2021年7月8日 NHKBS1「国際報道2021」
中国で起きている新たな食のブーム。
サラダに代表される低脂肪・低糖質などをうたうライトミール(軽食)。
中国では野菜好きの人たちを指す“食卓族”という新たな言葉が生まれている。
このブームを追い風に
世界的に評価の高い日本発の野菜のタネを売り込む取り組みが
いま本格化している。
中華料理として思い浮かぶのは
たっぷりの油で肉や野菜などを豪快に炒めた料理。
ところが今新たなトレンドが生まれている。
北京の中心部にあるレストラン。
この店の売りは生野菜を主体にしたメニュー。
油を使わずカロリーを抑えた「ライトミール」である。
(客)
「いつも油っこい料理をたくさん食べているので
たまにライトミールを食べると健康的に感じます。」
「油も塩もないし消化にいい。
私たち30歳以上にはとってもいいわ。」
日本円で1品600~800円とランチの値段としてはいくぶん高めだが
健康に気を遣う若者などを中心に大人気となっている。
こうした傾向は地方にも広がっている。
内陸部の湖南省長沙。
市民の野菜の質へのこだわりも高まっている。
有機野菜などを売りにしたスーパー。
トウガラシ 1パック 日本円で2,300円余。
それでも売れているという。
この地域の料理に欠かせないトウガラシなど
農薬や化学肥料を使っていない有機野菜が並ぶ。
(客)
「品質が良ければ値段が多少高くても買います。
高いものは舌触りもいいから。」
「添加物を使っていないか
有機栽培かどうかを気にします。
みんなの生活水準が上がり
食べ物への要求が上がっているので。」
2008年 中国製の冷凍ギョーザから殺虫剤の成分が検出される事件が起きるなど
中国ではかつて食に関する事件や事故が相次いだ。
食品の安心・安全を重視する消費者が増えて
中国政府は2009年に「食品安全法」を施行。
野菜についても
値段が高くても高品質なものが人気を集めるようになっていた。
こうした人々の意識の変化を大きなビジネスチャンスととらえて動き出す日本企業も出ている。
大手商社の三井物産は
日本の野菜の種を中国で販売するビジネスに参入。
中国のメーカーとのプロジェクトを正式にスタートさせた。
(三井物産 森安東アジア総代表)
「中国そして世界の皆様の豊かな生活作りに貢献できるよう尽力したい。」
取り扱うのは日本の中小の種子メーカーが品種改良して作り上げた野菜のタネである。
味が良い上に病害にも強く
安定した収穫量が見込めるのが特徴である。
海外展開のため中小のメーカーとともに合弁で企業を起ち上げた。
手を組んだのが中国最大手の種子メーカー。
中国は野菜の生産が世界の半分以上を占める大市場である。
(隆平高科 袁副会長)
「中国は急速に発展している国で
市場は極めて大きい。
みなさんには早く中国に溶け込んでほしい。」
(三井物産 森安東アジア総代表)
「今後 両者で協力してウィンウィンを目指して頑張りましょう。」
日本で開発されたタネをどう中国で育てるのか。
さまざまな野菜の栽培実験も始まっている。
(湖南湘研種業 劉さん)
カボチャは
「日本から持ってきたものは舌触りがいい。
中国のものに比べ品質が高い。」
オクラも日本で開発された。
(湖南湘研種業 劉さん)
「このオクラは形がきれい。
鮮やかな緑色で鮮度が長持ちする。」
日本の種子メーカーはタネからどうやって継続的に利益を得るのか。
実は品種改良でできたタネで品質の高い野菜が安定してできるのは
遺伝の特性上
1代限りなのである。
1代目の野菜から取れたタネをまいても
次の世代は品質にばらつきが出てしまう。
安定した品質の野菜を育てるには農家はタネを買い続けるしかない。
そのため種子メーカーは継続して利益を得ることができるのである。
一方 農家もタネを買うことで大きなメリットがあるという。
(農家 肖さん)
「色・形がそろっているし病害虫にも強い。
収穫量も多いし商品もいいからタネを買います。」
この商社では日本で開発されたタネを売り込むだけでなく
中長期的には
日本と中国のタネをかけ合わせるなど
共同で
世界的にも競争力のある商品を開発する計画である。
(三井物産広東 菅野総経理)
「中国はマーケットそして大きいのと同時に
生産力 開発力も十分持っています。
お互い持っている力やリソースを融合させることで
世界のマーケットで展開することも考えています。」