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ロシア 日本の“旧車”が若者の心をつかむワケ

2021-08-04 17:07:35 | 報道/ニュース

2021年6月25日 NHKBS1「国際報道2021」


絶妙なアクセル操作で車をコントロールする
技術とスピードを競うドリフト。
日本の峠道で始まり
今や世界的なモータースポーツとなっている。
なかでも熱狂的なファンが多いのがロシア。
今年 日本以外で初めての世界選手権が開かれた。
3年前に世界一の座を獲得した
ロシアのゲオルギー・チフチャン選手。
自慢の愛車は
かつて日本の走り屋たちに愛された日産シルビア。
(ドリフトレース 元世界チャンピオン ゲオルギー・チフチャン選手)
「このクルマは前後の重量配分がとてもよく
 ボディが丈夫でしかも軽量
 スタイルもすばらしい。」
ドリフトで多くの選手が使っているのが
主に1980~90年代にかけて生産された日本車
いわゆる“旧車”である。
今その旧車がロシア全土で若者の心をとらえている。
週末になると各地で旧車のオーナーたちが集まり愛車を披露し合う。
(参加者)
「格納式ライトにミッドシップ
 後輪駆動にハイパワー
 こんなクルマはもう2度と生まれないでしょう。」
現在のクルマにはない独創的なデザインや
技術者のこだわりが詰まった機能などが魅力だという。
「簡単に修理もできるので
 このクルマの設計者に感謝したい。」
構造がシンプルで自分でも修理することができ
維持費が安上がりなこともロシアの若者が支持する理由である。
Q.大きくなったらどんな車を買う?
「日本のクルマ。
 一番好きなのは日産スカイライン。」
ロシアには右ハンドルの日本車が1990年代ごろから中古車として輸入され
主に極東で広く普及した。
しかしロシア政府は国産車などを保護するため
関税の引き上げや保安基準の変更など
輸入を規制する措置をたびたび導入。
これに対し
日本の中古車が普及していた極東の市民が激しく反発し
抗議デモも起きるほどだった。
その中古車が今ロシア各地に広がり
旧車としてロシアの人々の心をつかんでいるのである。
旧車の魅力はクルマの機能だけではない。
モスクワで暮らすカリーナさん(22)とドミトリーさん(29)。
政府がローンの補助などで優遇する国産車や
都市部の富裕層が好む欧米の高級車にはまったく興味がわかないという。
それはなぜなのか。
(カリーナさん)
「キャブレターです。
 これがエンジンをより面白くし
 独特な魅力を与えてくれます。」
もはや単なる機械とは思えず
“家族のような存在”だという。
(カリーナさん)
「このクルマのキャブレターはとても繊細で
 燃料の質や気圧によってエンジンの反応が変わります。
 どこか人間的で
 機械なのに気分があるのです。」
ソビエト崩壊から30年。
消費文化が定着したロシアで
なぜ若者たちはあえて日本の旧車を求めるのか。
右ハンドルの日本の中古車を切り口に社会の変化を見つめてきた作家
ワシリー・アフチェンコさんはこう分析する。
(作家 ワシリー・アフチェンコさん)
「最近の車は冷蔵庫を買ったときのように何も感じませんが
 旧車には魂があるように思えるのです。
 日本から渡ってきて何年もの間ロシアを走り回り
 車がオーナーの感情を受け止めてきたからかもしれません。
 残念ながらグローバリゼーションから逃れることはできません。
 日本の旧車のようにカルト的で独創性にあふれるクルマは
 今や少なくなっています。」
環境性能や経済性が優先され
画一化が進む世界の自動車産業。
その一方で
ロシアの若者たちの間でも
古いものを大切に使い続けるというライフスタイルが確実に広がっているようである。



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