My Laid-back Aussie Life

オーストラリア、アデレード発のオージーライフ、家族、看護などについて~

自分の絵におけるスタイルの傾向

2008-06-10 00:37:08 | Art・その他の趣味ついて
我が水彩画の師匠、APと生徒のいつもの会話。

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APがいつものように楽しそうに生徒達の前で混色やレイヤーのデモンストレーションをしていた時…

AP:「ほーら、こうしてパレットの上で『えい!えい!これでもか!!』というように色を完全に混ぜこぜにしてしまうと、絵具が紙の上で混ざり合う余地をなくしてしまうんだよ。ほら、真平らなつまらない色一色だけになってしまうでしょ?」

生徒達:「うーん、なるほど。いつもやっていたアレがいけなかったんだね。」

AP:「絵具を扱うときはそれはもう、こーんな感じでやさーしくジェントルに扱って、水をたっぷり使うと…ほら、こんな感じにリッチでゴージャス(注:美しい、華やか、と言う意味)なカラーが生まれるだろう?ふふふ。リッチでゴージャス、まるで僕の知っているある女性のよう…。」

ある品の良い年配女性生徒:「あら、奥さんのことかしらっ!」

AP:「僕のワイフはそれはもうゴージャスだけど、リッチじゃないね。彼女も僕と一緒でアーティストだし。」

じゃあ、誰のことだっつーの!

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各色の特性を説明しているとき。

AP:「水彩絵具にも色々あってね。コバルトブルーとかアリザリンクリムソンとかは透明色で水で溶いてレイヤーを他の色の上に重ねるとまるで色の付いたセロファン紙を重ねたみたいに下の色が透けて見えるんだよ。そうそう、シースルーのネグリジェみたいにね。それに対し、セルリアンブルーとかカドミニウム系の絵具は不透明で、下の色をかなり隠してしまうんだ。まるで、フランネルのネグリジェみたいにね。」

生徒達はみなで受ける。

私:「とても分りやすい例えだね。」

ある中年の男性生徒:「家に帰ったら、ネグリジェの事しか覚えてなかったりしてね。」

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こんなふざけたことを数秒おきに言っている先生も、かなりいいことも沢山言う。水彩画をこの先生に習い始めて3ヶ月位したときに、私はクラスの人たちに、「あら、上手く出来たわね。もう私全然上手くいかなくて…。」とかコメントされるたびに、なんか引っかかりを感じるようになった。自分では技術的に上手くいっているとしても全く満足がいかない。彼らの絵を見て私はその度に、「でも、あなたの絵もとてもあなたらしい色や雰囲気が出ていていいと思うよ。」と本当に感じたままを伝えてきた。そして、毎回繰り返される会話の中で、技術的にある程度器用に描けても、これが私だ!みたいな自分らしさが皆のように絵に出ていないからだ、と分った。まあ、自分の独自のスタイルがないことのあせりみたいな。

あるとき先生が、大体の画家は彩度をある程度落として光を明暗(Tonal)で描き分けていて、彩度の高い色ばかり使っているカラフルな色彩感覚の画家はあまりいないと、言っていた。いても、抽象画家とかが多いとか。そして、こういう美的感覚というものはまねできるものではなくて元から備わっているもの。先生は、私が自分の絵のスタイルについて考えているのを鋭く察知して、「画集を何でもいいからぺらぺら何も考えないでめくってごらん。そして、自分が直感的に好きだと思った絵をマークしておくんだ。そのときになぜこの絵が好きかを考えないこと。そうして、後でマークした絵だけを見直すと大抵はある傾向がはっきりと出て来るんだよ。」とアドバイスをしてくれた。オーストラリアの大物水彩画家がそろっているThe Australian Watercolor Instituteという団体の画集を早速ペラペラまくってマークをしてみた。結果は…かなりごった混ぜ。それでもあえて傾向を探してみると…

・静物画にはほとんど眼がいかず風景画ばっかり。あと、人物が入っていないものがほとんど。町の風景もそう。
・静かな中にもダイナミックさ、強さがあるもの。
・抽象・具象のチャンポン。面白いデザインものも、いくつかあった。
・Tonalな絵でも、あるポイントだけインパクトのある強い色が入っているもの。例えば、大部分が青みがかったグレーの絵にヴェネチアンレッドがガッと差してあったりするとピピッと反応してしまう様だ。かなりカラフルな絵もいくつかあった。
・コントラストが色調・明暗ともに強いもの。光と影を、暖色・寒色または明・暗ではっきり表現しているもの。
・レイヤーがいくつか重なっていても、透明感のあるもの。
・緻密な絵をみても、あまり反応しないようだ。大胆な筆使いと、ルーズな感じで絵具が紙の上で混ざり合うその偶然性、そしてWet-in-wetや絵具の粒子化、レイヤーの効果などの技術的に高いレベルが要求されるもの、右脳・左脳両方ともばっちり高いレベルで要求されそうな絵がすきなようだ。

とかなり面白い結果になった。つまり、自分にないものを求めているみたいな。先生、いいことを教えてくれて有難う。今度描く時に意識的に自分が何をどうやって表現したいのかを少し考えながら出来そう。でも、出てきた課題の大きさのほうが問題かも-。