何日ぶりかの…

2009-06-03 08:20:04 | Weblog
本の感想、です。
『城の中のイギリス人』、2時間程で読了。夜中の1時過ぎに読み終え、何よりもまず空腹を覚えたのはどうしてでしょう…苦笑。
さてこの本、昭和の世であれば奇書だったかもしれませんが、今となっては骨董品のようなものでしょうか。初版発行(1953年)から26年後に著者が加えた序文によると、執筆は1951~52年。彼は自著をシュールレアリズム小説と規定しているようです。絵画におけるシュールレアリズムでしたら具体的な作品もいくつか浮かびますが、小説の場合はどうなのか私には正直よくわかりません。
確かにこれはあくまでも「お話」であり、もしも内容の通りに目の前で繰り広げられたなら、正視に耐えないか理性が崩れるであろうとは思います(現在では明らかに犯罪行為ですし)。ラブレー以来の伝統が脈打っているとも想像がつきます(おかげで、ガルガンチュワ~を読みたくなってきました…あれ、福岡の家に置いたままなのですよね(T_T))。一方で、ここかしこに理屈っぽさが垣間見えるようで、やや興醒めする感じは否定できません。フランス人がイメージするイギリス人らしさを表現しようとすると、こうなるのでしょうか。著者が序文で思い入れたっぷりに語るほどにエロティックな物語とは思えず(これは男女差によるものかも)、ラストも予想の範囲内でした。
フランス語に堪能もしくはフランス語を母語とする者が原書で読むならば、また違った楽しみ方ができるのかもしれません。澁澤龍彦のあとがきからは、そのような印象を受けました。訳文は平易にして品良く思われます。書棚の奥深くにしまい込み、もう少し年齢を重ねてから読むほうが楽しめるかもしれませんね。

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