この間シナトラの本を買ったので、トミー・ドーシー時代のシナトラのCDを買った。あきれるくらい同じ曲想ばかりで、戦争に突入しようとしているのに平和ぼけのようなダンス音楽。なるほどエリントンがいかにすごかったというのがわかるし、戦後次々にビッグバンドがなくなったのもわかる。これに若い女の子が夢中になったというのだから、プレスリー出てきたら何あれになる。基本的にビッグバンドは聴かない。エリントンは集め曲も好きなのがあるが、そう聴くわけではない。カウント・ベイシーなどは苦手。スタン・ケントンはちょっと実験的なこともやってるので興味ある程度。変拍子でエレクトリックを取り入れたドン・エリスやジミヘンをやったギル・エヴァンスは大好きだが、一般的なビッグバンドとはいえない。ビッグバンドは人数が多くなるので当然経営としては苦しくなる。ダンスホールで人気のあった戦前とは違い、やはり地味である。ギル・エヴァンスはマイルスとの共演で特にアランフェス協奏曲の編曲で名前が知られているが、それ以外の公式盤は数えるほどしかない。サン・ラのビッグバンドにライブ盤が多いのは、録音したのをその都度売り渡していたからだという。そういう例を聞くまでもなくビッグバンドは商売としては苦しいものだ。ジャズはマイルスならいい暮らしできたかもしれないが、ロックのように当たれば自家用飛行機のようにはいかない。マイルスとギルの最初の共演作「マイルス・アヘッド」のジャケットは女性がヨットに乗っている写真だが、マイルスが何で白人女なんだとジャケットを変えさせた。でも元のジャケットのほうが売れそうな気がする。カウント・ベイシーはビートルズの曲ばかり録音したことがある。売ろうとすることは悪いことではない。そうでもしないとビッグバンドは成り立たないのでは。ジェリー・マリガンも一時期ビッグバンドを作ったが財政的にあきらめた。それはそうだ、同じ音楽やっていて雇う人数3倍になっても収入は変わらないとなるとどちらがいいかはっきりする。そう思うとエリントンやベイシーはすごいものだと思う。とはいえベイシーははなから聴く気がしないし、エリントンはたくさんあるが有名曲ばかり入った「ポピュラー・デューク・エリントン」くらいしか聴かない。悪いけどトミー・ドーシーのふやけた音楽を聴いた耳を治すのにはドン・エリス、ギル・エヴァンスしかない。
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