風そよぐ部屋

ウォーキングと映画の無味感想ノート

映画/ドリーム[Hidden Figures]

2018年04月13日 | 映画


映画はかなりよく出来ていますが、アカデミー賞は取れないでしょう。
邦題のドリームは陳腐ですが、原題の「隠れた人物・数字」もピントきません。
figure には、人物、数字という二つの意味があるようです。
ストーリーは、三人の黒人女性の素敵なお話しです。
1960年代初頭、米ソ冷戦下、宇宙開発でソ連に後れを取ったアメリカは世界と宇宙の覇権を求めてがむしゃらな競争に打って出ます。
数学の天才であるキャサリン達三人の黒人女性は、NASAに計算係として採用されます。
しかし、アメリカでは黒人は、専用トイレ、専用水飲み場、専用バスシートしか使えない時代でした。
加えて、彼女たちには、女性蔑視・差別も重くのしかかっていました。
男性優位の職場で、女性・黒人は一人とかごく少数でした。
ハイヒール着用、ネックレスは真珠のみとか、スカート丈は膝下という「日本の校則」のような下らない規則もありました。
他方、マーチンルーサーキング牧師達の黒人解放運動の歩みも徐々に進んで来た時代でした。
彼女たちは、そうした運動とのコミットはありませんでしたが、その有能さを遺憾なく発揮し始めます。
キャサリンは、700メートル離れた黒人専用トイレに行くしかありません。
なぜ長い時間職場を空けるのかと問い糾された彼女は、この映画唯一と言って良い差別を糾弾する「情熱的アジ演説」を行うのでした。
そのことを、知った上司(ボス)は、トイレは誰もが使用できるようにし、コーヒーポットも「白・黒」の区別を無くします。
しかし、それは、彼が「反人種差別主義者」だったからでは決してありません。
彼女がトイレに行く時間がただ惜しかったからです。
しかし、この事件を契機に、彼女たちへの「蔑視・偏見」は少しずつ溶解して行きました。

   「単純計算係」不要をみこし、コンピューターのプログラミングを学んだ女性達が新しい職場に向かう場面
黒人差別を扱った映画はこれまでもかなりの数作られました。正面から差別問題を取り上げたものから、
やんわりと訴えた作品などたくさんあります。
この映画は、楽しいのですが、感動は残りません。その訳は、社会派的映画では無く、かなりきれい事の
サクセスストーリーだけの映画だからです。
主人公達の内面の怒りや葛藤、いろんなことへの強い思いなどが描かれていませんし、彼女たちを取り巻く
白人男性の差別や偏見の描き方もきわめて平面的で、彼らの意識が次第に融解していく内面などは
ほとんど描かれていないからです。
もっともそれらはこの映画制作の目的ではありませんが…。
題材は、きわめて魅力的なのに、結局普通作で残念でした。
この映画は、ごくごく一部のエリート黒人達のサクセスストーリーです。
アメリカ社会は、黒人エリート達のこうした活動や公民権運動、過激なブラックパンサー運動やマルコムXさん達の運動などの
多様な活動が少しずつ風穴を開け、ついにオバマ黒人大統領を生み出しましたが、今なおアメリカ社会には根強い人種差別が
依然としてあり、トランプレイシスト大統領を生み出してもいます。    【4月2日鑑賞】


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