RuN RiOt -marukoのお菓子な美術室-

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休日に全力で生きるOLの日記(笑)

バルテュス展 (その1)

2014-05-18 21:30:00 | 美術
見てきました

東京都美術館

会期は2014年4月19日から2014年6月22日。

"賞賛と誤解だらけの20世紀最後の巨匠"
こんなフレーズが描かれたチラシ。
少女が下着を見せるような挑発的なポーズ。
ただ、私はこれで一気に惹かれてしまったのです。
それが何かはうまく言えないのですが。


こちらのチラシも好き。
鏡を見つめる少女の表情が特に。
この展示も楽しみにしていたので、古いチラシがいっぱいです。
会期がしっかり決まっていなかったり、裏が白だったり。。。

ピカソをして
"20世紀最後の巨匠"
と言わしめたバルテュス。
1941年にはピカソが、バルテュスの「ブランシャール家の子どもたち」購入。
11月にはバルテュスがパリにピカソを訪問しています。
その作品は、ピカソの死後1971年、ルーブル美術館に寄贈され、1985年、ピカソ美術館に預託されました。
見に行かなくては!!

かなりしっかりメモしてきました!!
2回に分けて書いていきます。
展示は第1章から4章まででしたので、第1章と第2章を、、、
と思ったのですが、第2章の作品がかなり多いため、第1章と第2章途中までを「その1」で。
第2章途中から第4章までを「その2」で書いていきます。
今日は「その1」です。

さて、今回はバルテュスという画家の個展です。
2001年に亡くなって以降、最大の回顧展。
まずはバルテュスについて。
バルテュス(1908-2001)
本名バルタザール・クロソフスキー・ド・ローラ。
パリ生まれ。
閏年の2月29日生まれだそう。
ポーランド貴族の血を引くバルテュスの父は美術史家。
母は画家。
兄は小説家・画家でサドやニーチェの研究家としても知られるピエール・クロソフスキー。
ピエール・ボナールなどのモンマルトルの画家との交流があり、幼いころから画家や詩人に囲まれ、芸術は身近なものでした。

バルテュスは美術学校に通うことなく、独自に技術を身に付けます。
初期イタリア・ルネサンスのピエロ・デッラ・フランチェスカ、フランス古典主義のニコラ・プッサン、フランス写実主義のギュスターヴ・クールベ……
ヨーロッパ絵画の伝統に触れながら、百花繚乱の様相を呈した20世紀美術の流派のどれにも属することなく、独特の世界を築き上げていきました。

展示は年代順となっています。

《第1章 初期 (1908-1931)》
パリで生まれ、モンマルトルの画家たちと交流し、芸術的な環境で育った幼少時代。
戦争のために、フランスとパリを行き来していました。
彼の両親は1917年に別居。
母親は詩人のライナー・マリア・リルケと恋愛関係になります。
絵筆を執った幼少期はもっとも重要な時期でのちにバルテュスは
「私は自分の幼少時代と思春期を宝物とし、そこから多くの主題を汲み取りました」
と述べています。
また中国や日本に熱中し、1922年には岡倉天心の「茶の本」を読みます。
1926年イタリアでピエロ・デッラ・フランチェスカという偉大な手本と出会うのです。

「自画像」
鉛筆と木炭で描かれた自画像。
なかなか渋くてかっこいい。
バルテュスの制作中を撮った写真が最初に大きく展示されていたのですが、これがすごくかっこいい。
くわえ煙草で絵筆を握りこちらを見ているもの。
俳優さんかと思うほど。
(maruko的)画家イケメンランキングで一気に上位に躍り出ました。笑

「『ミツ』バルテュスによる40枚の絵、ライナー・マリア・リルケの序文」
バルテュスが11歳の時に描いた絵本。
彼の最初の作品といえるでしょう。
愛猫ミツを描いたもの。
「ミツ」は、フランスの女性作家コレットが1919年に出版したばかりの小説「踊り子ミツ」から取っているそう。
ある日、主人公の少年はレマン湖畔のベンチで1匹の猫を見つけます。
少年は猫を自宅に連れて帰り、可愛がりどんな時も一緒。
クリスマスの夜、一緒のベッドに寝ていましたが、翌朝、猫はいなくなっていました。
色々なところを探し回りますが、とうとう見つかりません。
部屋の中で泣いているところで物語は終わります。
小間割されていてどことなく漫画的。
(現代の漫画ではなく、北斎漫画とか月岡芳年のほうです)
当時、母親の恋人だった詩人リルケがこれを見て感動し、序文をつけて出版させました。
11歳でこれはすごい。
絵も部屋の内部の構図や描写がとても的確。
すっきりと描かれています。
感情表現なども分かりやすくかわいらしい。

バラディーヌ・クロフスカ「バルテュスとミツ」、
描かれているのは黒い猫を抱えた少年。
描いたのはバルテュスの母親。
さらっと描かれたように見えますが、色彩などとても美しい。
淡い黄色の背景に青いボーダーのトップス、紺色のズボンのかわいらしい少年。
オシャレです。

「ミュゾの風景」
緑あふれる景色です。
15歳のときの作品だそう。
これまたお見事としいえないような出来。

「聖木の礼拝(ピエロ・デッラ・フランチェスカ<聖十字架伝>にもとづく)」
「十字架の発見と検証(ピエロ・デッラ・フランチェスカ〈聖十字架伝〉にもとづく)」
「十字架の称揚 エルサレムに十字架を持ち帰るヘラクリウス帝(ピエロ・デッラ・フランチェスカ〈聖十字架伝〉にもとづく)」
バルテュスは18歳の時に画家を志してイタリアへ。
聖フランチェスコ聖堂で、初期ルネサンスの画家ピエロ・デッラ・フランチェスカのフレスコ画《聖十字架伝》に感動します。
そして内陣の壁画連作10点のうち6点を模写。
その作品がこれなのです。
ピエロの構図に興味があったようで、秩序ある幾何学性。
人物の配置や明暗の捉え方。
それらに重点をおいていたのがよくわかります。
それにしてもピエロ・デッラ・フランチェスカってすごいですね。
私の大好きな有本利夫もバルテュスと同じ作品を見て影響を受けています。
そして藝大の卒業制作は「私にとってのピエロ・デラ・フランチェスカ」
これまで見てきた画家にもルネサンスの画家はもちろん、シャヴァンヌ、アンドリュー・ワイエスなどピエロ作品に感銘を受けた画家は数多く……
ピエロ・デッラ・フランチェスカ展の開催はたぶん不可能でしょう……
いつか見に行かねばなりません。

「オデオン広場」
落ち着いた茶系の色彩で働く人々を描いた作品。
ですが活気があるわけではなく、静かな印象。

「空中ごまで遊ぶ少女」
長い間行方不明で再発見されたのは2008年。
日本初公開の作品となります。
パリのリュクサンブール公園を描いた連作の1つです。
両手を広げ、空中ごまを高く飛ばした瞬間が描かれています。
少女は頭をのけぞらせ、まさにその一瞬をうまく切り取った作品。
色彩や構図も含め、この作品は大好きです。

「ベルンの帽子のある静物」
画面左から光があたり、影が伸びています。
色彩は茶系で地味な印象ですが、構図が面白い。
本に帽子、椀のようなものに取っ手の付いた椀、赤い布。
様々なものが組み合わされています。
バルテュスの静物は極めて少ないそうでこれも最初の静物画だとか。

「リュクサンブール公園の夕立」
こちらもリュクサンブール公園連作の一つ。
噴水が流されていたり、両手で傘を持つ人が描かれていて風の強い様子が分かります。
こちらも地味な色彩ですが、モチーフの配置がおもしろい。

「リュクサンブール公園」
これもリュクサンブール公園。
左端には大道芸の練習をしている人が描かれています。
空はオレンジ色に染まっています。
静かな印象です。

《第2章 バルテュスの神秘 (1932-1953)》
バルテュスは「嵐が丘」の挿絵などを手がけました。
そこには来るべき美術的プログラムが内包されています。
そして1930年代以降、扇情的な少女と部屋、そして猫が頻繁に取り上げられるようになります。
そして1934年ピエール画廊で最初の個展を開催します。
このあたりから好みの作品ばかりになってきました。

「エミリー・ブロンテ『嵐が丘』のための14枚の挿絵」
「嵐が丘」の舞台、英国ヨークシャーを旅したバルテュスは、その風景に魅了されます。
当時、外交官の婚約者がいた令嬢アントワネット・ド・ヴァトヴィルへの恋に苦しんでいた、貧しい青年画家であったバルテュス。
この状況を嵐が丘の令嬢キャシーと孤児ヒースクリフに投影したのです。
黒一色で描かれた作品。
それらは今後の作品を予感させるポーズや構図をしていました。

「乗馬服を着た少女」
ピエール画廊での最初の個展に出品された作品のひとつ。
辛い恋のお相手、アントワネット・ド・ヴァトヴィルへがモデルです。
赤い背景に黒いシャツ、白いスカートの少女が描かれています。
少し澄ましたような表情がかわいらしい。

「猫たちの王」
黒いジャケットに赤い短いタイ、スリムなスタイルのパンツという井で立ちの自画像。
顔の彫りは深く目元は濃い影がさしています。
足元には猫がすりよっています。
椅子に立てかけられた板には、
"A PORTRAIT OF H.M. THE KING OF CATS printed by HIMSELF MCMXXXV"
(彼自身の筆になる、猫たちの国王陛下の所蔵、1935年)
そこには鞭も描かれています。
なお、このタイトルはシェイクスピアの"ロミオとジュリエット"に登場する"猫たちの王"に想を得ているのだそう。
バルテュスは猫と一つだと信じていたようです。
「自分は雄猫の匂いがするから、雌猫が後をついてきた」と子供のころは自慢していたののだとか。
猫の人に媚びない優美さが好きで、自分を猫に擬えた作品を残しています。

「キャシーの化粧」
ピエール画廊での最初の個展に出品された作品のひとつ。
この作品は「嵐が丘」の場面を表しているよう。
求婚者を迎えようと身支度をしているキャシーをヒースクリフが問い詰めている場面。
ですが、描かれているキャシーは全裸にガウンを羽織っているだけ。
ヒースクリフはキャシーのほうを見ず、険しい表情をしているのみ。
キャシーのモデルは当時の辛い恋の相手、アントワネット・ド・ヴァトヴィルへ。
ヒースクリフはもちろんバルテュスです。

「鏡の中のアリス」
ピエール画廊での最初の個展に出品された作品のひとつ。
椅子がおかれただけの空間。
そこで方胸をはだけ、左足を椅子にかけ、ひざを立てて性器を見せながら櫛で髪をとかす女が描かれています。
目は白めを向いているようで、かなり強烈な作品。
バルテュスによるとアリスが相似している鏡は鑑賞者、とのこと。
う、、すごいな。。。

「《山(夏)》のための習作」
山の平坦なところで伸びをする女性、草の上に横たわる人。。
謎の人物配置です。
お互いが関係しているのかしていないのか、それすらもよく分かりません。
たぶん友達同士ではないんだろうな、、とは思いますが。笑
なお習作ではない「山」はメトロポリタン美術館にあるそうです。
行かねば!!

「ピエール・マティスの肖像」
ピエール・マティスは画家アンリ・マティスの子息。
バルテュスの画商で1938年にはアメリカでの個展を実現させています。
椅子に片足をのせ、その足の膝に肘をついたポーズをしています。
椅子に足を載せるポーズは「鏡の国のアリス」で描いていますが、それとはまったく違う様相。
まぁ、男性ですし服着ているし。。
こちらは肖像画としてしっかりしています。

「夢見るテレーズ」
バルテュスが初めて少女をモデルに描いた作品。
モデルはクール・ド・ロアンの隣人の失業者の娘テレーズ・ブランシャール。
椅子の上で左膝を立て、両手を頭の上で組んで、少し左を向いて眼を閉じています。
足元にはけっこう粗い筆遣いで描かれた猫。
立てた膝の間からは白い下着が見えています。
扇情的。
壁の縦の線、少女の肘は水平、椅子は斜めと複雑な構図になっています。
クッションの緑色、少女のブラウスの白、スカートの赤の3色が抑えられた色調のなかで目立ちます。
ですが、挑発的に描いたのは最初の作品のみ、とのことでこの作品は違うのだとか。

「牛のいる風景」
丘から見下ろした町の景色。
牛と人が左端にいるのどかな風景画。
手前にある大きな倒れた木が気になります。
落ち着いた色でまとめられています。

「おやつの時間」
果物が皿にもられ、りんごはそこから落ちそうです。
それを覗き込む少女の横顔が美しい。
テーブルの上には果物のほか、シードルの入ったグラス。
そしてナイフの突き刺さったパン。
色彩はとても鮮やかで美しいのに、不穏な空気が漂っています。

「猫と少女」
ほぼ裸でベッドに横たわる少女。
ちょっと苦しそうな不自然な体制です。
傍らには猫。
この作品はバルテュスが少女の裸体を初めて正面観で描いた作品として知られているのだそう。
それまでは成人女性か、横向き、または後ろ向きの少女でした。

「美しい日々」
チラシやポスターにも使われている作品。
描かれている少女はソファに不自然な格好で座っています。
右胸を半分のぞかせ、左足をたて、右足はすーっと伸ばしています。
そして手鏡を除いています。
手鏡を見る少女、というバルテュス作品に何度か見られるモチーフが初めて登場した作品。
奥の暖炉では男性が火をくべているのでしょうか。
赤々と燃え上がる炎がまぶしいほどです。

以上で「その1」
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ここから先も素晴らしい作品が待っていました。



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