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飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

怨霊・平将門④・・・「風と雲と虹と」(NHK大河ドラマ)-3-

2009-12-12 | 平将門
■放送:1976年NHK
■原作:海音寺潮五郎(『平将門』『海と風と虹と』より)
■脚本:福田善之
■音楽:山本直純
■演出:岸田利彦、大原誠、松尾武、榎本一生、重光亨彦
■出演:加藤剛、緒形拳、山口崇、吉永小百合、真野響子、草刈正雄 、吉行和子、他

今回書く平将門の物語、「風と雲と虹と」の展開に対する感想は、“大きく運命の振り子が揺れる”ということでありましょうか。この運命の激しい振幅を経験するのが、表の主役の平将門であり、裏のヒロイン・貴子なのであります。いずれの2人も天国から地獄に落ちるような、とてつもない境遇を経験するわけですが、この2人に運命の女神は平等に微笑まず、明暗分かれるのでありました。

まずは平将門ですが、叔父らの理不尽な土地の横領を問い詰めたことから端を発した一族との亀裂は、やがて坂東の地において将門包囲網を作ってしまうことになります。将門は四面楚歌の孤立した状態に追い込まれてしまいます。それはやがて将門征伐へと発展し、叔父である平良兼が統領となった連合軍が将門に戦を仕掛けます。兵士のその数2000余。一方の将門は100と、なんと良兼の1/20の兵力です。どう見ても不利な状態。しかし将門は知力と勇気と根性で、それを見事跳ね返し勝利を収めてしまいます。これによって平将門はとてつもなく強い!とその名を一躍轟かせることになります。

しかし、慢心するとは恐ろしいもの。次の戦いで後がない良兼の連合軍は、将門の心の隙をつく突拍子もない、でも姑息な作戦にでてきます(どんな作戦かは見てのお楽しみ)。それにより将門軍が怯んだところを一気についてきて破ってしまいます。将門の良くいえば優しさ、悪くいえば弱さを露呈させた部分であったのかも知れません。敗れた将門は、半ば落ち武者のように豊田の地を離れ、屋敷は焼かれてしまいます。上昇気流でイケイケであった将門は立場が逆転してしまうのです。しかし、どん底に落ちた将門を民衆は見捨てませんでした。槍を持って立ち上がったのです。将門が大地の神となった瞬間であったのかも知れません。

一方の貴子ですが、このドラマでその美しさを発見した吉永小百合が演じました。ボクはすくなくとも2回、各回のタイトルを見て「えっ!」と驚きの声を出しました。ひとつは『遊女姫みこ』です。なんてこった!高貴な血筋でありながら、どうしてそんなことに…。現実に対処しながら生きていくという能力を育むことなくきてしまった彼女は野盗にレイプされ、揚句は遊女として売られてしまったのです。

男に運命を左右されなすすべを持たない貴子の弱さ、それは続く展開で坂東の地に根を張って生きる女性たちとの、くっきりとその差が描かれていたように思います。遊女として荒んだ様相で登場する貴子を見るのは辛いものがありましたし、吉永小百合にそのような役をさせたくないなという感情も同時に湧いてきました。やっぱり汚れ役は似合わないよと。

しかし貴子は将門に救われ結ばれ一時の幸福な日々を過ごすのですが、ここでまたダブルパンチの衝撃のタイトルが出てきます。『貴子無惨』。ええ~、どうなっちゃうの?もうそんなに苦しめなくてもいいよ。先にも書いたように将門は戦に敗れ落ちていくのですが、そこに同行する貴子はいかにもひ弱。敵が近づき将門はやむなく姫と別行動をしますが、そこで源   に捕らえられてしまいます。その源側の兵士たちは、姫が遊女に身を落としていたことを知り欲情の炎が燃え、彼女を集団レイプしてしまうのです。戦時という異常事態とはいえ、なんと惨いことをするのか、男らは獣に成り下がってしまった。そこには誇りのかけらも微塵もありません。暴力の力によって貴子は命を落としてしまいます。悲しすぎるよ貴子の運命。見ていて苦しくなってきました。幸薄い役とはいえ吉永小百合があまりに美しくすぎるためその惨さは一層…。

大きく揺れた運命、その中でより将門は強くなっていく予感を感じました。

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※以下は「風と雲と虹と」(第二十五回~第三十六回までのあらすじ)ネタばれ、あらすじの文章はNHKのサイトから引用しました。

◆第二十五回 「風の決意」 小次郎将門勝利の知らせは螻蛄婆によって伊予の純友にももたらされた。その頃純友も、役人を辞めることを決意していた。彼は伊予の守と介、そして第二の追捕使として赴任した大中臣安継に「天下諸々の悪の根源は朝廷と都の高貴な方々である!」と意見すると、国府を後にし、海賊とともに日振島へと向った。そのころ坂東では、良正と詮子、良兼が、民人に無理を強いても六月という一番の農繁期に兵を集めて、豊田を攻めることを画策していた。
◆第二十六回 「海賊大将軍」 京では貴子の屋敷が炎上、居場所を失った貴子は山道をあてどなく歩いていた。その頃、西国の純友は日振島に入り、「海賊大将軍」となっていた。また坂東の小次郎は千余騎という、坂東の合戦史上、最大の良兼勢を迎え撃つ準備を整え、太郎は弟・繁盛や佗田真樹に迫られながらも、合戦には参戦しない構えを見せていた。太郎は、その参戦しないという自分の心を文にしたため小次郎に送ることにした。母・秀子は彼の思いを理解し、それを自ら、豊田へ届けることを申し出る。
◆第二十七回 「折れた矢」 朝。太郎は、夜中に繁盛と佗田真樹が勝手に合戦支度を整え、良兼の軍へ合流したことに気付く。彼は母・秀子に手紙を持たせて急ぎ豊田へ向わせ、自分は繁盛たちの後を追った。良兼の陣に入った太郎は、繁盛らを連れ戻すどころか、参戦を説得され、致し方ないと陣に残ることにする。秀子から太郎の手紙を受け取り、感激していた小次郎は、物見に出ていた玄明からその報告を受け、強い怒りを露にする。そして、秀子に「もう昔の二人に戻ることはない」と告げ、太郎の元へ返した。
◆第二十八回 「坂東震撼す」 良兼・良正らの率いる軍は2300騎にも膨れ上がっていた。細く長くなって進む大軍に、小次郎たちは、100騎余りで、横から矢を射かけて軍を分断し蹴散らした。小勢での勝利に喜ぶ小次郎とその兵士たちの士気は、ますます上がり、脱走する良兼軍は、下野の国府近い豪族の館へ逃げ込む。攻めかけようとという三郎に小次郎は「もうこの辺でよかろう」と、引き上げを命じる。しかし、今度の勝利は坂東八か国を文字通り震撼させ、中央の権力と対立してゆく道の確実な始まりとなった。
◆第二十九回 「脅える都」
勝利の夜、小次郎は下野の国府へとやってきた。事の経緯を国府に記録させるためである。小次郎の堂々たる態度と率直さは国府の役人たちを感動させるほどであった。小次郎の快進撃の様子は全坂東へと広まり、更には京の朝廷にも伝わった。小次郎の勢いが危険すぎると感じた小一条院・藤原忠平は小次郎、そして源家の者を裁きのため上洛出頭させることにする。京への旅立ちの宴に、太郎の文を携え菅原景行がやってくる。しかし、小次郎は太郎を決して許さないと景行に話す。
◆第三十回 「遊女姫みこ」
京の小一条院へ着いた小次郎はすぐに藤原忠平には会えず、まずは家司の藤原小高と面会することとなった。忠平に会いたければせっせと進物をもってこいという意味であった。夕方、小次郎は小一条院へ向かう途中で見た、貴子の屋敷の焼け跡へ再び足を運ぶ。すると玄明が現れ、貴子の居場所を教える。吸い込まれるように歩いてゆくと、そこには遊女宿があった。「まさかこんな所に」と小次郎は思った。しかし、部屋に現れた女は紛れもなく、貴子その人であった。
◆第三十一回 「龍と虎と」
貴子が遊女となったいきさつを聞いた小次郎は、このままの境遇に置くことが耐えられなかった。しかし、まずは裁きに勝たねばならず、自由になる財物は乏しかった。その状況を知った純友は、名を伏せて貴子の身請け金を出す。自由の身になった貴子は一路小次郎の屋敷へと向い、小次郎も貴子を迎え入れた。年が明け、小次郎は検非違使庁に出頭、藤原忠平と面会した。純友との仲を疑う忠平に、まっすぐな視線で「私にとって大切なのは坂東の土地と人々です」と力強く訴えた。
◆第三十二回 裁きの春
藤原純友が京に潜伏しているという連絡を受けた藤原小?は、純友を捕らえるべく東山の屋敷へ踏み込んだ。しかしそこに純友の姿はなかった。間一髪のところで螻ら婆たちが助けたのである。春になり、小次郎と源家の裁きが終わった。判決が言い渡され、小次郎にも罪は有るが、大赦をもってこれを許すという。源護たちへの判決もほぼ同じであったが、将門の主張をより認めた判決に源扶と詮子は激しく怒り、公の意に背いても小次郎を討つと心に決めた。
◆第三十三回 「凶兆」
小次郎は坂東の豊田へ帰り着くと、初めて目にしたわが子を嬉しそうに抱き、豊田丸と名づける。そして良子は小次郎を唯一の頼みとして京よりやってきた貴子を、複雑な気持ちを押し殺し、温かい笑顔で迎え入れた。その頃、伊予に新任の守として紀淑人が着任した。優れた洞察力を持つ紀淑人に純友は全身が冷たくなるようなものを感じていた。そして、彼の示す海賊懐柔策海賊団の少なくとも半分は乗るだろうと感じた。それは純友にとって一時とはいえ挫折であった。
◆第三十四回 「将門敗る」
小次郎が水守へ出陣しようとすると、旗が風に飛んだ。最も不吉とされる事態に兵たちの士気は一気に萎んだ。また良正たちの、高望王の像や父・良将の画像を軍の先頭に立たせるという卑劣な策に、小次郎の軍は攻撃を仕掛けられず、総崩れとなり、村々も全焼した。民人たちの心からの悲しみに、小次郎は頭を下げ、いつかはこの里を豊かにすると誓う。そして、館では情勢不利と見た貴子が、再び太郎の元へ行こうとしていた。どんな時も男に頼ることしかできない貴子に小次郎は失望を禁じえなかった。
◆第三十五回 「豊田炎上」
厚さと度重なる戦の疲れから小次郎は脚気を起こしていた。何とか良子以外には病を悟られまいとする小次郎であったが、戦場で落馬。その様子を見て勢いづいた良正勢が小次郎勢に襲い掛かり、再び小次郎は敗走した。豊田の館からも退却を余儀なくされた小次郎主従は、村人たちの協力で森の中へ身を潜めることとなった。しかし、村人たちが小次郎に力を貸したことが露呈。源扶たちは村に非道な仕打ちを課そうとする。村長は村人たちを守るため、我が手で息子の命を奪わざるを得なかった。
◆第三十六回 「貴子無惨」
良子と貴子の一行は、扶たちの罠にはまり囚われの身となった。徒歩で水守へ向う途中、貴子の歩みが遅れる。護衛の兵士たちは一時は遊び女となった貴子を本隊から引き離し、暴行する。水守で貴子の到着を待っていた太郎は、貴子の姿がないことから事態を推察し、山奥へと馬を走らせた。しかし時既に遅く、貴子の亡骸を抱き、怒りと悲しみの涙を流した。その頃、息子を殺めた村長と村人たちは、良兼勢への反撃を始め、小貝川と鬼怒川に挟まれた地域に一大砦を築いていた。
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3 コメント

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◆第三十六回 「貴子無惨」 (ななし)
2011-03-26 20:12:24
そこまで話を知っているのなら、貴子が死ぬ間際に天女になって雲の上を駆けるシーンを持ってるだろう!?
ぜひ、東北関東大震災で日本沈没の終末観を煽るためにそのシーンをアップしてください!!
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コメント (飾釦)
2011-03-26 21:10:29
いただきありがとうございます。

残念ながら、ななしさんがおしゃられるシーンは持っていません。ただそうした救われるようなシーンがあったことは憶えています。
返信する
>◆第三十六回 「貴子無惨」 (ななし)
2012-04-10 21:29:11
>貴子が死ぬ間際に天女になって雲の上を駆けるシーン
は、
http://stupid-tv.cocolog-nifty.com/blog/images/2008/06/06/04.jpg
の画像の中央の上から3番目の心霊写真のように貴子の立ち姿が映っているカットから4番目のカットまでです。
わたしは、4番目の背景が白くなっているカットが、天女になって雲の上を駆けるシーンだったと記憶しています。
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