■製作年:1972年
■監督:若松孝二
■出演:吉澤健、本田竜彦、大泉友雄、横山リエ、荒砂ゆき、他
1972年に公開された若松孝二監督の問題作「天使の恍惚」を見ました。この映画は、東京総攻撃を計画する過激派の革命軍を題材にしたもので、当時は相当な波紋を投げたようです。というのも1970年に起こった赤軍派による「よど号ハイジャック事件」以降、全共闘のセクトが先鋭化し武力闘争による爆弾テロ事件が起こるなかで、この映画の上映反対キャンペーンが張られたということなのだそうです。つまり、超いわく付きの作品ということ。実際、連合赤軍の浅間山荘事件とは時期を同じくし、公開初日には彼らのリンチ殺害事件が明るみになり新聞記事のトップを飾ったといいます。社会不安に陥れる事件と無差別テロを題材にした映画が時空を同じくして公開されるという…。また、この映画の脚本に参加していた足立正生は、この映画から3年後に真の革命を求めてパレスチナへと向ったとか。極めて危険な因子を含んだ映画であったということなのだろう。
この映画を見ていると、革命、兵士、武装、火薬、爆弾、銃撃、ゲリラ、内ゲバ、襲撃、リンチ、党、派閥、テロ、アナーキズム、殲滅、戦場、ナンセンス、フリージャズ、ヌード、エロ本、性、エロス、売春、エクスタシーなどなど、そんな言葉が浮かび上がってきます。それは血であり暴力が底流に流れているように思います。しかし、世界革命を起こすとか起こさないとか、そうした目標を掲げ権力に盾突きテロを引き起こそうとしたものの、現実はどうであったのか?世界は変わらず、世の中はやがて経済的繁栄とそれによる快楽を求めるバブルへの道を進んでいったのではなかったか?この日本においては、彼らが主張し闘ってきた革命は求められなかったし、必要なかったというこというのが歴史の結論だったのかもしれません。私は当時の雰囲気や全体を支配した考え方や時代感などしるよしもないのでわかならのですが。
映画は時代を経て見ると、低予算で早撮りしているからなのか、結構、安直で安っぽい印象を受けてしまいます。公開時、映画館で見たらその内容で逆にリアルでドキドキし、時に胸が張り裂けそうな気分にさせられたのかもしれませんが、時代を経てみるとかなり陳腐化してしまい、むしろ滑稽にも映ってしまうかもしれないという逆説性。それは映画の持っているスタイルとテーマからして致し方ないことなんでしょうね。強烈に<時代性>なるものを孕んでいるから・・・。映画に登場する人物達は革命闘争に身をささげるものの、行き場を見失っています。そのやりきれない気持ちを最後は自らが投げる爆弾へと込めて昇華させていくわけですが、はたして無差別テロという形で自ら気持ちをのせた行動を起こしていいものなのか?そんなこと許されないにきまっている。自分のしていることを見失い、判断停止になっている状態が映画の登場人物といっていい。私はこの社会への逆恨みのような行動に嫌悪感をおぼえずにはいられませんでした。もっとやり方があるだろうに。見も知らない人を巻き添えにして爆弾を投げるなんてこと許しちゃいけない。そう思います。
天使の恍惚(若松孝二傑作選1) | |
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映画パンフレット 「天使の恍惚(アートシアター93号)」 監督 若松孝ニ 出演 吉田健/横山リエ/本田竜彦/足立正生/岩淵進/秋山ミチヲ/山下洋輔/小野川公三郎/荒砂ゆき | |
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若松孝二 初期傑作選 DVD-BOX | |
秋山未知汚,若松孝二,石川・恵,寺島幹夫,横山リエ | |
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