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ミネラル摂取基準の正しい捉え方=摂取バランスが第一です

2012年10月06日 | ミネラルが最重要

ミネラル摂取基準の正しい捉え方=摂取バランスが第一です

 厚生労働省は、毎年、「国民健康・栄養調査」を総合的に行っており、その中に「栄養摂取状況調査」というものがあります。
 これは、調査対象地区の中から無作為抽出した世帯に対して、11月の特定の1日(平日)に、世帯毎に調査対象者(家族)が摂取した食品を秤量記録して行うものです。
 ちなみに、最新の調査(平成22年調査:平成24年1月31日発表)は、3684世帯、8815人を対象にして調べたものです。
 さて、この調査は、日本人の平均的な食生活を現していると言えるでしょうか。
 疑問が3点あります。まず、季節は食欲の秋ですから、他の季節よりも多く食べているでしょうね。次に、調査員に記録を見られたりしますから、家庭の奥さん方は腕をふるって幾品か調理し、いつもとは多少違ったおかずとなり、栄養バランスの取れた食事になることでしょう。特に野菜を多くして肉を少なめにするでしょうから、ミネラルが多めになります。3つ目は、調査対象になることを辞退・拒否した世帯は、かなりの偏食傾向にあるのではなかろうか、ということです。特に野菜の摂取が少なく、ミネラル不足でしょう。
 そうしたことを考慮すると、調査結果のエネルギー量(カロリー)は、食欲の秋にもかかわらず、野菜を多くしたでしょうから、1年間の平均的な値になっているのではないかと思われます。一方、ミネラルについては、調査結果は1年間の平均的な値より高くなっていると考えざるを得ません。10%ほど割り引いて考えた方が良いでしょうね。ただし、リンは逆です。普段の料理は野菜が少ない分、肉が増えているでしょうから、野菜に少なく肉に濃厚に含まれるリンの摂取が高まろうというものです。リンは10%増しで摂取しているのではないでしょうか。

 それらを考慮して、日本人のミネラル摂取量と摂取基準を比較してみましょう。
 男女とも60歳代をとりました。成人では、エネルギー量は男女とも50歳代がピークですが、ミネラル摂取のピークは60歳代で、これは胃腸の消化力からして、肉を減らし野菜を増やすからと思われます。よって、60歳代が一番ミネラル充足率が高いです。
 なお、下表に調査された全てのミネラルを掲げましたが、それとは別に食塩摂取量があり、参考までに記すと、60歳代の男12.0g、女10.6gです。
                                           (単位:mg、%)
性別年齢 ミネラル種  摂取量  実際摂取量  摂取基準  充足率
           (調査結果)
(私の推計値)    (私の推計値比)
男60歳代 カリウム  2591  2332   2500  93
     カルシウム   561   505    700  72
     マグネシウム  285   257    350  73
     リ ン    1104  1214   1000 121
     鉄       8.9    8.0    7.5 107
     亜 鉛      8.9   8.0   12.0  67
     銅       1.32  1.19   0.9  132

女60歳代 カリウム  2510  2259   2000  113
      カルシウム  555   500    650   77
      マグネシウム 260   234    290   81
      リ ン    975  1214    900  135
      鉄      8.3   7.5    6.5  115
      亜 鉛    7.5   6.8    9.0   76
      銅      1.15  1.04   0.7  149

(注) 摂取基準は次の値を使いました。
 
カリウム  目安量 (参考:高血圧予防のための目標量は男女とも3000)
 カルシウム  推奨量 ( 〃 :推定平均必要量は男600、女550)
 マグネシウム 推奨量 ( 〃 :推定平均必要量は男290、女240)
  リ ン    目安量 (これ以上の摂取は不要であること)
   鉄     推奨量 (参考:推定平均必要量は男6.0、女5.5)
  亜 鉛    推奨量 ( 〃 :推定平均必要量は男10、女8)
   銅     推奨量 ( 〃 :推定平均必要量は男0.7、女0.6)

 摂取基準からすると、実際摂取量(私の推計値)は次のように評価されます。
 カリウムは男女とも概ね充足している。ただし、高血圧傾向の方は、約4割上乗せして摂取した方が良いであろうから、2、3割不足している。
 カルシウムとマグネシウムは、男女とも2、3割不足している。
 リンは、男女とも目安量を2、3割上回っており、摂りすぎである。
 鉄は、男女とも概ね充足している。
 亜鉛は、男女とも3割程度不足している。
 銅は、男女とも十分に摂取できている。

 ところで、ミネラルはバランスよく摂取する必要があります。特に、食塩(ナトリウム)とカリウム、カルシウムとマグネシウムは、体内で相互にイオン濃度のバランスを取って生命活動をしていますから、摂取する段においても相互間のバランスが重要です。
 食塩を多く摂る人は、カリウム(野菜)もたっぷり摂る必要があります。カリウムの摂取基準で、高血圧予防のための目標量を男女とも3000mgとしているのは、ここにあります。
 カルシウムとマグネシウムのバランスは特に重要で、2:1の比率で摂取するのが肝腎なことです。カルシウムを突出して摂取するとマグネシウム不足になりかねませんから、カルシウム強化食品やサプリメントとしてカルシウム単品のものを摂るのは、無意味どころか逆効果になります。
 リンはカルシウムとのバランスが求められます。生体内では、リン:カルシウムは1~2:1の濃度にあるようで、摂取は1:1が望ましく、2:1以上にアンバランスになると、リンがカルシウムの吸収を抑制すると言われています。私の推計値からすると、男女とも2.4:1となっており、上限を超えていて、カルシウム吸収に問題を起こしている恐れあり、となってしまいます。
 その他の鉄、亜鉛、銅は、特にバランスを取る必要はないようですが、どれかが極端に不足すると、他のミネラルの働きに影響する恐れもあるようです。

 ここで、一番の問題は、リンの過剰です。
 摂取基準で許容上限値は3000mgとされていますが、リン:カルシウムのバランスが許されうる2:1の比率の倍の比率となる4:1の2000mgを上限と考えたいです。
 現状が2.4:1となっているから十分安心とは思わないでください。
 と言いますのは、「栄養摂取状況調査」から算出されたリンの値は食材そのものに含まれているリンの値を集計したもので、食品に添加されている防腐剤などのリン化合物は計算に入っていないからです。その量は概ね数百mgとも言われ、それを500mgとして計算すると、リン:カルシウムの比率は3.4:1となってしまい、概ね4:1に随分近づいた危険な値です。

 次に問題となるのは、マグネシウム不足です。
 昔はマグネシウムは摂取過剰気味でした。マグネシウムは、植物の発芽する部分(穀類であれば胚芽)に特に多く含まれ、また、濃い緑色の葉っぱ(葉緑素の核はマグネシウム)に多いです。それが、今日では、麦飯や雑穀米を食べなくなって精米・精白された穀類を食べるようになりましたし、また、どす黒いほどに濃緑色で野菜臭い昔ながらの野菜は市場に出回らなくなりましたから、マグネシウム不足となってきているのです。
 私のシビアな推計値からしても、わずか2、3割の不足だから、それほど心配しなくてもよさそうに思えましょうが、マグネシウムほど尿から排泄されやすいものはないですから、大きな問題になるのです。
 なぜ排泄されやすいかと言いますと、マグネシウムは細胞内に特化して存在し、細胞外液には極めて希薄にしか存在しないので、何かの拍子(例えばストレス)で細胞が壊されて細胞内液が漏れ出した場合には、高濃度のマグネシウムイオンが血液に入り、それが腎臓に到達すると、普段はマグネシウムイオンは低濃度であるがゆえにマグネシウムイオンの再吸収が不十分となってしまうからです。
 これが、他のミネラルと違うところでして、マグネシウムは極めて失われやすいミネラルなのです。よって、マグネシウムは十分過ぎるほどに摂る必要があるのです。

 3つ目は、亜鉛の欠乏です。
 摂取基準(推奨量)の値は、2001年は男11mg、女10mgだったのですが、2005年には男9mg、女7mgと下げられ、2010年になると男12mg、女9mgとほぼ元に戻りました。おかしな基準変更です。
 2005年に下げられた経緯は、摂取基準に関する何でもない審議会議事録が公表されているにもかかわらず、こんな重要な決定に関する審議会議事録が公表されていませんから、これは憶測になりますが、2005年の少し前から健康食品業界の一部が亜鉛サプリメントの広告で“亜鉛大幅欠乏”と銘打って高濃度の亜鉛を含有した健康食品を販売したがために過剰摂取が問題になったようで、厚生労働省が“亜鉛は足りている”として亜鉛サプリメントの過剰広告にブレーキをかけるためだったのではないかと思われます。
 参考までに、鉄についても2005年に大幅に基準値が下げられましたが、亜鉛のように2010年に元に戻されることなく、更に0.5mg下げられています。2005年の改定理由は亜鉛と同じでしょうが、2010年の改定理由は調べていませんので不明です。
 さて、亜鉛は、現行基準からして、男女とも3割程度不足している状況にあり、その分を補えば充足されると単純に考えることは危険です。
 と言いますのは、亜鉛は、カドミウムと水銀、この2つと同族の元素で、カドミウムと水銀は亜鉛の働きを殺してしまいます。日本においては、昔に使われていた農薬などによる水銀汚染が深刻ですし、日本人が多食するマグロには水銀の蓄積が甚だしいです。
 これは毛髪検査をすればはっきり分かるのですが、日本人は欧米人に比べて毛髪の水銀量が異常に高いのです。
 よって、米国の摂取基準に準拠している日本の基準は低すぎると言えます。カドミウムと水銀による打消し量を上乗せするべきです。それがどれだけの値になるのか分かりませんが、摂取基準量はしっかり摂るべきです。

 ここまで、最もミネラルを摂っている階層の60歳代について述べてまいりましたが、50歳代、40歳代と若くなるに従ってリンを除いてミネラル摂取は総じて減る傾向にあります。もっとも、「栄養摂取状況調査」は、ほとんどが家庭料理でしょうから、データに大きな差が生ぜず、リン(ほぼ同量)を除いて、20歳代で60歳代の2割減程度のことですが、これが単身住まいとなると、野菜の摂取量はどうしても少なくなりますから、リン過剰、その他のミネラル不足で体を害している人が少なからず生じているのは確かなことです。

 ところで、特に若い人に言えることですが、ミネラル摂取量が不足いているのなら、腹一杯食べて食事の総量を多くすればミネラルが充足するのではないか、という考え方が湧いてきます。逆に、腹八分なり七分で止めて少食にするとミネラル摂取が不足してしまうのではないかという心配をされる方も出てきます。
 単なる食事量の増減で、ミネラル充足や不足になることは、まずありません。
 過食すれば消化が悪くなってミネラル吸収が落ちますし、少食にすれば消化が良くなってミネラル吸収が高まるからです。
 なお、ダイエットのため急激に少食にした場合には、かえって消化が悪くなり、ミネラル吸収も落ちるおそれがありますから、ひどいミネラル不足になる危険性があります。
 そして、ミネラル吸収は小腸でも行われますが、近年分かったのが大腸の腸内環境が優れているとミネラル吸収が大腸で促進されるということです。
 少食にして腸内環境を改善すれば、ミネラルは不足することはないのです。そのためには、肉・魚・卵は極力控えて野菜・豆・芋を副食にすることになります。
 戦前の食生活では、カルシウムは高々400mgしか摂取できていなかったものの、決してカルシウム不足にならなかったことからも言えるのですが、戦前の食生活に戻せばミネラル不足は解消されることになります。
 これは、ミネラルバランスが整っていたことと腸内環境が良かったがために、カルシウムに限らず、他のミネラルも含めて、吸収効率が良かったからと考えられます。

 こうしたことを踏まえると、ミネラルの摂取基準というものは、あまり意味をなさないものとなってしまいますが、使い道はちゃんとあります。
 先に、「栄養摂取状況調査」と摂取基準の比較をしましたが、これは一応、平均的な日本人の充足度を示していると考えてよく、繰り替えしになりますが、リン過剰で、マグネシウムと亜鉛がかなり不足傾向にあるのですから、自分の食生活も、その傾向にあると思ってよく、それを改善し、ミネラルバランスを整えてあげる必要がありましょう。
 具体的には、次の食生活をすることです。
 リン過剰の防止には、肉を控えるのが一番です。
 マグネシウムの摂取のためには、麦飯や雑穀米にし、野菜を多く摂ることです。
 亜鉛の摂取には、格段に亜鉛が高含有な牡蠣(かき)が何と言っても一番です。しかし、年中手に入るものでもないですから、ミネラルサプリメントでの補給をおすすめします。また、水銀が濃厚に含まれているのがマグロですから、これを食べないことです。
 そして、少食と腸内環境の改善です。
 こうした食生活をしていれば、ミネラルが過不足なく摂取できて、イキイキ元気な毎日を送ることができましょう。私も、これに留意した食生活に心がけ、サプリメントも摂っていますから、いたって健康です。皆さんも、こうした食生活を是非なさってください。


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3 コメント

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Unknown (海藤)
2017-03-29 12:41:00
こんにちは。
ヨーグルトの記事からたどり着いて、
最近色んな記事を拝読しています。
私は玄米と最近は豆や野菜をメインにとることを意識していて、さらに亜鉛とカルシウムとマグネシウムの入ったサプリを飲もうかと思っているのですが、サプリによってミネラルの過剰摂取になってしまうということはあるのでしょうか?

これからもブログ楽しみにしています。
返信する
海藤様へ (薬屋のおやじ)
2017-03-29 14:24:05
小生のブログ記事をご愛読いただき有り難うございます。
「玄米…を意識していて」とのことですから、「カルシウムとマグネシウムの入ったサプリ」は必要ないでしょうね。
「亜鉛のサプリ」だけで十分と思われます。
最近のサプリは1日の目安量を所要量の3割から1/3としているものが多いです。以前は1日の目安量が1日の所要量となっているものが多かったです。これも、厚労省の行政指導と思われます。
ミネラルはすべて過剰摂取は害になりますから、飲むとして1日の所要量までとなさったほうがいいでしょう。
返信する
返信ありがとうございます! (海藤)
2017-03-29 20:56:55
玄米を食べていたらカルシウムとマグネシウムはとれているのですね。
亜鉛のサプリを注文して量をしっかり守って飲んで行こうと思います。
アドバイスを頂けて嬉しいです。
本当にありがとうございます。
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