飾釦

飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

映画「新宿マッド」(監督:若松孝二)

2012-07-12 | Weblog

■製作年:1970年
■監督:若松孝二
■出演:谷川俊之、江島裕子、寺島幹夫、広岡昭子、原田牧子、他


若松孝二監督のピンク映画「新宿マッド」を見た。この「新宿マッド」、公開当時はそんなタイトルではなかったようだ。なぜ「新宿マッド」になったのか?そのいきさつはわからない。ただ、公開当時のタイトルが「新宿フーテン娘 乱行パーティー」とピンク映画として上映されているものの、いわゆる女性のヌードやセックス・シーンはご愛嬌程度にしかでてこない。当時、エッチな気分にほだされて映画館へ入った客は相当とまどったろう。寧ろそれは、当時の世相に切り込むような問題作としての出来映えを見せていたのだから。ピンク映画という枠組みの中で、過激でアナーキーな映画を撮り続けた若松孝二監督の映画を、今週連続して見ていますが、これまででは、私としてはこの作品が一番面白いと感じました。

アングラ演劇をしていた青年が内ゲバで殺害される。その真相を知りたいと上京してきた郵便配達夫の父親。1970年の新宿の街をさ迷い息子を殺したのは誰か?と探し回る。フーテン、ヒッピー、シンナーにサイケデリック、当時の様子が画面に映し出される。(私はその頃は子供でそうした文化は上の世代のもの、かろうじて知っているという程度か。)その探し回る父親は、息子が明治維新の志士か新撰組のように志を持って活動でもしていたのだろうかと思う。やがて、息子を殺したのは<新宿マッド>なる男と知り、父親は彼との対決を向かえることになる。新宿マッドはお前の息子は裏切り者だったから殺した。俺達は正義ためにやってきた。革命をやるんだ。役に立たない奴はみんな殺す。新宿マッドは革命を振りかざすも、どこか空回り、言葉が先行し現実と噛み合っていない。父親は新宿マッドら一味からリンチを受け、血だらけになりながらも立ち上がり、お前ら、志が低いよ!インチキだ。お前らはしょせん何もできない、今の自分に満足しているからだ。わしは25年間1日も休むことなく働いてきたんだ。労働で生活を築いてきた男意地が光る。全くイキがっていた新宿マッドらフーテンは、あっけなく父親に撃退されてしまう。翌日彼らは集団でシンナーを吸い男女乱れた乱交しているという空虚さ…。何も現実は変わらない。無気力感におそわれる父親。そうした息子の世代を育てたのも我々の世代ではなかったのかと。

これは全くピンク映画と呼ばれる代物ではない。時代の影響を受けて陳腐化という点はさすがに否めないものの、アート系の映画として十分成立しているのである。

新宿マッド(若松孝二傑作選2)
SOLID RECORDS
SOLID RECORDS
若松孝二 初期傑作選 DVD-BOX
秋山未知汚,若松孝二,石川・恵,寺島幹夫,横山リエ
紀伊國屋書店

 

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