■製作年度:1979年
■監督:工藤栄一
■出演:根津甚八、宇崎竜童、松崎しげる、原田美枝子、他
冒頭から柳ジョージの渋いブルースの音楽にのった映像が続く。実録ものとして手持ちカメラで揺れる画面で迫真性を出した深作欣二監督の映画「仁義なき戦い」とはまた一味違ったテイストのヤクザ映画「その後の仁義なき戦い」。監督は工藤栄一。主演も宇崎竜童、根津甚八、松崎しげると音楽系、前衛演劇出身系で固め、これが所謂ヤクザ俳優によるものではないヤクザ映画であることを明らかにした映画であることの表明だ。友情と裏切り、これはヤクザ映画の形態をとりながらもヤクザの理不尽な采配による悲喜こもごもを織り交ぜながらやるせない想いを身を破滅させることでしか浄化できない生き方ベタの男達の青春映画なのだ。底流に流れるのはブルースの響き。それを見事に体現してみせるのが根津甚八。内に秘めた感情を鋭い目で表現できるその演技がカッコイイ。彼がうつ病で引退してしまったのは残念なこと。
私は何度かこの映画を見ているが、一番好きな場面がラスト近く、ボスの裏切りと友情を売った代償に体の傷からついには覚醒剤中毒となりやけになっている根津甚八演じる相羽年男が、食堂で飯を食っていると失業しちょっといかれた感じのショーケン演じる失業者と絡むところ。テレビでは昔の仲間が歌手に転向(松崎しげるが演じている)し歌を歌っている。敵意剥きだしの相羽年男はテレビのボリュームを上げると他の客がうるさいと野球中継に切り替える。それをさらに相羽は元の歌番組に戻す。乱闘へ…。この場面はヤケッパチになっている相羽という男の心象を見事に表現したところと、本来、人間なんて自分の希望とは裏腹に環境に左右され周囲に流されてしまう弱い生き物なのだ。そして友情とか愛情というものは、流れのなかで結果、裏切ることになろうともその想いはすべてを忘れることができず、癒しを求めて心のどこかに住んでおり、それがどこかで自分を苦しめることになる、あるいは、苦しみを制御できなくなるという自暴自棄の魂の有様が、それこそブルースの音色に乗って私の心に響くのでした。
今の世代が見ると昭和の映画やな~と思うことしきりましれませんが、私にはジャストミートする映画なのです。根津甚八がとにかくいいのだ。
その後の仁義なき戦い [DVD] | |
飯干晃一,神波史男,松田寛夫 | |
東映ビデオ |
何十年も探しています(笑)