フィリップ・ディック「高い城の男」がテレビドラマになっていたのをアマゾンで知った。もしかしてディックくらい映画化の多い作家はいないのではないだろうか。ところが日本で人気の高い「宇宙の眼」は映画化にならない。欧米と日本ではSF人気投票はけっこう違ってくるけれど、「宇宙の眼」は誰が読んでも面白くまた映画にもしやすい題材ではと思うのだが。とはいっても映画化と違ってドラマは話を継ぎ足さなければならないので、「高い城の男」は原作からかなり離れているよう。まだ1話しか観ていないが、主人公まで変えているようだ。ブラウン神父のドラマがほとんどチェスタトンの原作を使っていなくて神父のキャラだけ使っていたのと同じで「高い城の男」も設定だけ利用しているといったほうが近いのではないだろうか。映画の場合も少なかれ原作とは離れていると思うが、原作を読んだときと同じイメージで全く違和感なく観ることのできる映画もある。と書いてシーズン1を観終えたら何か違和感。書くのをやめて、どうもこんな中身のない話ではないだろうと急遽原作を読み返した。95年刷になっているので20年前。読んだらしき跡があるので読んだか、途中でやめたか。いずれにしても全く記憶にない。人気あるだけあってすいすいと読んでしまったが好みは絶対「宇宙の眼」。主人公が誰かわからない不思議な小説ではある。少なくとも女主人公の活劇でないことは確か。テレビドラマは登場人物の名前だけ使って、部分ストーリーも使いながらの三流ドラマというのがわかった。本を読んだら、どんなくだらないものでも別物として観ることができるのでシーズン2も観てしまおうか。それほど何でも信じるタイプでないので、易経にどっぷりつかることはないけれどキットを揃えてやってみたら酒の席のネタになるかもしれない。ケージに「易の音楽」というのがあるし、チック・コリアもアルバムに易経にインスパイアされたという文章を載せたのがあるように欧米の知識人にとっては興味深いものであろう。易経のことを小説に取り入れたいために日本人を出し、そのために戦争を絡めたと小説家の意図が見えてくる。決して日本人をいいようには書いてはいない。ドラマもいまだ奇妙な日本人になっている。ビルのオフィスに和風のドアとか。まあどうしても観れないようなドラマでもないのでここまで観てしまったのだから観てしまおうと思うけれど、今度は「夏への扉」「発狂した宇宙」あたり、そして「宇宙の眼」もまともな制作者で映画化されないかなと期待する。そういえば「12モンキーズ」のテレビドラマも割と面白く観たが映画とは全く別物だった。
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