「未帰還兵を追って マレー篇・タイ篇」(1971年)
5月の初旬、東京国立フィルムセンターで今村昌平のめったに観ることができないテレビ用ドキュメンタリー作品を観にいきました。以下は、寺山修司関連の記事をワッセワッセと書いていたので、とても遅くなってしまったのですが備忘録としてのその感想です。
丁度ボクが小学生の頃、アジアの熱帯地域(場所はどこだったか記憶にありません)の奥地で元日本兵の横井庄一氏が発見され帰国したということがあった。ジャングルで30年近く間潜んでいたというニュースに子供心ながらびっくりした記憶がある。この今村昌平のドキュメンタリーは、その横井氏発見の2年前にテレビの特番として放送されたものであるという。今村の視線はタイムリーで、かつ横井氏の発見を予言していた作品ともみることができるかも知れません。
さて、高度成長期に生まれたボクは戦争の悲惨さを知らない世代、むしろ成長するにつれて世の中も豊かになってゆき、学生時代などは大学のレジャーランド化のようなことも言われたりた。つまり、消費社会の只中を生きてきたのである。「赤紙」という召集令状で戦地へ赴き、生死をさ迷いながらなんとか生き残り、しかしそのまま異国の地で生きていく人生とは・・・。一体どう理解していけばいいのだろうか?およそボクなどにリアルに想像できない人生なのだ。
ドキュメント作品のまず、「マレー篇」では、すっかり現地の人となってしまい、そこに溶け込み、家族も持ち、そしてイスラム教を信心し日本語もたどたどしい元兵士が登場した。彼は終末思想を信じている。日本に帰国するお金があるならメッカ巡礼をしたいと言う。すっかり日本には未練がないようである。しかし、その彼の現実は日本を批判しながらも、アジアに経済進出した日系企業で働いているという皮肉な一面があるのであった。
続く「タイ篇」では、一人は農業、一人は医者、そしてもう一人は非公認の医者という3人の元日本兵のお酒も入りながらのざっくばらんな対談と云う形式の映像展開であった。そこで語られる会話を聞いていくと驚くことばかりである。
もぐりの医者という者が一人いるのだが、彼はその経歴の中で全く医学を学んでいるような形跡が見られないのである。そんな彼が撮影中に急患の患者が入り注射を打っていたりしているのだ。これにはびっくりである。その彼は饒舌でもあり、自称プロレタリアートとして天皇制批判を始める。生きていくことへの凄まじい執念を感じなくでもない。
しかし、さらにびっくりしたのは農業を営んでいる元不良少年の男、彼は戦時教育の影響をモロに受けたような感じで、支那人の女子供を焼き殺したことや、スパイであっことを淡々と語るのである。戦争時の状況下とはいえ自分の犯してきたことを堂々と喋ることも、ボクにとってはインパクトあるものであった。
良くも悪くもそれらは国家の決断によって否応なく巻き込まれていったことによって我が身に降りかっかってきた一面もある。そこで語られる会話の重みをどう受けとめていけばいいのか正直、迷ってしまう。俺はこうして生き抜いてきたんだ、あるいは生きるしかなかったんだ、そう語られると何と反論できるのだろうか?3人の元日本兵の会話の一言一言に重過ぎる問題を感じ、今村昌平の骨太さと問題提示にすっかりやられてしまった、それが正直な感想です。
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丁度ボクが小学生の頃、アジアの熱帯地域(場所はどこだったか記憶にありません)の奥地で元日本兵の横井庄一氏が発見され帰国したということがあった。ジャングルで30年近く間潜んでいたというニュースに子供心ながらびっくりした記憶がある。この今村昌平のドキュメンタリーは、その横井氏発見の2年前にテレビの特番として放送されたものであるという。今村の視線はタイムリーで、かつ横井氏の発見を予言していた作品ともみることができるかも知れません。
さて、高度成長期に生まれたボクは戦争の悲惨さを知らない世代、むしろ成長するにつれて世の中も豊かになってゆき、学生時代などは大学のレジャーランド化のようなことも言われたりた。つまり、消費社会の只中を生きてきたのである。「赤紙」という召集令状で戦地へ赴き、生死をさ迷いながらなんとか生き残り、しかしそのまま異国の地で生きていく人生とは・・・。一体どう理解していけばいいのだろうか?およそボクなどにリアルに想像できない人生なのだ。
ドキュメント作品のまず、「マレー篇」では、すっかり現地の人となってしまい、そこに溶け込み、家族も持ち、そしてイスラム教を信心し日本語もたどたどしい元兵士が登場した。彼は終末思想を信じている。日本に帰国するお金があるならメッカ巡礼をしたいと言う。すっかり日本には未練がないようである。しかし、その彼の現実は日本を批判しながらも、アジアに経済進出した日系企業で働いているという皮肉な一面があるのであった。
続く「タイ篇」では、一人は農業、一人は医者、そしてもう一人は非公認の医者という3人の元日本兵のお酒も入りながらのざっくばらんな対談と云う形式の映像展開であった。そこで語られる会話を聞いていくと驚くことばかりである。
もぐりの医者という者が一人いるのだが、彼はその経歴の中で全く医学を学んでいるような形跡が見られないのである。そんな彼が撮影中に急患の患者が入り注射を打っていたりしているのだ。これにはびっくりである。その彼は饒舌でもあり、自称プロレタリアートとして天皇制批判を始める。生きていくことへの凄まじい執念を感じなくでもない。
しかし、さらにびっくりしたのは農業を営んでいる元不良少年の男、彼は戦時教育の影響をモロに受けたような感じで、支那人の女子供を焼き殺したことや、スパイであっことを淡々と語るのである。戦争時の状況下とはいえ自分の犯してきたことを堂々と喋ることも、ボクにとってはインパクトあるものであった。
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