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ロンドンから徒然に

ポートレート

2010-08-22 | アート
 ロンドンは本当に美術好きにはたまらない街で、質の高い作品を所蔵している美術館がたくさん存在し、その他にも、これまた美術館レベルの展示をするギャラリーが街中に点在するし、オークションのプレビューなんていう手もあります。

 これだけたくさんあると、それぞれ特徴を持っていないと棲み分けも難しいだろうと思うのですが、National Portrait Galleryなんて、肖像画に特化するという、誰もが思いつきそうでいてなかなか運営は容易でないテーマに取り組んで成功をおさめています。

 現在は常設の他に2つの展覧会が並行して進行中です。

 ひとつは『Camille Silvy : Photographer of Modern Life』。彼は19世紀に活躍したフランス人写真家で、いわばこの世界の走りとなった人物なんですが、経歴が少し面白くて、法律を学んだ後外交官となり、その縁でかアルジェリアとフランスで写真を撮り、その後イギリス(ロンドン)に渡りスタジオを設け、王室やセレブのみならず、召使い等含めた一般の人の写真も撮っています。



 服装やバックの風景を通して、当時の生活を感じ取れるのが面白かったですが、ポスターになった写真のようなノスタルジーを感じさせる写真がそう多いわけでもなく、個人的には歴史的な意味合いを除けば、そう興奮する内容ではありませんでした。

 もうひとつの展覧会は毎年恒例の『BP Portrait Award』。こちらは応募形式で、これまでで一番多かった2,177点の中から選ばれた53点が展示されています。
 自画像含めて様々なタイプの作品が展示されていましたが、正直群を抜いて個性的なものには乏しく、単純に好みの問題だと思うのですが、僕の琴線に触れるものには巡り逢えませんでした。



 ただ、1等賞を取った『Last Portrait of Mother』は印象深い作品です。と言うのも、タイトル通り自分の母親のポートレートなのですが、これが100歳を超える人物で、ベッドの上で既に亡くなっているのです。
 生前に本人の許諾を得て、死後描いたとのことなのですが、見方によってはある意味宗教的な神聖なものを感じ取れなくもありません。

 さて、改めて自分の顔を見てみたのですが、もし自分が画家だったとしても、やっぱり自画像だけは描かないでしょうね。もっとも、ターナーみたいに実物よりもカッコ良く脚色してしまう手もあるんですが。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Noe)
2010-08-22 17:35:42
Maxさんがお好きということもあるでしょうが、芸術鑑賞に関する記事も多くて、さすがロンドンは身近なところに芸術がゴロゴロしているなぁと羨ましくなります。昨年冬のV&Aは、デジタル芸術の企画展があり、展示も参加型もあってとてもおもしろかったです。
その1等賞をとった肖像画は題材としては聞いただけで衝撃的です。ただ、やはり作者としても、今までになくこれからもない気持ちが反映されている作品に違いないと思います。二度と同じものは制作できません。また、描こうと思わなければ存在しない作品でした。偶然と必然がまざったような中からできあがる芸術作品は最強だと思います。
自画像は…カッコよく描かなくてもいいかと思いますが…(笑)
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Unknown (Max)
2010-08-23 06:57:43
確かに作者本人にとって最初で最後の題材だったに違いありません。息を引き取ってから、作品を仕上げるまでの時間の密度を考えると、やはりどこか神聖なものを感じます。
僕は絵はもっぱら観る方専門なので、自画像に関してはよけいな心配をしなくて済みそうです(笑)
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Unknown (サウス)
2010-08-23 21:51:30
ロンドン、美術館が多すぎて、National Portrait Gallery迄行き着かないです(笑) そう言えば。確かサルガドもお役人として各国を旅していているうちに、写真家に転向したんですよね。社会に対する問題意識とか、インテリっぽいヒネリとか、そんなこんなありつつも、見る人を一瞬でグッと惹き込むようなサルガドの写真は大好きです。 Camille Silvy、イギリスに住まうフランス人(French man in London?) という事実だけでも興味深いのですが、イマイチだったのですね。 以前ご紹介のあったPhotographers’ Galleryも次回行ってみたいと思います。
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Unknown (Max)
2010-08-24 08:19:16
同じようにインテリの写真家ではあるんですが、サルガドの生命感溢れるたくましい写真とは、世界が違うと思います。ただ、Camille Silvyに関しては、単純に今回の展覧会がいまひとつ個人的な好みとしてピンと来なかっただけですので、先入観なしに見てみて下さい。あ、でも10月下旬までみたいです。
National Portrait Galleryは意外な掘り出し物もあって面白いですよ。常設展は無料で見られるし。
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