実は私は、「さよならドビュッシー」からの中山七里さんのファンなのですが、
一時期、作風が私の好みでなくなったような気がして、遠ざかっておりました。
なので、久しぶりの中山作品、ということになります。
タイトルの「テミスの剣」とは、
法を司るギリシャ神話の女神テミスが、片方の手に秤を、もう片方の手に剣を持った姿で表されるところから来ているのですね。
そのタイトルの通り、本作では法律の力、人が人を裁くことの矛盾など、
司法の闇の部分が徹底して描かれています。
主人公である刑事が逮捕した強盗殺人の容疑者は、死刑の判決を受け、拘置所の中で自殺してしまいます。
しかし、のちにそれが冤罪であったことがわかり、
主人公は30年近い年月をかけ、真相を追究していきます。
中山七里といえば「どんでん返しの帝王」とも呼ばれていますけど、
本作にもやはりあります。どんでん返し。驚愕の真実が待ち受けています。
しかし、私としては、それがなくても、充分に社会派ミステリとして楽しめたような気がします。
言い方が悪いかもしれませんが、最後のオチは、一種のサービスとして味わいました。
とんでもなく重いテーマではありますが、ぐいぐい引き込まれました。
読んで損はしないと思います。