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ロンドンから徒然に

グエル公園で見る夢

2008-08-24 | 旅・イベント
 日本でガウディが一般的に知られるきっかけになったのが、このおかげじゃなかったろうかと個人的には思っています。84年にTVで流れた“サントリー・ロイヤル”のCMです。
 実在するとは思えない奇妙な建築物から、(こちらは本当に作りものなんですが)子供が空想の中で見るような生き物が顔を出したり、無表情の仮面の女の人が踊り出したりします。
 そしてナレーションが「スペイン、バルセロナ。ここは建築家アントニオ・ガウディに会える街。彼が作る家は遠い過去から来たのか、それとも遠い未来から来たのか.....」と続きます。しかもバックの音楽がまた幻想的。もうこれだけで僕のイメージの中のバルセロナは、こんな夢のような世界です。

 おそらく彼の代表的な建築物がフラッシュ・バックのようにたくさん出てきたと思うのですが、僕が一番印象に残ったのが、実はグエル公園なのです。CMの最初に出てくるお菓子の家のような建物、長い脚の人物が歩きまわる千本柱(実は僕が当時から勝手にこう呼んでいます)の空間、その柱が支える長く曲がりくねったモザイクのベンチ、まるで波の中に呑み込まれたような土の回廊、今にも動き出しそうなトカゲ......全てが何故か記憶にくっきりと残っています。
 だからこのCMを見た数年後に初めてここを訪れた時は、もうふわふわとした気分で、本当に柱の影からあんな人物が現れたり、回廊から怪物が顔を出したり、ベンチにはバレーをする女の人が座っているんじゃないかと思えたほどです。



 ただ、そんな空想に浸れたのも、まだその頃はそれほどガウディ人気があったわけではなく、極端な話、時間帯によっては、あのベンチや千本柱の空間にたったひとりでいられるくらいだったからです。
 今回は特に夏休み期間の真っ只中だったせいもあるのでしょうが、物凄い人出で、改めて彼の建築物の人気の高さを思い知りました。

 中心部からは少し離れた丘の上にあるので、電車を使うとすると行き方は大きく言って2通り。直線距離としても近いVallcarcaからは、今はエスカレータが出来て、楽に頂上まで登ることができます。ただ、初めて訪れる人はやはりLessepsから歩いて、“お菓子の家”に挟まれた門から入るのを勧めます。正面に見える階段でモザイクのトカゲが出迎えてくれます。
 このまま階段を昇ると千本柱、そしてその上にあるモザイクのベンチ、その横には土の回廊、とストレートにガウディの夢世界を楽しめます。でもおそらくこれからはひとりでその夢を独占することはきっと不可能でしょう。たくさんの訪問客と共有して下さい。余裕があれば一番上まで上がってバルセロナ市内を見渡すといいと思います。
 僕もまた半日かけてゆっくり楽しみましたが、ロンドンの冷夏に慣れた身には、日本並みとは言わないまでも、久々に湿度のある暑さでちょっとバテてしまいました。




 これだけ広い公園も、もともとは集合住宅として計画されたらしく、入口にある対になった“お菓子の家”も本来は管理人室と事務所になる予定だったようです。ところが60軒のうち売れたのがたったの2件。しかもそれはガウディ本人と発注者であるグエル伯爵だったというのですから、当時としてはやはり斬新過ぎたのかもしれません。今ならそれこそあっと言う間に売り切れでしょうが。

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