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ロンドンから徒然に

父娘の写真

2017-09-04 | 旅・イベント
かろうじて20度を保っていた「最高」気温も今週はそれさえも切ってしまう予報で、とうとうロンドンの夏はやって来ないまま終わってしまう。
この冷夏を予測していたからというわけではないけれど、早くからプランを立てて夏休みはイタリアで過ごした。

こちらは逆にロンドンを発つ前までなんと40度に到達する酷暑との予報もあった。いくら暑さを求めている(?)とはいえ、さすがにそれも度を超している。
しかしながら、結果的にはうまく気温も丁度良いところ(27〜28度)で落ち着き、おまけに滞在当初に予測された雨からもうまく逃れることが出来た。

旧知の友人達からまた「似合わない」と失笑されるのを承知で敢えて言うと……今回はビーチに滞在した。
海辺に面した古いアパートメントを借りて、毎日海で泳いだのだが、これが実に気持ち良い。塩水につかる浮遊感を味わったのは何十年ぶりのことだろう。

昼も夜も主に魚料理を楽しんだ。素材が新鮮なためかシンプルなフリットなどでもとても美味しい。地元のお酒も素晴らしく、久しぶりに美味しい白ワイン(アロマティックでミネラル感のある蜂蜜色)を堪能した。

パソコンは持参したものの、WiFiが随分昔の設備。WEBサイトの静止画を表示するだけでも一体何分かかるんだといった遅さで、もう動画なんてとんでもない。メールを受けるのにも苦労し、開き直って親友以外には返事も出さずに放っておいた。ある意味これものどかな毎日を過ごせた一因だったのかもしれない。

……そう、こんな風にごくごく世俗的な毎日だったわけ。




で、ある日、朝から泳ぐにはちょっと天候の落ち着かない強風の日だったこともあって、新市街と旧市街の間にある険しい山に登ってみた。
登る最中にも雲の動きが激しい。今にも一雨来そうな重たい灰色が、前日の碧さとは全く違うこれまた灰色の強い波と相俟って気分を重くさせる。




ところが中腹にある教会まで来ると一転青空が覗く。都合よく受け止めて祝福されたことにしよう。
裏手に回ってみると、そこは墓地。と言っても、いわゆるお墓のマンションみたいなもの。縦横に区分けされたスペースに棺が収まる。こちらを向いたわずかな面積に顔写真があり、生年月日と没年月日が記されている。



ふと見ると、父親の写真の横に小さな女の子の写真がある。年齢を計算すると3歳そこそこだ。
あっ、と思ったのは両者の亡くなった日を確認した時。同じ日じゃないか。しかも終戦間際の年。
後で調べてみたら、やっぱりこの地はかつて連合軍による爆撃に遭っている。

こんな小さな田舎の村さえ否応なしに巻き込んでしまう戦争。
きな臭さの増す昨今のニュースに触れながら、あの時に見た父娘の写真がふと浮かんだ。

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