トロのエンジョイ! チャレンジライフ

「失敗するのが怖ければ、たぶん失敗するだろう」誰が言ったのか不明

連載小説「アーノンの海」第11回

2018-07-15 18:54:25 | 小説・アーノンの海
 勝部の家にて……
 勝部、智美、絵里、繁子の4人は、テーブルを囲んだ。
 テーブルには、スーパーで買ってきたお総菜や、繁子の作った料理が並べられた。
「さあさあ、始めよう」
「すいません……本当にいいんですか?」
「じいちゃんと孫の間で、なにを遠慮するかね。はい、智ちゃん、ビールだ」
 勝部はビールの缶を智美に渡した。
「絵里ちゃん、あんたはオレンジスプライトな」
「えー、あたしもビール飲みたい」
「だめだめ」
 勝部は、4人に飲み物が行き渡ると、
「まずは、アッちゃんのために黙祷を捧げよう」
 4人は手を合わせ、黙祷した。
「では、来年はいい年でありますように。乾杯!」
「かんぱーい!」
 4人は、杯を合わせた。

「智ちゃん、あんた、けっこういけるね」
「ふふっ、鍛えてますから」
「ふだん、誰と飲んでるんだい?」
「女の子ばっかりです」
「本当かい、そりゃ?」

「ねえ善さん、きいてよー」
 絵里は、オレンジスプライトだけで、酔った気分になったらしく、
「あたし、男を見る眼がないのかしら」
「んー? ボーイフレンドか」
「いたけど捨てられちゃったよ」
「そうか、男なんぞいくらでもいるんだ。焦るな焦るな」
「そーいえばさ、智美さん、彼氏はー?」
 智美は話を振られると、
「んふふ、実は、いるのよー」
 勝部は、
「……そうなのか?」
「いるけどね、私を置いてドイツに行っちゃって」
「ありゃま」
「いつ帰ってくるかわかんないから、もう、新しいの見つけちゃおうかなー」
 絵里は、オレンジスプライトの缶を突き出して、
「いえー、男運がないどうし、かんぱいっ!」

 宴たけなわも過ぎ、ペースダウンしてきた頃……

 外はすっかり暗くなっていた。
「智ちゃん、絵里ちゃん、一緒の部屋で寝てくれるか」
「はーい」
 繁子は、
「あんた、いいの? 絵里ちゃんまで……ご両親が心配するよ」
「大丈夫。帰りの車の中で、滝沢さんには連絡しといた」
「でも……」
「これから2人で、積もる話があるのさ。ガールズトークってやつだよ」

 翌朝……
「じゃあ、絵里ちゃんを送っていきます」
「よろしく頼むよ」
 絵里は車の中から、手を振って、
「善さん、繁子さん、ありがとう!」
 車は、絵里の家へと向かっていった。
(楽しかったな)
 これで、丸く収まった……のだろうか。

 絵里を下ろした帰り道、智美は運転しながら、
(おじいちゃんに今度、ご飯でも作ってあげようかな。だいぶ、お世話になっちゃったから)
 すると、携帯が鳴った。
(あれ。誰だろ?)
 智美は、車を左に寄せた。
「もしもし」
 突然、フロントガラスが突き破られ、何者かが、智美の首をわしづかみにした。
「うっ!」
 抵抗しようとしたとき、なにかの薬品の匂いのする布を、口に押しつけられた。
「……」
 眼がかすみ、意識がぐんぐん遠くなった。




(つづく)











コメント (4)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 連載小説「アーノンの海」第... | トップ | 連載小説「アーノンの海」第... »
最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんばんは! (さくら小町)
2018-07-15 19:49:43
あらら、団らんのほっこり場面からとんでもない事件ですね!
でも、アーノンでは無いですよね?
薬品云々ってことは人だから、やっぱり悪者は人間ってことなんでしょうか?
返信する
こんばんは! (トロ)
2018-07-15 20:03:50
いきなりの展開ですが、そうですね、アーノンではありません。
でもアーノンが少し…おおっと、これは次回のお楽しみ、ということで。
いよいよ、ラストにさしかかります。
今日もお読みいただき、ありがとうございます!
返信する
ぐっどもーにんぐーーーーーーー (宮ちゃん)
2018-07-16 05:53:18
なるほどーーーー
この辺りから、ラストへ向かって
盛り上がっていくわけねーーーーーー
ワクワクーーーー
ドキドキーーーーーー
返信する
ぐっどもーにんぐー! (トロ)
2018-07-16 06:21:46
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
いよいよラストですが、いかがでしたか?
楽しんでいただけたのなら、嬉しいです。
最終回までよろしくですー!
返信する

コメントを投稿