1月26日 キャッチ!
アメリカ南部ミシシッピ州にあるケンパー発電所。
出力は約60万キロワット。
現在建設中だがすでに発電を始め
今年夏までに完成する予定である。
低品質の石炭を使う最新式の火力発電所だが
最大の特徴は排出されるCO₂を回収する最新技術が使われていることである。
発電によって発生するCO₂の65%以上を回収できる。
回収できるCO₂の量は年間約380万トン。
大気に放出される二酸化炭素の量は
比較的クリーンだとされる天然ガスの発電所とほぼ同じレベルにまで抑えることが出来る。
回収された二酸化炭素はパイプラインで油田に運ばれ
深さ1,6kmの場所に液体として封じ込められる。
この技術はCCS(二酸化炭素貯蓄)と呼ばれているが
アメリカではただ二酸化炭素を地下に閉じ込めるだけではなく
原油のくみ出しに利用しようという動きが盛んになってきている。
送り込んだ二酸化炭素を地下で原油と混じり合わせることによって
原油が回収しやすくなるのである。
EOR(石油増進回収法)というこの技術を使うと採り出せる油の量が最大で20%増加。
くみ上げられた二酸化炭素は再び分離され
何度も原油の採り出しに使用された後
最終的には固い岩盤の下でしっかりと封じ込められるという。
アメリカでは限られた油田からできるだけ多くの原油をくみ上げようと
近年 EORが広がりを見せている。
アメリカ政府はCCS技術の確立を目指す企業に
総額で14億ドル(約1,600億円)の補助金を出して積極的に支援している。
ケンパー発電所を建設した電力会社では
ヨーロッパや中国にもこの技術を売り込みたいと考えている。
(ケンパー発電所 ブルース・ハーリントン氏)
「我々の技術は世界中のCO₂の排出削減に貢献できるはずです。
ここでの削減は微量ですが
低品質の石炭を使うところならどこでも適用できるのです。」
アメリカではCO₂を地下ではなく製品の中に取り込んでしまう技術を開発する企業も登場している。
ニュージャージー州にあるベンチャー企業。
政府から支援を受けているこの企業が取り組んでいるのは
全く新しいセメントの製造技術である。
セメントの製造では原材料の石炭石を高温で加熱するため大量のCO₂が発生する。
一般的に1トンのセメントを製造するのに排出されるCO₂の量は約800キロ。
世界全体では年間約20億トンにものぼる。
どうすればその量を減らせるのか。
この企業ではまず原材料に含まれる石炭石の比率を大幅に下げ
製造過程で排出されるCO₂を減らした。
すると出来上がったセメントは一般的なものと大きく異なる特徴を持つようになった。
一般的なセメントは水を混ぜるとすぐに化学反応が始まり固まり始める。
一方 この企業のセメントは何時間たっても水を混ぜるだけでは固まらない。
固めるために必要なのはCO₂。
セメントに砂利などを混ぜた後
高純度で満ちた装置に入れると
セメントがCO₂を取り込んで化学反応を起こし固まり始める。
24時間でしっかりと固まり
強度や耐久性も従来のコンクリートと遜色はないという。
取り込まれたCO₂は化学反応によって形が変わり
コンクリートの中に取り込まれることになる。
製造過程で排出されるCO₂の削減
さらに固めるときのCO₂の使用によって
通常と比べ合わせて70%のCO₂を減らすことが出来る。
この企業ではこの魔法のレシピを手に
アメリカやカナダだけでなくヨーロッパやアジアにある企業とも交渉し提携先を増やそうとしている。
(ベンチャー企業 ディクリストファーロCEO)
「この技術は必ず受け入れられます。
ただCO₂を削減するだけではなく
セメントとコンクリートの製造コストを下げることにもなるのです。
我々のコンクリートは従来の製品の代用品となりえます。」