ずいぶん昔に読んだ本ですが、
今読み返しても、じゅうぶん再読に耐えると思います。
超肥満体の主人公、ビリー・ハリックが、じわじわと痩せていき、ついには骨と皮だけの姿に…
という、心理的に訴えかける恐怖を描いたホラー小説です。
スティーブン・キングといえばホラー小説の大家で、また、映画化されている作品も多いのですけど、
「スタンド・バイ・ミー」「ショーシャンクの空に」「グリーン・マイル」など、
どちらかというと彼の作品としてはホラー色のうすいものが、多くヒットしているようです。
それだけ、ホラー小説の映像化というのは難しい、ということでしょうか。
最近、彼のデビュー作の「キャリー」がリメイクされましたが…
また、「シャイニング」は典型的なホラー映画で、ヒットもしましたが、
原作者であるキングとしては気に入らなかったようです。
それはさておき、この「痩せゆく男」は、
モンスターや猟奇殺人犯などを一切登場させずに、凍りつくような恐怖を描いていること、
アメリカの人種差別問題などについても言及していることなど、
ホラーがホラーとしてちっとも怖くない現代において、
読む価値のある、見事な小説といえると思います。