

宇宙は137億年前のビッグバンから始まり、やがて膨張して温度が下りました。
そして約5億年後には最初の星々や銀河、ブラックホールが生れまます。

今回とらえた光の元は、これらの天体が発した可視光や紫外線なんですねー
赤方偏移により波長が伸びて赤外線になったもの(赤外線背景放射)をとらえています。

赤方偏移とは、宇宙が膨張していることで遠方の天体から届く光の波長が伸びる現象。
遠方の天体ほど地球から高速で遠ざかっているため、地球には赤外線として届くことになります。

画像は“うしかい座”の領域をとらえたものでで、
上が通常の赤外線画像、下は手前の星や銀河の光を除いて背景の光を浮かび上がらせた画像なんですねー

個々の天体を見ることはできませんが、その放つ光のおおよその分布がわかり、予測とも一致しています。

2005年と2007年にも観測は行われたのですが、今回は満月2個分という広い領域を観測したのでパターンの全容がさらに確かなものになったようです。

今後さらに領域を広げた観測が行われる予定です。
現在計画中の“James Web宇宙望遠鏡”により、さらに確実な答えが出ることが期待されます。