ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

北富士ダム

2017-11-29 22:43:48 | 兵庫県
2017年11月24日 北富士ダム  
 
北富士ダムは兵庫県南あわじ市八木馬回の三原川水系北富士川上流部にある兵庫県県土整備部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
三原川水系では1974年(昭和49年)に三原川本流上流部の諭鶴羽川に諭鶴羽ダムが建設されましたが、1979年(昭和54年)の台風16号で三原川本支流各河川で甚大な洪水被害が発生し一段の治水対策が求められることになります。
兵庫県は、翌1980年(昭和55年)に三原川総合開発事業を採択し支流各河川に新たに2事業4基の多目的ダム建設を決定します。
三原川右支流の成相川では本流と支流の北富士川に2ダム1事業でダム建設が進められ、1999年(平成11年)に成相ダムと北富士ダムが竣工しました。
北富士ダムは建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、成相ダムと連絡水路で結ばれ一体運用され、成相川及び北富士川の洪水調節を行うほか、北富士川の安定した河川流量を維持するとともに慣行水利権としての流域農地への灌漑用水の補給、淡路広域水道事業団への上水道用水の供給を目的としています。
 
南あわじ市の国道28号線鳥井交差点を南に折れ、市道を南西に進むと正面に北富士ダムと成相ダムが見えてきます。
二股を左手にとると北富士ダム下に到着します。
ダム下は小さな公園になっています。 
 
 
非常用洪水吐として自由越流式クレストゲートが1門、常用洪水吐として自然調節式オリフィスゲートが1門
訪問時はオリフィスゲートから越流していました。
余計なものはとことん排除したシンプルなデザインとなっています。
 
左岸から
堤頂部の『襟』が堤頂からバケットカーブが始まっています。
堤頂部のデザインは同じ兵庫県営の栗柄ダムによく似ています。
 
ダムサイトの竣工記念碑。
 
天端は車両通行可能。
 
天端から導流面と減勢工
左手は利水放流設備
導流壁は断面が三角になる独特のデザイン。
 
天端からは海が見え、播磨灘を挟んで小豆島が遠望できます。
 
ダム湖は総貯水容量130万立米。
 
右岸から下流面。
 
上流面。
 
1526 北富士ダム(1181)
兵庫県南あわじ市八木馬回
三原川水系北富士川
FNW
52.5メートル
162.5メートル
1300千㎥/1250千㎥
兵庫県土木部
1999年

初尾川ダム

2017-11-29 17:23:51 | 兵庫県
2017年11月24日 初尾川ダム
 
初尾川ダムは兵庫県南あわじ市中条中筋の洲本川水系初尾川上流部にある灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
1965年(昭和40年)9月の台風23号、24号により淡路島では年間降雨量の約半分の雨が降るという記録的な集中豪雨となり、初尾川上流部では3つの溜池が決壊し流域に甚大な被害が発生しました。
破損した3基の貯水量を補てんするため、農林省(現農水省)の補助を受けた兵庫県の災害復旧事業により1968年(昭和43年)に完成したのが初尾川ダムです。
管理は受益農家で組織される中筋水利組合が行っています。
 
国道28号線久次米交差点を南に折れ南淡路広域農道(オニオンロード)を交差して直進すると浄水場の先に初尾川ダムが見えてきます。
車を置き浄水場の裏手の山道を進むとダムの下流に出ます。
洪水吐は自由越流式クレストゲート2門という農業用コンクリートダムらしいデザインです。
訪問時はクレストゲートから越流していました。
 
車に戻り車道を進むとダム左岸に到着します。
 
天端に埋め込まれた竣工プレート。
 
上流面
四角い取水設備。
 
左岸上流から
湖面にダムが写し込まれています。
また昭和40年代の農業用ダムらしく天端ゲート部が高くなっています。
 
天端は車両通行可能
右手は取水設備操作室。
 
天端から
越流した水がきれいな鱗紋を描いています。
 
ダム下流の浄水場
北富士ダムから受水しており初尾川ダムとは関係がありません。
 
ダム湖は総貯水容量30万2000立米。
 
右岸から下流面。
 
1489 初尾川ダム(1180)
兵庫県南あわじ市中条中筋
洲本川水系初尾川
31.2メートル
101メートル
302千㎥/230千㎥
中筋水利組合
1968年

鮎屋川ダム

2017-11-29 15:30:44 | 兵庫県
2017年11月24日 鮎屋川ダム
 
鮎屋川(あいやがわ)ダムは兵庫県洲本市鮎屋の洲本川水系鮎屋川上流部にある防災・灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
洲本川右支流の鮎屋川および初尾川中下流部が流れる洲本平野は淡路島では三原平野と並ぶ平坦地ですが、水源としていた鮎屋川や初尾川の水量は乏しく古来から幾度にもわたり干ばつ被害に悩まされてきました。
一方、鮎屋川はひとたび豪雨に見舞われると流域に大きな洪水被害をもたらし、抜本的な治水対策や安定した水源確保は流域農家の長年の悲願となっていました。
そこで兵庫県は1964年(昭和39年)より農林省(現農水省)の補助を受けた鮎屋川農業水利改良事業に着手、その中核施設として1970年(昭和45年)に竣工したのが鮎屋川ダムです。
鮎屋川ダムは鮎屋川流域143ヘクタールの農地防災、鮎屋川・初尾川流域農地771.5ヘクタールへの灌漑用水の供給を目的としており、運用開始後は鮎屋川土地改良区が受託管理を行っています。
また2016年(平成28年)には河川維持放流を利用した小水力発電所が新設され、最大16キロワットの発電を行っています。
 
ダム直下を南淡路広域農道(オニオンロード)が横断しており、農道からダムを遠望することができます。
 
堤体直下からダムを見上げます
農業用ダムですが、防災機能を持つためクレスト、オリフィス両ゲートを装備しています。
非常用洪水吐としてクレストにローラーゲートが1門、常用洪水吐として導流壁両側にオリフィスゲートが2門あり、訪問時は右岸側(向かって左手)のオリフィスゲートから放流されていました。
手前は河川維持放流です。
 
下流面。
 
河川維持放流を利用した小水力発電がおこなわれ、リアルタイムの発電量が表示されています。
 
天端
手前は取水設備の操作機器です。
 
クレストのローラーゲート
非洪水期ということでゲートは上がったままです。
 
ダム下の利水放流設備
奥の青いパイプは灌漑用送水管。
小水力発電所はパイプ手前の地下にあります。
 
減勢工。
 
ダム湖は総貯水容量180万立米。
上流1キロに同じ鮎屋川土地改良区が管理する大城池があります。
 
上流から遠望。
 
 
1490 鮎屋川ダム(1179)
兵庫県洲本市鮎屋
洲本川水系鮎屋川
FA
46.2メートル
198.3メートル
1800千㎥/1604千㎥
兵庫県鮎屋川土地改良区
1970年

大城池

2017-11-29 13:20:14 | 兵庫県
2017年11月24日 大城池
 
大城(だいじょう)池は兵庫県洲本市鮎屋の洲本川水系鮎屋川源流部にある灌漑目的のアースフィルダムです。
旧大野村(現洲本市大野)は台地上に位置し、淡路島でも最も水利に乏しい地域で農地の過半は井戸水を水源としその汲み上げには多大な労役が必要でした。
深刻な水不足を解消するために大野村では耕地整理組合が設立され鮎屋川上流部に水源を求めることになり1923年(大正12年)より溜池築造に着手しました。
大城池築造にあたっては鮎屋川の既得取水権と区別するために用水を迂回する隧道と井堰の建設に2年の歳月をかけるなどし、1928年(昭和3年)にようやく大城池が竣工しました。
大城池という名称の由来について現地の竣工記念碑では『蓋シ壮大城郭ノ如ク又堅緻ニシテ大丈夫ノ意ヲ寓ス』とあり、池を待望した人々の期待の大きさが窺い知れます。
その後1933年(昭和8年)に増築工事が行われ現在の規模となりました。
現在は下流の鮎屋川ダムともども兵庫県鮎屋川土地改良区が管理を行っています。
 
南淡路広域農道(オニオンロード)から県道534号線を南下、鮎屋川ダムから川沿いをさらに遡上すると大城池に到着します。
左岸にある大城池の説明板。
 
下流面は奇麗に刈り払われています。
 
上流面と洪水吐を遠望。
 
左岸の取水設備は独特のデザイン。
建屋は六角形でモンゴルの遊牧民の帽子のような屋根になっています。
また周辺左岸は花崗岩の石積みで護岸されています。
 
貯水池は総貯水容量94万6000立米と山中の溜池としてはかなり大規模。
 
右岸には竣工記念碑と不動明王像が設置されています。
 
天端。
 
堤体上流面は花崗岩の谷積みで護岸されています。
 
右岸の洪水吐
2007年(平成19年)に改修されました。
 
洪水吐導流部はこの先滝の様に流下しているようですが今回はダム下に向かう道が通行止めで見ることができませんでした。
 
左岸の取水設備周辺の湖岸や、堤体上流面など各所に丁寧な石積みが見られます。
時を重ねて建設された上田池や猪ノ鼻ダムなどの石積堰堤の技術を採用したのかもしれません。 
 
1469 大城池(1178)
ため池コード
兵庫県洲本市鮎屋
洲本川水系鮎屋川
35.5メートル
170メートル
946千㎥/946千㎥
兵庫県鮎屋川土地改良区
1928年

柿ノ木谷池ダム

2017-11-29 12:21:43 | 兵庫県
2017年11月24日 柿ノ木谷池ダム
 
柿ノ木谷池ダムは兵庫県南あわじ市湊里の三原川水系柿ノ木谷川上流部にある防災・灌漑用水目的の重力式コンクリートダムです。
もともと当地には柿ノ木谷池という灌漑用溜池がありましたが老朽化が激しく警戒溜池に指定されていました。一方柿ノ木谷川流域では洪水による農業被害が多く、被害の除去は下流農家の悲願となっていました。
これを受け兵庫県は1994年(平成6年)に農水省の補助を受けた兵庫県の防災ダム事業に着手、2006年(平成18年)に竣工したのが柿ノ木谷池ダムです。
柿ノ木谷池ダムは柿ノ木谷川の農地防災および湊里地区65ヘクタールの農地への灌漑用水の供給を目的としており、運用開始後は湊水利組合が受託管理を行っています。
 
南あわじ市湊地区から柿ノ木谷川沿いに市道を南下すると柿ノ木谷池ダムに到着します。
ダム下流から
洪水吐は自由越流式クレストゲートが1門だけ、越流部が2段になっておりこれで非常用と常用洪水吐を使い分けています。 
 
左岸ダムサイトの竣工記念碑。
なんだか不安定、地震で倒れないかちょっと心配。
 
左岸高台の果樹園に続く道から俯瞰。
 
ダム軸も俯瞰。
 
上流面。
 
減勢工と放流設備。
 
ダム湖の奥にも農地があるようで天端は車両が通れます。
 
総貯水容量38万6000立米と小さなダム湖。 
 
右岸から下流面。
 
上流面
ゲートの左に取水設備があります。 
 
3308 柿ノ木谷池ダム(1177)
兵庫県南あわじ市湊里
三原川水系柿ノ木谷川
FA
25.1メートル
117メートル
386千㎥/358千㎥
湊水利組合
2006年