My Laid-back Aussie Life

オーストラリア、アデレード発のオージーライフ、家族、看護などについて~

緩和ケア1日研修会(1)

2006-11-11 03:45:06 | 看護に関するあれこれ
今日、勤務する病院のナース(RN&EN)対象の1日の緩和ケア研修会に参加してきた。これは、定期的に行われる院内研修で、自由参加で無料。参加したいトピックがあれば、数週間前までに参加したい理由などを書いた申込書を出しておき、審査に通ったら受けることが出来る。人気の高いものはすぐに満員になって、審査に受からず研修会から外れるナースもいる。Wound care management、DM、Cardiology、Chemotherapyなどが他にあり、最初の2つは中でも人気が高い。私は去年、Wound care managementのコースに参加したが、とてもとても今でも役に立っている。今回の参加理由は、「Casual Pool Nurseとしてホスピスで勤務することがよくあるから、緩和ケアの知識をUpdateしたい」と書いたら、難なくパスし、おまけに研修会に参加している時間分、給料を出してもらえるとのこと。文句なしだ。

参加者をさらっと見ると、内科病棟やリハビリ病棟で勤務しているナースがほとんど。まれに外科病棟のナースもいた。私も顔見知りのナースを数人見かけた。年齢は20代前半のENから定年前のベテランのナースまで、おまけに講師として招かれていた言語療法士の人も他の講師(医師や薬剤師、緩和ケアコーディネーターなど)の話を熱心に聴いて勉強していた。ともかく、Daw Houseという病院内の離れて建っているホスピス内の研究・研修施設で、8:30~16:00の間みっちり、内容のぎっちり詰まっている講習を受けてきた。

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〈ホスピスの古い建物-Daw House〉

Palliative Care for Everyday Clinical Practice in the Acute Setting

この研修会は見ての通りにホスピスの中での緩和ケアに限ったものではなく、もっと一般の急性期病棟で働いているナースを対象にした、日常に見る患者に対してできる緩和ケアに焦点を絞っている。

1.Overview of Palliative Care and Current Direction

By Nursing Coordinator

なーんと、この講義は私がレクチャールームに到着した瞬間に終わってしまった…。病院から送られてきた予定表にはしっかりと9:00開始と書いてあるのに!何故、皆本当の開始時間を知っているのか??なので私が説明できることはなし。他の人に聞いたら「ぜんぜん聞かなくても支障ないわよ。」とか言っていた。その人はナースだと思っていたらなんと後で出てくる講師の言語療法士だった。

2.Management of Endstage COPD

By Palliative Care Physician

呼吸器専門の緩和ケア医師による講義。この人は講師として非常に優秀だと思う。何より話が筋道だっており、ナースに必要なポイントをしっかり抑えている。さて、COPDに関しては、50歳以上の6人に一人が患っているらしい。主に喫煙が原因だ。でも、COPDと認識されている人だけのデータだから、実際はこれ以上の数だろう。オーストラリアでこれは患者にもヘルスケアにも最も負担の多い病気の一つだだ。入退院を繰り返し、GPへも頻繁に通い、自宅でのO2療法、在宅看護などケアのの必要度が高い。MNDと並んで緩和ケアチームへの依頼に来る悪性疾患以外では年々件数が増えているという。末期にならないうちから終末期に至った段階での治療や生命維持に関してのオプションについて詳細に良く話し合うことが重要だと繰り返し語っていた。この医師が実際に行っているリサーチのデーターも興味深かった。

呼吸器内科病棟で働くことが多いので、COPDの患者を見ることが多い。が、これに関しての病態整理や予後、看護ケアについて知識不足だったと痛感した。COPDについてもっとしっかり自分で勉強する必要がある。

3.Role of Spirituality in Palliative Care

By Nursing Coordinator

このコーディネーターのバックグラウンドはイマイチ不明。でも、きっと緩和ケアナースだったのだろう。SpiritualityはSpychologyや宗教的なものと混乱されることがあるだろうが違う。講義から言うと、色々な説明がされていたが、これがSpiritualityだ!となかなか定義されにくいものだと思った。私が理解したものは、皆生きていく上で、愛・希望・繋がり・価値観・尊厳など人生に意味を与えているもの。これが、家族や友人だったり、キャリア、芸術、自然、音楽、より高い力だったりする。人生の終わりを迎えるとなると、自分の役割や立場が変わり、精神的にも肉体的にもこれらの必要なものとのつながりが難しくなることも多々ある。死への恐怖はたいていの人は持つだろうし、自分の人生という長い旅の意味も考えるだろうし、今までそのままにしていた問題が気がかりで心を悩まし安らかに死を迎えられないこともあるだろう。こういったものに耳を傾け、ニーズを理解していくことがSpiritualityへのケアだと理解した。ケアする側の知識というよりは人間性に大きく拠るものなので、誰でもができる(しようと思う)ケアでは無いだろう。こういう点でもうるさいことをいえば、緩和ケアのナースは適正が重要になると思う。

感想は、Spiritualityに関しての概念はとても良く説明されて理解できたが、教科書的な知識に始終したきらいがある。これをどう実際の現場で患者のSpiritualityへのケアをしているかの具体例をいくつか提示すれば、かなりもっと有益な講義になっていただろう。



〈ホスピスの一角にある研修所のIntrenational institute Palliative & Supports Study〉

4.MND(Motor Nueron Disease)-Role of Speech Pathology, including communication, swallowing

By Speech Pathologists

MNDの患者をケアする際に必要な年配の2人組の女性言語療法士による講義。この講義はあんまりにも今までMNDの患者に接して疑問に思っていたことがしっかり理論といい実践的ケアといいカバーされていたので感動したくらいだ。内容は、MNDの概要・嚥下困難の段階と症状と食事に関しての留意点・PEG Tubeの適用・唾液過多の対処など。

中でもとても印象に残ったのがコミュニケーションの問題だ。MNDの人は四肢から始まって、体のあらゆる筋肉が機能しなくなってゆく。話していたのが、筆談へ、それから、指でサインをする、そしてそれがだめなら目を動かして文字盤を追う、と手段も変化していく。その際の、ナースが簡単にできる注意点などをいくつか説明された。例えば、会話をするときは必ず患者の真正面に位置すること(患者の首の筋肉に負担をかけたら話しにくいし疲れやすい)。入れ歯をしている人は、歯茎にぴったりとフィットしているかまず確認する(でないと、入れ歯がカクカク浮いて話しにくい。当然ながら。)。これは結構盲点らしい。あとは、長時間はなさせないようにする(筋肉が疲れると余計話しにくくなる。)。言われてみれば簡単でも、MNDの病態をしっかり知っていないとなかなか思いつかないポイントだ。も急にケーションをさらに有効にするためにPCのソフトの発展も大きく役立っているようだ。

内容的にかなり濃かったため消化しきれず、個人的に彼らが講義で使ったPower Pointのコピーをもらえないかリクエストしたら「もちろん!喜んで。」と快く了承してくれた。


5.Management of nausea/vomiting/constipation

By Clinical Pharmacist

この講師はいかにもバリバリな眼鏡をかけた知的な雰囲気を纏った若い女性の臨床薬剤師。「お昼ご飯の直前にする話としては最高に適さないけど、まあしょうがないから聞いてくださいね。」なんていう軽口を聞きながら始めた。この人は凄かった。あらゆる意味で…。終末期ケアに重要な吐気・嘔吐・下痢・便秘の管理についてだ。良くまとめてある資料・無駄の無い話し方・どこに焦点を置いてどこをはしょったらよいのかナースを対称にしているということでしっかり把握している・さり気ないユーモアのセンスがある・薬学の知識をナースの臨床に直結して説明しているなど、講師としては100点満点だ。心から尊敬する…。だたし、私の隣に座っていた子はENの資格を取ったばかりで、当然薬理的なことはほとんど理解できないためちょっと辛い講義だったようだ。細かい講義の内容はかなり量があるためここでは割愛。

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午後からの講義は次回のBlogにて。