11月19日 編集手帳
ちょっと艶っぽい俗謡がある。
〈浮名立ちゃそれも困るし世間の人に知らせないのも惜しい仲〉。
米国の次期大統領、
ドナルド・トランプ氏と会談した安倍首相の胸の内は唄のとおりかも知れない。
数々の暴論で名をはせた人と手放しで意気投合した、
と浮名が立つのは困る。
さりとて、
同盟関係の前途に漂う不透明感をぬぐうには、
各国首脳の誰よりも早い顔合わせを世間に見せつけずにおくのも惜しい。
距離感のむずかしい会談であったろう。
法あるときは法に従い、
法なきときは慣習に従い、
慣習なきときは情理に従う。
これが普通の人の行動原理だが、
型破りで売るトランプ氏の場合は予測がつかない。
政治経験のない氏が、
法や慣習をどこまで承知しているかも不明である。
安倍首相がまずは「情理」の情、個人と個人の信頼づくりに重きを置いたのはうなずける。
それはそれとして、
地球規模で顰蹙(ひんしゅく)を買いつづけた人が「信頼できる指導者」(安倍首相)と太鼓判を押される。
ひと月前、
誰が予想しただろう。
予想という字を逆さに読めば、
ウソヨ、ウソヨと言っている…。
口ずさむ戯(ざ)れ唄がほろ苦い。