O先生は 我が娘の勤める中学校の校長先生です。あだ名はシーサー。ズングリムックリの短躯に大きな顔、大きな獅子鼻、太い眉にギョロ目、大きな口と厚い唇で、まさに本物のシーサーもビックリの容貌です。この先生にグッと睨まれたら非行生徒もビビルと言われるほどの街の有名人であります。
この先生には奇癖がありまして、酔っ払うと家の近所のお店に有るアイスの旗(幟)を担いで家まで持ってっちゃうのです。然し 翌朝には本人がコソコソと元の位置に返しに来るし、何せご近所の有名人だし、お店の人も別に咎めもせず、御本人の為すがままにしています。其の時の姿と言えば、背筋をピンと伸ばし、旗竿を垂直に立てて、真っ直ぐまえを見て、威風堂々イングランドの衛兵もかくやと言いたい所ではありますが、後姿はまさにドラエモンが旗を担いでヨチヨチ歩いているみたいです。勿論 ご本人は大真面目ですれ違う人には「こんばんは」と威厳に満ちたご挨拶をされるのです。不思議な事に先生が担いで行くのはアイスの旗だけです。他にも宅急便の旗なども有るのですが、手を付けません。其の訳を何とか知りたいのですが、それを御本人に聞ける勇敢な人は誰も居ません。何しろグッと睨まれて思わずオシッコをチビッタ人が居ると言う伝説がありますから・・・冬になりますとシーズンオフですから、本来アイスの旗は収納するのですが、お店の方が気を利かせて店頭に出して置きます。だからそのお姿を拝見する事が出来ます。
このシーサー先生が この程目出度く定年退職されました。すると通勤されてませんから、いつものパホーマンスが見られません。 お店の方が心配して我が家に尋ねて来られました。「先生は ご病気でしょうか」そこで定年ご勇退の事をお伝えしたら、何だか非常にガッカリした様子でお帰りになりました。
一昨日の事 先生にバッタリお会いしまして、先生が「毎日 暇で 暇で困っています。チョット寄って行きませんか」と言われました。恐い恐い先生からです。私は 以前も申し上げた通り、世界一の臆病者で、小心者です。でも 臆病者ほど怖い者見たさの気持ちが強いのです。気が付けば先生のお宅に上がり込んでお茶など頂いて居ました。(奥様が痩身の美しい人です。どうしてこんな先生にこんな美人の奥様が・・・)
そこで 昔のアルバムを拝見しまして、アッと気が付きました。何十年か前、先生が静岡県代表の柔道の選手として国民体育大会に出場して居る写真です。それは入場行進の先頭で先生が県の代表として堂々の旗手をしていました。其の旗がなんとアイスの旗に色やデザインが良く似ているのです。
そうか先生は今尚この時の栄光を忘れ難く、酔うとこのシーンを再現してその気分に浸って居たのです。 これは世紀の大秘密が解けたぞっだけど これは誰にも教えたくない先生の栄光の為にも
教えない 教えない 絶対教えない
怖いもの見たさで
いってみてよかったですね。
その先生の奇癖の招待がわかって。
いやあ、回りの方も
面白いです
暖かい気持ちになりました。
出来れば先生の写真をアップしたかったのですが・・・とても出来ませんでした
その先生にとって旗手の思い出は、今尚鮮やかな記憶なんですねぇ。
お店の方もなんだか素敵。
杓子定規に文句を言うのではなく、見守って下さるなんて。
なんだか1人でにんまりしちゃう、楽しいお話でした。ありがとうございました。うふふ。