「た、た……たすかった……よ」
うまく喋れない。思いのほか長く、冬の海に浸かっていたようだ。
勝部は、不覚にも女に背負われて、岸にたどりついた。
恥もなにもない。あやうく死ぬところだったのだ。
それにしても、なんだったのだ。あれは。
女は、海岸近くに停めてあった車まで勝部を運び、助手席に座らせた。
勝部が小柄だとはいえ、驚くべき体力といえた。
車の中は、暖房が効いていて、心地よかった。
女は、自分は運転席に座った。
「あ…あんたの、車かい」
「そうです。暖かくしていれば、すぐ良くなると思います」
女は、ポットに入った熱いお茶を、勝部に差し出した。
「これ……飲めますか?」
「あ、ああ……」
身体が徐々に、回復していくのがわかった。
30分ほど、そうしていただろうか。
「すまんな。あんたの車がびしょ濡れだ」
勝部は、ようやくまともに話せるようになったが、それでもまだ、震えが止まらなかった。
「いいんですよ、そんなこと」
「あんた……アッちゃんの通夜に来てくれてたね」
「あ……はい」
「名前はなんていうんだい?」
「トモミって呼んでください」
「じゃあトモミさん、あんた、アッちゃんがなぜ死んだのか、なにか知ってるかね」
「アーノン……」
「なんだって?」
「アーノンが……現れたんです」
「なんだい、そのアーノンってのは」
「その前に、きちんと自己紹介させてください」
「ほえ?」
思わず、間抜けな声が出ていた。
トモミは、勝部の方に向き直り、頭を下げた。
「申し遅れました。私、勝部智美っていいます」
「え……おれと、同姓か」
「同姓というか、私、高道の娘です」
「は?」
智美は、にっこり笑いかけた。
「はじめまして。おじいちゃん」
おじいちゃん……?
智美の運転する車は、勝部の家に向かっていた。
「本当にいいんですか?」
「あんたは命の恩人で、だいじな孫だ。車の中でなんて寝かせられないよ」
「……」
「この村にしばらくいるつもりなら、おれの家に泊まってくれ。大したもてなしは、出来ないが」
「ありがとう、おじいちゃん」
自然と、口元がほころんでくる。
(おじいちゃん、か……)
初めは驚いた。しかし、よく考えてみれば高道だって50歳近いのだ。娘がこれくらいの年になっていても、おかしくはない。
「ああ、その家だ」
智美は車を停めた。
「まあ、高道の子が、こんなに綺麗になって……」
繁子も大喜びだった。
「いま、お風呂の用意をしてるからね」
なるほどな、と勝部は改めて思った。
智美を初めて見たとき、何とも言えない、不思議な感覚があったのだ。
血のつながり、というものは争えない。
(つづく)
うまく喋れない。思いのほか長く、冬の海に浸かっていたようだ。
勝部は、不覚にも女に背負われて、岸にたどりついた。
恥もなにもない。あやうく死ぬところだったのだ。
それにしても、なんだったのだ。あれは。
女は、海岸近くに停めてあった車まで勝部を運び、助手席に座らせた。
勝部が小柄だとはいえ、驚くべき体力といえた。
車の中は、暖房が効いていて、心地よかった。
女は、自分は運転席に座った。
「あ…あんたの、車かい」
「そうです。暖かくしていれば、すぐ良くなると思います」
女は、ポットに入った熱いお茶を、勝部に差し出した。
「これ……飲めますか?」
「あ、ああ……」
身体が徐々に、回復していくのがわかった。
30分ほど、そうしていただろうか。
「すまんな。あんたの車がびしょ濡れだ」
勝部は、ようやくまともに話せるようになったが、それでもまだ、震えが止まらなかった。
「いいんですよ、そんなこと」
「あんた……アッちゃんの通夜に来てくれてたね」
「あ……はい」
「名前はなんていうんだい?」
「トモミって呼んでください」
「じゃあトモミさん、あんた、アッちゃんがなぜ死んだのか、なにか知ってるかね」
「アーノン……」
「なんだって?」
「アーノンが……現れたんです」
「なんだい、そのアーノンってのは」
「その前に、きちんと自己紹介させてください」
「ほえ?」
思わず、間抜けな声が出ていた。
トモミは、勝部の方に向き直り、頭を下げた。
「申し遅れました。私、勝部智美っていいます」
「え……おれと、同姓か」
「同姓というか、私、高道の娘です」
「は?」
智美は、にっこり笑いかけた。
「はじめまして。おじいちゃん」
おじいちゃん……?
智美の運転する車は、勝部の家に向かっていた。
「本当にいいんですか?」
「あんたは命の恩人で、だいじな孫だ。車の中でなんて寝かせられないよ」
「……」
「この村にしばらくいるつもりなら、おれの家に泊まってくれ。大したもてなしは、出来ないが」
「ありがとう、おじいちゃん」
自然と、口元がほころんでくる。
(おじいちゃん、か……)
初めは驚いた。しかし、よく考えてみれば高道だって50歳近いのだ。娘がこれくらいの年になっていても、おかしくはない。
「ああ、その家だ」
智美は車を停めた。
「まあ、高道の子が、こんなに綺麗になって……」
繁子も大喜びだった。
「いま、お風呂の用意をしてるからね」
なるほどな、と勝部は改めて思った。
智美を初めて見たとき、何とも言えない、不思議な感覚があったのだ。
血のつながり、というものは争えない。
(つづく)
でも、そんなに成長するまで会ってなかったとすると、なにか理由があるんでしょうね。
この先どうなるんでしょうね♪
孫の智美と勝部が会ったことにより、高道との関係にも変化が生じるかもしれません。
さて、どうなるでしょう? んふふ♪
今日もありがとうございましたー!
高道は50近いーーーーー
高道=トロさん???
みたいなーーーーーーーー
あは!!!
トロさんにも、これくらいの娘がいても
おかしくない???
あ、なんか、変なコメントになっちゃったーーー
勘弁ねーーーーーーーーーーー!!!
実際、僕の同級生には子供が就職したやつがいるので。
高道も、ちょっと早めに結婚した、ということかな?
僕にこんな娘がいたら、どうでしょうね。
どんな感じだろう?
今日もありがとうございます♪
トロットロ
色々波乱の幕開けですね。
徐々に真相が出てくる・・・。
うわー 楽しみ!
暑さに負けずに頑張ってくださいねー。
これからいろいろと、明らかになっていきますよ。
今回、アーノンという言葉が初めて出て来ましたが…
とりあえず、今夜の更新をお楽しみに!
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
頑張ります。