植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

篆刻印が結ぶ縁 3万円で買っちゃうかなぁ

2021年10月17日 | 篆刻
 ワタシが不自由なく書道や篆刻に時間をかけられるのは、寛容な家内の理解と、若干の年金や家賃収入のおかげです。これで時間給の仕事をこなしていたらそうはいきません。残り少ない人生を時給1500円程度で切り売りする気にはなりません。

 もう一つの強い味方がヤフオクであります。書道具から篆刻用印材、勉強して臨書したり摸刻する法書などが、リーズナブルな値段で入手できます。金銭価値に変えられない様々な情報や技法、時には前の持ち主の人生や心情などもうかがい知れるお宝が山ほどあります。また、その品々をきっかけに新たな試みや縁を作ることも出来ます。

 以前このブログで紹介したことがある書道家篆刻家の「河野斗南」さんなどはその一つであります。一級の書道家として長く活躍した方で、献上品の書を書いています。ヤフオクで見かけて気に入った「百福図・百寿図」は何度も模写し、自身のライフワークにしたいと思っています。実際に百福図は5千円で落札し手元にあります。(真作かどうかは不明ですが) さらに、その作品集も入手しました。分厚い揮毫年鑑、定価8万円ほどのものが数千円で落札できたのです。今も作品を作ったり印を考えるのに役立ちます。

 次に、まとめて印材多数を何度も落札していますが、その中に「金満総峰」さんという人の住所印を発見しました。落札した使用印の中に、住所と名前の入った篆刻印がかなりの確率で紛れて入っています。一昔前の書家文人さんなどは、年賀状などの住所氏名を印刷ではなく、押印していたのです。そしてその多くは作者名が刻まれた「側款」があり、明らかに篆刻家さんに調製依頼したものなのです。また、それ以外に数個自用印と思しきものもありました。

 念のため(というより、万一文化的価値があるといけないので(汗)それらの篆刻印の使用者・作者は一応検索します)ネットで調べてみると、27年前に物故された著名な書道家で、多くのお弟子さんを育てているようです。ならばと、ヤフオクで探すと「遺墨集」がヒットしました。その写真の一つにはご本人の作になる「自用印」の印譜があって、ワタシが入手した2個の印影と合致しました。ハードカバーの分厚い本が380円!で落札出来ました。
これ自体、他人様にとって価値があると言うわけではありません。しかし、書道に一生をささげたような立派な書家さんが自分で彫り、愛用した印の現物を手にして、その残した書の書風や意図などを学び、時には摸書することに意味を感じるのです。自分の経験では、偶然に思える数多な出会いや巡りあわせ、それが実は必然であり一つの啓示ではなかろうか、と感じることがありそれを大事にしようと思うのであります。

 先に紹介した「河野隆」さん然りで、先日そのお弟子さんの「杉山熙雪」さんのお店に行ってきました。店舗を建て替えしてから一度も訪れてなかったので顔を出してきました。相手はプロの篆刻家、こちらは趣味の篆刻好き、どうにも対等に話せる間柄ではありませんが、故河野さんのお導きで、話題も尽きず、色々と篆刻の 心得やら技法のポイントなどを教えて貰いました。(もちろん指導料はタダ)

 所有する作家さんによる篆刻印は、高田邦園さんや榊原星卿・榊原晴夫さん、雨人さんなど100以上になりました。それ以外にも晴海・埜竹・幽黙斎・大峰などの雅号が彫られている印があり、それぞれ名のある方だろうと思います。そのすべてを辿っていく必要も無いのですが労作・名作の印を取り出しては眺め、じっくり学ぶのも篆刻に必要なことです。杉山先生も、摸刻を含めて「目を肥やす」ことがとても大事なのだとおっしゃっています。
本物・実物の持つ重さや価値は手にしてみないと伝わらないものでもあります。

 只今、1年近い間悩んでいるのが、日本画家高橋史光さんのお宝「鹿寿老図」であります。ヤフオクで3万円の最低価格で出品されているのです。相当な期間落札が無いままであります。この画伯は(1897-1970) 昭和期、日展の前身となる帝展で活躍した京都の日本画家(四条派)で、いくつかの作品は博物館に収蔵されています。 この方の使用印をなんと6個も持っているのです。ほとんどが「雪山人」という人の作です。しかもその一つがその出品された掛軸 の落款印と一致しているのです。下の写真左上の印です。


 つまり、出品された掛軸が本物であれば、れっきとした日本画家さんの作品で、ものによっては美術館級のお宝がヤフオクに3万円で出品されていて、その箱書きの落款印がワタシの手元にある、ということなのです。さすがに絹本の作に押された印とは異なりますが「真作」の可能性が高いのです。その角印に丸く彫られた朱文の意趣も、ワタシの持つ印と酷似しております。


悩むのは、複写ものかもしれないというリスクがあり、自分の趣味の領域の埒外・実用品でない骨董品には手を出さないとしたワタシの「結界」から踏み出す心配があるからです。入札期限まであと二日、今までずっと落札されなかったから大丈夫、という考えでいると他人に落とされた時に後悔しそうです。

悩める秋であります。

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