見てきました
太田記念美術館
会期は2014年4月1日から2014年5月28日。
この展示、前期と後期に分かれています。
前期は4月1日から4月27日。
後期は5月1日から5月28日。
後期を見てきました。
(前期はこちら→「広重ブルー -世界を魅了した青 (前期)」)
江戸時代を代表する浮世絵師、歌川広重。
おもに風景を描いたその作品は世界中で愛され、モネやゴッホにも影響を与えました。
広重の大胆な構図、鮮やかな色彩は今見ても新鮮で美しいものです。
まずは肉筆浮世絵です。
歌川広重「京嵐山渡月橋」
橋を上空から見ているかのような構図で描いています。
橋を渡る女性の服装は被衣といって京女性の風俗として定着していたのだそう。
淡い色彩で春の柔らかな空気が表現されています。
歌川広重「信州更科田毎の月」
更級は棚田に映る月が美しいとして、月の名所として知られたのだそう。
右下に棚田が描かれ、それぞれに月が丸く映り込んでいます。
左側の山道には旅人が。
こういった景色は旅の楽しみだったでしょう。
《1.広重ブルーの世界 1天保期の風景画》
ベロ藍が本格的に浮世絵に使われるようになった天保期(1830-43)は広重の才能が開花したときでもありました。
代表作となる保永堂版「東海道五拾三次」は天保4-7年、30代後半で制作されたもの。
それらを含めた作品が展示されています。
歌川広重「東都名所 高輪之明月」
月の名所、高輪。
湾曲する海岸線の上には丸い月。
そこには雁が連なって飛んでいます。
空と水面が青く、紅色の雲。
まだ、そこまではっきりした色彩ではありません。
歌川広重「東都名所 芝浦汐干之図」
手前に大きく帆。
極端な遠近法が目をひきます。
こちらも紅色の雲に、青い空。
歌川広重「東海道五拾三次之内 沼津 黄昏図」
夕闇にぽっかりと浮かぶ満月。
狩野川沿いの道の先には宿場が見えてきています。
川はベロ藍でとても深い青。
1日の終わりが近づいてきていることが感じられます。
歌川広重「東海道五拾三次之内 吉田 豊川橋」
右側には城。
修繕中でしょうか、組まれた足場に立つ人物が遠くを眺めるような不思議なポーズをしています。
川の青がとても深くきれいな色で城の白色によく映えます。
歌川広重「京都名所之内 嶋原出口之柳」
京の名所を描いた10枚揃いのシリーズもの。
嶋原は京の花街。
下弦の月が雲越しに見え隠れする中、酔った人々が出口にある柳の木のそばをふらふらと歩いていきます。
遠くの山は霞み、ぼやけています。
歌川広重「江都景勝 よろゐの渡し」
鎧の渡しは茅場町と小網町を結ぶ渡し。
日本橋川はここを通り、隅田川へ合流します。
物資の運搬が盛んだったようで、米俵を積んだ船などが見られます。
川の青さと白壁の白さがとても美しい。
歌川広重「月二拾八景之内 葉ごしの月」
流れ落ちる滝に舞い落ちる葉、その向こうに月。
装飾的で美しい作品です。
《2.広重ブルーの世界 2弘化期から安政期の風景画》
ここには弘化期から安政期の風景画が展示されています。
広重の画業としては後半。
弘化期から62歳で没するまでで、最晩年の代表作「名所江戸百景」などがメインとなります。
画業は後半とはいえ風景画の主流であった横長のスタイルを縦長にするなど挑戦してるようすもうかがえます。
歌川広重「六十余州名所図会 阿波 鳴門の風波」
ぐるぐると大きな渦が手前に描かれています。
泡立つ波頭など躍動感ある作品です。
歌川広重「六十余州名所図会 壱岐 志作」
夜の雪景色。
島を雪が覆い尽くしています。
夜空にも雪の白色がぽつぽつと。
真っ暗に白でとてもきれいです。
歌川広重「六十余州名所図会 信濃 更科田毎月鏡蚕山」
最初に見た肉筆浮世絵でも描かれていた場所。
棚田に映る月の美しさは何度も描きたくなる美しさだったのでしょう。
見に行ってみたくなりました。
歌川広重「名所江戸百景 深川木場」
雪景色の中、立てかけられた木材の向こうを蛇行して流れる川。
その水の青さがとにかく美しい。
どんよりした空模様は"あてなぼかし"という技法で、黒いもやのようなもので表現されています。
ここは現在の木場公園のあたりだそう。
歌川広重「名所江戸百景 鐵砲洲稲荷橋湊神社」
大胆な構図です。
手前に大きく2本船の帆柱があり、その向こうに景色が描かれています。
湊稲荷は船人たちの守護神として人気だったそう。
物資を載せた船が行き交い、活気が感じられます。
歌川広重「名所江戸百景 永代橋佃しま」
篝火をたいて、白魚漁をしているところが描かれています。
橋の下からのぞくような構図です。
暗い中、ぽっと明るい篝火と空の星も白く輝いています。
水は橋の下の陰になるようなところは濃く描かれるなど、細かな点まで丁寧に表現されています。
《3.広重ブルーの世界 3花鳥画・美人画・団扇絵》
これまでは風景画が多かったのですが、ここでは花鳥画・美人画・団扇絵の展示です。
特に団扇絵は庶民風俗や説話を小さな画面に丁寧に描いてあり、当時の様子が伺い知れます。
歌川広重「燕子花に白鷺」
白鷺や花は輪郭を用いず柔らかな質感が表現されています。
また白鷺の羽は空摺り。
細かなところまで丁寧です。
《4.浮世絵 色彩革命の歴史》
ここでは浮世絵の初期からベロ藍が多用される天保期以前の作品が展示されています。
歌川豊春「浮絵 中秋之景月見図」
錦絵誕生以降の作品。
広い屋敷で行われた月見の様子が描かれています。
透視図法を使い、奥行が表現されています。
庭の木々には影が描かれるなど、新しい西洋の技法をふんだんに使った作品。
《5.浮世絵界の青の時代》
青色の絵具が藍からベロ藍へ変わるのは天保元年から同2年ごろ。
北斎が「富嶽三十六景」を広重が「東都名所」を生み出します。
ここではその他の絵師の作品です。
葛飾北斎「冨嶽三十六景 磯川雪ノ旦」
磯川(小石川)の牛天神社(北野神社)を描いたもの。
境内の茶屋から雪景色を眺める人々が描かれています。
遠くには富士も描かれています。
真っ白な雪景色に真っ青な空。
目が覚めるようです。
《6.幕末の青 広重同時代から広重没後》
ここでは広重以外の同時期の絵師、そして没後の作品が展示されています。
歌川小虎「東海道 神奈川」
文化3(1806)年、朝廷の攘夷実施の求めに応じ、十四代将軍、家茂が上洛の途についたところを描いたもの。
画面左側にその行列が。
右側は海が描かれ、とても見晴しがいい場所です。
海には外国船らしきものも描かれ、新しい時代が近くに来ていることを感じさせます。
《7.明治の赤 -新時代の色》
幕末から明治時代にかけて舶載の赤色絵具(アニリン染料)が登場します。
浮世絵にも使われ、江戸とは違う色彩の作品が生まれました。
四代歌川豊国「東京府下第一大区京橋銀座尾張街通煉化石造商法繁盛之図」
3枚つづりの大きな作品。
明治2(1869)年、5年と立て続けに火災にあった銀座。
そこをレンガ街として再建し、明治10年ごろ完成します。
描かれているのはその再建された景色。
ちょうど銀座1丁目のあたりで後ろには新橋発横浜行きの蒸気車が描かれています。
両側には大きな洋館が立ち並び、洋装の人々が道を行き交います。
馬車が通り、まさに文明開化です。
以上です。
華やかで美しい世界でした。
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太田記念美術館
会期は2014年4月1日から2014年5月28日。
この展示、前期と後期に分かれています。
前期は4月1日から4月27日。
後期は5月1日から5月28日。
後期を見てきました。
(前期はこちら→「広重ブルー -世界を魅了した青 (前期)」)
江戸時代を代表する浮世絵師、歌川広重。
おもに風景を描いたその作品は世界中で愛され、モネやゴッホにも影響を与えました。
広重の大胆な構図、鮮やかな色彩は今見ても新鮮で美しいものです。
まずは肉筆浮世絵です。
歌川広重「京嵐山渡月橋」
橋を上空から見ているかのような構図で描いています。
橋を渡る女性の服装は被衣といって京女性の風俗として定着していたのだそう。
淡い色彩で春の柔らかな空気が表現されています。
歌川広重「信州更科田毎の月」
更級は棚田に映る月が美しいとして、月の名所として知られたのだそう。
右下に棚田が描かれ、それぞれに月が丸く映り込んでいます。
左側の山道には旅人が。
こういった景色は旅の楽しみだったでしょう。
《1.広重ブルーの世界 1天保期の風景画》
ベロ藍が本格的に浮世絵に使われるようになった天保期(1830-43)は広重の才能が開花したときでもありました。
代表作となる保永堂版「東海道五拾三次」は天保4-7年、30代後半で制作されたもの。
それらを含めた作品が展示されています。
歌川広重「東都名所 高輪之明月」
月の名所、高輪。
湾曲する海岸線の上には丸い月。
そこには雁が連なって飛んでいます。
空と水面が青く、紅色の雲。
まだ、そこまではっきりした色彩ではありません。
歌川広重「東都名所 芝浦汐干之図」
手前に大きく帆。
極端な遠近法が目をひきます。
こちらも紅色の雲に、青い空。
歌川広重「東海道五拾三次之内 沼津 黄昏図」
夕闇にぽっかりと浮かぶ満月。
狩野川沿いの道の先には宿場が見えてきています。
川はベロ藍でとても深い青。
1日の終わりが近づいてきていることが感じられます。
歌川広重「東海道五拾三次之内 吉田 豊川橋」
右側には城。
修繕中でしょうか、組まれた足場に立つ人物が遠くを眺めるような不思議なポーズをしています。
川の青がとても深くきれいな色で城の白色によく映えます。
歌川広重「京都名所之内 嶋原出口之柳」
京の名所を描いた10枚揃いのシリーズもの。
嶋原は京の花街。
下弦の月が雲越しに見え隠れする中、酔った人々が出口にある柳の木のそばをふらふらと歩いていきます。
遠くの山は霞み、ぼやけています。
歌川広重「江都景勝 よろゐの渡し」
鎧の渡しは茅場町と小網町を結ぶ渡し。
日本橋川はここを通り、隅田川へ合流します。
物資の運搬が盛んだったようで、米俵を積んだ船などが見られます。
川の青さと白壁の白さがとても美しい。
歌川広重「月二拾八景之内 葉ごしの月」
流れ落ちる滝に舞い落ちる葉、その向こうに月。
装飾的で美しい作品です。
《2.広重ブルーの世界 2弘化期から安政期の風景画》
ここには弘化期から安政期の風景画が展示されています。
広重の画業としては後半。
弘化期から62歳で没するまでで、最晩年の代表作「名所江戸百景」などがメインとなります。
画業は後半とはいえ風景画の主流であった横長のスタイルを縦長にするなど挑戦してるようすもうかがえます。
歌川広重「六十余州名所図会 阿波 鳴門の風波」
ぐるぐると大きな渦が手前に描かれています。
泡立つ波頭など躍動感ある作品です。
歌川広重「六十余州名所図会 壱岐 志作」
夜の雪景色。
島を雪が覆い尽くしています。
夜空にも雪の白色がぽつぽつと。
真っ暗に白でとてもきれいです。
歌川広重「六十余州名所図会 信濃 更科田毎月鏡蚕山」
最初に見た肉筆浮世絵でも描かれていた場所。
棚田に映る月の美しさは何度も描きたくなる美しさだったのでしょう。
見に行ってみたくなりました。
歌川広重「名所江戸百景 深川木場」
雪景色の中、立てかけられた木材の向こうを蛇行して流れる川。
その水の青さがとにかく美しい。
どんよりした空模様は"あてなぼかし"という技法で、黒いもやのようなもので表現されています。
ここは現在の木場公園のあたりだそう。
歌川広重「名所江戸百景 鐵砲洲稲荷橋湊神社」
大胆な構図です。
手前に大きく2本船の帆柱があり、その向こうに景色が描かれています。
湊稲荷は船人たちの守護神として人気だったそう。
物資を載せた船が行き交い、活気が感じられます。
歌川広重「名所江戸百景 永代橋佃しま」
篝火をたいて、白魚漁をしているところが描かれています。
橋の下からのぞくような構図です。
暗い中、ぽっと明るい篝火と空の星も白く輝いています。
水は橋の下の陰になるようなところは濃く描かれるなど、細かな点まで丁寧に表現されています。
《3.広重ブルーの世界 3花鳥画・美人画・団扇絵》
これまでは風景画が多かったのですが、ここでは花鳥画・美人画・団扇絵の展示です。
特に団扇絵は庶民風俗や説話を小さな画面に丁寧に描いてあり、当時の様子が伺い知れます。
歌川広重「燕子花に白鷺」
白鷺や花は輪郭を用いず柔らかな質感が表現されています。
また白鷺の羽は空摺り。
細かなところまで丁寧です。
《4.浮世絵 色彩革命の歴史》
ここでは浮世絵の初期からベロ藍が多用される天保期以前の作品が展示されています。
歌川豊春「浮絵 中秋之景月見図」
錦絵誕生以降の作品。
広い屋敷で行われた月見の様子が描かれています。
透視図法を使い、奥行が表現されています。
庭の木々には影が描かれるなど、新しい西洋の技法をふんだんに使った作品。
《5.浮世絵界の青の時代》
青色の絵具が藍からベロ藍へ変わるのは天保元年から同2年ごろ。
北斎が「富嶽三十六景」を広重が「東都名所」を生み出します。
ここではその他の絵師の作品です。
葛飾北斎「冨嶽三十六景 磯川雪ノ旦」
磯川(小石川)の牛天神社(北野神社)を描いたもの。
境内の茶屋から雪景色を眺める人々が描かれています。
遠くには富士も描かれています。
真っ白な雪景色に真っ青な空。
目が覚めるようです。
《6.幕末の青 広重同時代から広重没後》
ここでは広重以外の同時期の絵師、そして没後の作品が展示されています。
歌川小虎「東海道 神奈川」
文化3(1806)年、朝廷の攘夷実施の求めに応じ、十四代将軍、家茂が上洛の途についたところを描いたもの。
画面左側にその行列が。
右側は海が描かれ、とても見晴しがいい場所です。
海には外国船らしきものも描かれ、新しい時代が近くに来ていることを感じさせます。
《7.明治の赤 -新時代の色》
幕末から明治時代にかけて舶載の赤色絵具(アニリン染料)が登場します。
浮世絵にも使われ、江戸とは違う色彩の作品が生まれました。
四代歌川豊国「東京府下第一大区京橋銀座尾張街通煉化石造商法繁盛之図」
3枚つづりの大きな作品。
明治2(1869)年、5年と立て続けに火災にあった銀座。
そこをレンガ街として再建し、明治10年ごろ完成します。
描かれているのはその再建された景色。
ちょうど銀座1丁目のあたりで後ろには新橋発横浜行きの蒸気車が描かれています。
両側には大きな洋館が立ち並び、洋装の人々が道を行き交います。
馬車が通り、まさに文明開化です。
以上です。
華やかで美しい世界でした。
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