われわれは皆クマグスである！？（池上高志×茂木健一郎）

「ユレイカ」２００８年１月号特集・南方熊楠

ユレイカという月刊誌の１月号は南方熊楠の特集でありました。外苑前のワタリウム美術館で「クマグスの森」という展覧会を観に行ったこともあり（２／３で終了）、その本を購入したのでありました。そこには昨年の１０月２８日にワタリウムで開催された複雑系科学の池上高志と脳科学の茂木健一郎によるトークショー「熊楠の森」が収録されていました。

実はボクはその講演会を聞きに行き（売れっ子の茂木健一郎も出ているということもあり）ました。それは複雑系と脳科学のぶつかり合いという感じで、スリリングかつ興味深いものでありました。そんなわけで、当日残したメモと購入したユリイカを参考にしながら心に残ったお二人の語録を取り上げました。


◆複雑系科学⇒池上高志語録◆

「本当に理解できなくてはいけないのは曼荼羅の外側にある、熊楠が言うところの「大日如来不思議」とかいう、僕にはうかがい知れない世界なのですが（笑）」

「変な生物を研究していても一般的でユニヴァーサル（普遍的）な構造はわからないと思われるかもしれなけど、実は理論とか数学というのは、変なところ、特異点を見つけたほうが本物を摑みやすい。特異的な構造がすべてを補っているということも多くて、変わったものを探す志向というのは、実は全体を理解できる構造になっていることも少なくありません。」

「僕は異能性とか特異性というのは、やっぱり必要なんじゃないかと思います。」

「先に答えがわかるということなんじゃないか。ある問題設定を考えてこれを解いていこうとする前に、答えの在処がわかっていて、あの木の向こう側に求めるべき粘菌があるということがわかっていないと、その問題は解けないと思う。」


◆脳科学⇒茂木健一郎語録◆

「われわれの中には、自分というよくわからない、目に見えない幽霊みたいなほの暗いものがいる。それには絶対タグは付けられないしセキュリティなんかもないけれど、それがわれわれの生命そのもので、熊楠の言葉で言うと「大日如来不思議」なわけです。」

「熊楠は偶有性の海で一所懸命生きたということだと僕は思う。でもそれは特別な人生ではなく、作品が残っていないだけで皆同じなんじゃないか。」

「現代の現実の問題でどうやって自分の偶有性を輝かせられるかということを本当にまじめに考えなくちゃいけないし、それをやらないと現代の表現はどんどん痩せ衰えてしまって、われわれはもうダメだと思う。表現者というのは、偶有性の中に自分を浸す覚悟がなかったら、やっぱり本当の表現はできないんですよ


※「ユレイカ」２００８年１月号特集・南方熊楠から引用

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