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ロンドンから徒然に

Brexit

2016-06-26 | 旅・イベント
ご存じのように(いや、意外なことに?)イギリスでは未だに階級意識が根強く残っています。上流階級、中流階級(これがさらにUpper、Middle、Lowerに細分化)、そして労働者階級。
ただ、上手く説明するのは難しいのですが、これが必ずしも身分の上下みたいな差別を生んでいるわけではなく、下の層が劣等感を持っているというわけでもなく、むしろ生活信条のアイデンティティみたいな括りになっています。なので、それぞれの階級は「その中で居心地良く」過ごせれば構わないわけで、労働者階級の成功者が上の層の真似事をすることもありません。

ただ、それもこれも社会がそれで上手く動いていく環境にあればこそで、自分達のこれまでの仕事のやり方に規制が入る(しかも自らが選挙で選んだわけでもない高給取りのEU官僚達がそれを決定する)、他の国の英語も喋れない人間が自分達の職を奪う(しかも自分達の払った税金の中から、彼等の国に住む家族の手当てまでも支給される)となると、労働者階級には大きな不満も生じ、逆にそれらの移民の安い労働力を上手く利用している中流階級との間に、これまでとは異なる種類の大きな溝が出来てしまいます。

こういったグローバル化の恩恵による差を別角度から眺めると、それは大都市居住者と地方居住者、あるいは若年層と高齢者層との間の亀裂と言えるかもしれません。今回のEU離脱の国民投票はその溝の深さを一層くっきりとさせてしまった気がします。
統計で見てみると、大都市の最たるロンドンではEU残留支持が60%近くを占め(この春まで僕の住んでいたLambeth地区なんて78.6%!)、また年齢別の数字では18〜24歳の73%、25〜34歳の62%、35〜44歳の52%が残留を希望しており、大都市の住民ほど、また若い層ほど、国のトータルの結果とは逆に残留を支持していることが分かります(ちなみに65歳以上では離脱支持が60%)。
直接大学入学や就職の影響を受ける若者達(ちなみに以前から引き下げる話は出ているものの今のところ16歳、17歳には選挙権はありません)が「老人達が僕らの未来を奪った」と嘆くのも分からなくはありません。



本当に離脱派がここまで深刻な事態を分かった上で投票したのかは疑問ですが、彼等への非難を、単純にノスタルジーや嫌移民等の感情論と見なして、経済論などで理を押しつけようとした一部の残留派の態度も(それは海外の要人も含めて)かえって反発を招く結果になったのではないかと思います。

こういった中で現在、ロンドンのみの独立や、国民投票のやり直しを求める声、離脱を中止させる国会決議を図る、などの動きが出て来ています。
これらはともかくとしても、今回残留支持が圧倒的に多かったスコットランド(62%)の独立のための再国民投票はかなりリアリティを帯びてきており、もしこれが実現したりするとイギリスは更なる分断に向かうことになります。
残留支持の旗振り役だったキャメロン首相は既に辞任表明しており、これからのイギリスの舵取りを勤めることのできる真のリーダーが誰になるのか、それは一国の問題のみならず世界の関心事でもあります。

もしかしたら今すごい歴史の1ページに身を置いているのかもしれないという気がします。

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