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■製作年:2012年
■監督:アン・リー
■出演:スラージ・シャルマ、イルファン・カーン、タブー、レイフ・スポール、他
この映画は映画館で見ればよかったなーとつくづく思う作品でした。アカデミー賞の候補になっていたとはいえ、トラと漂流、なんてあったのできっと私が嫌なCGを多用したハリウッド・テイストのゲップが出る映画なんだろうなと勝手に想像し、映画館で見ることを遠慮していたわけです。しかし、それは私の思い込みに過ぎなかったのです。想像していたものとは全く違うため息がでるような素晴らしい作品でした。テーマ、物語の展開の仕方、いずれも賞賛したいのですが、何といっても素晴らしいと感じたのは映像表現でした。もちろん題材からしてCGを多用しているのですが、それと感じさせない技術の高さと見せ方の工夫、それが映画の持っているテーマと見事に合致し、一級のファンタジー作品に仕上がっていたのです。一級なんていうのは失礼なくらい見事な映像表現でした。もし映画館の大スクリーンで見ていたら、目眩くような映像体験ができたかも?と思うと残念です。
この映画では宗教的な思索や動物との共存、ガイア(地球生命体)の思想というテーマが散りばめられており、単なる漂流ものとは違う示唆に富んだものにもなっているところは注目に値するでしょう。それをファンタジックに描いてわかりやすく感情移入もしやすくなっています。主人公がインド人で、遭難するのが日本の船というのもいいですね。さらに、印象的なのは最終的にこのトラと漂流した少年の話が本当にそうだったのか?と謎かけてくるところです。あまりにも辛い体験において人は何かに置き換えていくという心理、夢が人の無意識にある神話的な精神状態を象徴という形を変えて見るというように、この出来事は夢のような状態として少年の心に記憶されていったのかもしれません。それは少年のみぞ知る真実です。そして実際はどうだったのか?を感じるのは見る側に委ねられているところ。これも含蓄あるというか、深いと感じました。そうした謎かけも含めてこの映画は映像がきれいなだけではない名作といっていい作品であると私は思ったのでした。
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