文芸作品の映画化で読んでなくても映画を観て、読んだ気になることがある。映画化はだいたい小説に何か付け足したり省いたりしていることが多いが、それがつまらなくしてるとか原作から離れているとか違和感を持つことは少ない。映画は小説の映像化ではないからだ。せいぜい自分のイメージに合わせてみるとかくらい。「罪と罰」などストーリーが面白いので、どう映画化しても面白くなると思うのだが意外と映画化はソ連以外思いつかない。今出ているかわからないが、文庫で「20世紀文学映画館」という本が出たことがある。文字通り20世紀文学の映画化。そのトップが「ユリシーズ」日本では観ることできないし、と思っていたがアイルランド行ったときにDVDを見つけた。もちろん字幕など付いていないので雰囲気を味わうしかないが「ユリシーズ」くらい映像化の無駄な映画はないと思う。それより英語を勉強して原語で読むほうが「ユリシーズ」に近づけるに決まっている。「失われた時を求めて」の映画化の「スワンの恋」これは確か昔映画館で観た。なかなかだと思った。でも後になって作られた「見出された時」のほうが小説を総括しているようで面白い。「異邦人」は原作通り作って面白くなかったが、なぜこれだけヴィスコンティの映画でDVDにならない。ヴィスコンティといえば小説ではどうということのない中編小説「ベニスに死す」をマーラーに見立ててすごい映画にした。清張自身も褒めたという「砂の器」もどうということない短編小説だった。ロブ=グリエの「去年マリエンバートで」は映画のために書かれた小説なので映画化ではないだろう。フォークナーの「響きと怒り」も映画化になってるようなので観てみたいものだが無理だろう、DVDを期待するのは。ほとんどDVDになってるデシーカだが、サルトルの「アルトナの幽閉者」の映画化した「アルトナ」は出ていない。これも観ることはないだろう。いろいろな映画化を観てきてわかることはジャズが昔はやった歌を素材にして何倍ものイメージで膨らますように映画も小説というスタンダードナンバーをアドリブで崩していく。
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