植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

墨から隅まで ずずいーと

2020年09月28日 | 書道
 本日は久々の澄み渡るような秋空であります。空気も爽やかで、ここ数日続いた頭重・頭痛も今日は感じません。実は書道は、季節や天候そして体調に大いに関係があるようです。その話はいずれ。

 昨夜はヤフオクで、「半紙まとめて(35Kg)、半切まとめて、古筆まとめて大量」に、それぞれ1万円内外の中途半端な入札をして夜9時に就寝、案の定すべてがほぼその倍の金額で他の方が高値落札されていました。
 いいんです、人と価格を争ってまでどうしても欲しい物ではないのですから。入札額を上げて予定より高いものを頑張って落札し、届いたものが案外期待に沿わないというパターンは多いのです。早起きは三文の得と言いますが、早寝は3万の得でありますな。

 とはいえ、先日落札最近届いたのは「液体墨5点(一部使用済み)」で、7500円でありました。定価で買えば26千円ほど。額面通りなら7割引き😀
下の3つは開栓済みですが、ほとんど一杯入っている、という説明でした。

 ここで、墨の基本知識であります。書道墨は大きく分けると、固形墨と液体墨(墨汁)に分けられます。中国でも大昔から固形墨を硯で磨って書くのが当たり前でした。日本では明治時代に、子供たちが寒い中、墨を磨るのをみて、時間や手間を省くために墨汁が発明されたようです。このおかげで、習字の練習時間が大幅に増えたのですね。
 固形墨の製法は、簡単に言うと油煙又は松煙(煤ですね)を膠に混ぜてよく練り合わせ成型して固めるという工程です。液体墨は、煤を機械で更に微細な粉末に粉砕し均等になったものに、膠や防腐剤・合成樹脂を混ぜて作るのです。液体墨も、この添加するものが膠中心なのか化学薬品なのかで大きく書き味や字が異なって来ます。

 それで、一般的には、習字・書道は大半が墨汁に依存します。墨を磨るのは時間がかかり重労働なので、専門の書家さんが作品を書くような場合でない限り固形墨は使いません。

固形墨と液体墨の相違点をさっと並べてみます。
・保存期間 固-数十年~数百年 液-1年~5年。ただし固形墨は一度磨ったら日持ちせず腐って来る。
・滲み   固-滲みにくいが滲むと見栄えが悪い。液-滲みが多く元の線が残り、古墨に似た風合いが出る(上質な古墨)
・字の出来 固-立体感・濃淡を出しやすく奥行きのある字になる。液-平板で重厚さに欠ける。
・使用感  固-磨るのに時間がかかる。 液-すぐに書ける
・価格   固-高いものが多い     液-お手頃、100均でも売ってる
・筆    固-膠が多く、洗うのに手間がかかる  液-化学薬品によって筆が傷みやすい

 そのほか、表具表装の際の裏打ち、長期間経過した書の風合いの変化、濃墨・淡墨でもいろいろと差異があるようですね。

 で、届いた液体墨であります。開封された三つの容器の底を見ると6桁の数字が付されています。これで見ると古心060704、松潤150706、墨韻960217(25年前か?)でありました。普通で言えば完全アウト!ビデオ判定不要です(笑)
 液体墨は開栓して5,6年経つと成分が分離し、墨が沈殿してきます。どろどろになって来るのです。ワタシは構わずシェイクして使用します。どうせ練習ですから細かなことには拘泥いたしません。それで、早速試し書きです。

 古心と墨韻を使って書いてみました。
あれ??? 墨池(硯の代わりに使う墨を貯えるもの)に出した瞬間、墨液がさらさら・シャバシャバしているのです。通常墨汁というものはとろりとしていて、粘性が高いので、必要に応じて2~10倍以上に水で薄めます。

 それで、書いてみました。うわー滲むー。書いた線の倍くらいの太さまで滲むのです。これは、尋常でない滲みでした。しかも茶系というより淡墨。滲みの少ない半紙に書いてもかなり広がりました。1番目の「時」の字は、元の線がはっきりと残っています。

 筆の墨を少なくして、かなり速く筆を動かしてこんなです。

右の二つが、こんどの墨汁で書いたもので、薄くて滲みが半端ないのです。

 考えられる理由は、①もともと淡墨なのででこんなもの、それはないか( ´艸`)、②劣化して分離・成分が変化した、③元の持ち主がわざと薄めたものを使っていた、④オークションの出品者が、残量の少ない容器には「気を利かし(笑)水増しした」のいずれかであろうと推理しました。沈殿・分離してるかもしれませんから、今日、もう一度、よーく振って再度原液のまま試し書きしてみようと思います。

 まぁ、かなりの量の水(おそらく5~10倍)で薄められた可能性が高いです。でもそれも良し。どうせヤフオク、完品が無いのが当たり前、薄い墨で上手く書けるように練習をし、枯墨、古墨淡墨の味わいが出れば、それはそれでしめたものですから。
コメント
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