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エジプト エチオピア ナイル川をめぐる対立

2021-08-10 06:41:32 | 報道/ニュース

2021年7月5日 NHKBS1「国際報道2021」


エジプトのカイロを流れるナイル川周辺は
高層ビルなど建物が密集して交通量も多い。
生活のすぐそばにナイル川が流れている。
その長さは世界最長の約6,700km。
数千年にわたって領域の暮らしを支えてきた。
「エジプトはナイルのたまもの」
これは歴史家ヘルドトスの言葉である。
エジプトにとってナイル川は国内の水需要の95%をまかなう生命線である。
ただ近年エジプトでは人口が急増して
去年1億人を突破したことで水不足に陥りつつある。
さらにいま大きな懸念となっているのが
ナイル川の上流にあるエチオピアの動きである。
青ナイル川にアフリカ最大級のダム
大エチオピア・ルネサンスダムを建設し
水力発電を行う予定で
すでに水を溜め始めている。
これによってエジプトではさらなる水不足に陥りかねないとして
エチオピアとの対立が深まっている。

人口の急増で
1人あたりの水消費量が
国連が定める水不足の水準となっているエジプト。
とりわけ大きな課題となっているのが
水需要の75%を占める農業用水の確保である。
古代からナイル川の水を畑に引く灌漑(かんがい)農業が行われてきた。
今でも用水路からポンプで大量の水を汲み上げ畑にそのまま流すのが一般的である。
政府は水不足に直面するなか
ナイル川から用水路に流す水の量を制限せざるを得なくなっている。
(農家 アハマドさん)
「いまは10日間で5日しか用水路に流れない。
 水不足が進めば作物も栽培できなくなります。」
エジプト政府は
用水路をコンクリート壁に改修して
地中への浸水を防いだり
大量の水を使うコメなどの栽培を制限したりする政策を導入。
節水に乗り出している。
中でも大々的に推進しているのがいわゆる“天敵灌漑(かんがい)”である。
プラムや豆を栽培している農家は3年前に導入した。
くみ上げた水をホースに流し 
その穴から水が効率的に作物の周りに滴り落ちる方法に変更した。
これで水は約75%節約できた。
(農家 ムハンマドさん)
「点滴灌漑によって使う肥料も少なくて済み
 収穫できる作物が増えました。」
こうしたなか
ムハンマドさんたち農家の人たちが懸念しているのが
エチオピアで進むダム建設である。
ナイル川の水量に影響が出ないか
気がかりだという。
(農家 ムハンマドさん)
「ダム建設は全ての面で危機といえるので
 国同士で解決策を見い出してほしい。
 ナイルの水は数千年前から続く
 エジプトの人々の命そのものなんです。」
エチオピアで建設が進む大エチオピア・ルネサンスダム。
国民の半数以上に十分な電気が行き届いていないため
2011年から始まった国家プロジェクトである。
総貯水量は740億立方メートル(琵琶湖の2,7倍)。
2020年の夏 第1段階の貯水を行ない
雨季を迎える2021年7月にも第2段階の貯水を始めるとしている。
ダムが建設されているのはスーダンとの国境近くのナイル川の上流。
下流のエジプトやスーダンは貯水方法や放水量などをめぐって
建設当時からエチオピアと交渉を続けてきたが
合意に至っていない。
アメリカも仲介に乗り出したが
2020年 交渉は頓挫し
トランプ元大統領からはこんな発言も飛び出した。
(アメリカ 当時のトランプ元大統領)
「追い詰められればエジプトはダムを爆破するだろう。」
ダム建設は自国の権利だとするエチオピアは
(エチオピア 諜報・治安当局局長)
「どんな邪魔があっても
 第2段階の貯水は予定通り進める。」
一方エジプトは
合意がないまま貯水が進めば特に渇水時に放水量が減らされて深刻な水不足につながる恐れがあり
国の命運が握られるとして反発を強めている。
(エジプト シシ大統領)
「エジプトの水を侵害することはレッドラインだ。
 誰も水1滴奪うことはできない。
 そんなことをしたら想像できない状況になるだろう。」
エジプトとスーダンは2021年5月
「ナイル川の守護者」と根付けた大規模な軍事演習を実施。
エチオピアへの軍事的な対応もちらつかせている。
(ナレーション)
エジプト軍最高司令官は
「この訓練に参加した部隊はエジプトとスーダンからのあらゆる脅威に対する準備はできている」
と述べた。
ナイル川の水資源をめぐる対立は
地域の安全を脅かしかねない火種となっている。

 

 

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