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飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

男達は過剰を目指す。ヘルツォークのシネマ#8 「緑のアリが夢見るところ」

2011-08-07 | Weblog

■製作年:1984年

■監督:ヴェルナー・ヘルツォーク

■出演:ブルース・スペンス、ワンドュク・マリカ、ロイ・マリカ、レイ・バレット、他

 

「(君らは)奈落に向かって突進する汽車の乗客だよ。前方にある橋は落ちているんだ。君だけはそれを知っているが、機関士に連絡できない。列車は猛スピードで破滅に向かう。君にできることは後部車輌に走って行くことだけだ。」オーストラリアの広大な地を鉱山の発掘で開発しようとする白達、しかし、そこは神聖な場所で「緑のアリが夢見るところ」と先住権を主張するアボリジニがいる。彼らアボリジニと白人の確執を描いたヴェルナー・ヘルツォーク監督の映画「緑のアリの夢見るところ」を見たときの印象的な台詞です。

 

近代化の、利便性、合理性などを優先してきた白人を中心とした西欧社会の論理、たしかにもの溢れ生活は快適になり豊かになりました。そして日本もそれに追随し世界でも有数の先進国となりました。しかし、そこには思わぬ落とし穴もありました。それは今回の大震災を見るまでもなく、我々は原子力という途方もなく厄介なものを作り出してしまったのです。上記の台詞は今まさに問題になっている原発問題にもあてはまるように思えたのです。私もそれを聞いたとき慌てて後部車輌に走る口ではないかとそう感じました。

 

ヘルツォークのこの映画は、同じように大自然が背景にあるものの、これまで見てきた映画とは、少し味わいが違うように思えました。アマゾンやアフリカを舞台にした一連の映画作品、そこには厳しい自然環境に住む原住民が登場してきたのですが、ここまでは彼らの深い部分、精神性にまで踏み込んで描いてはいなかったように思います。白人が力に任せて彼らを労働に従事させたり奴隷にしたりし驚きの映像を演出ていました。しかしここでは白人から見れば理解不能な行動に見えるのですが、彼らは白人が切り捨ててきたとても大切なものを守っているように見えました。そして彼らに共感していく白人の姿も描いていました。彼らは言います。「あなたはキリスト教の信者ですか?」「そうだ。」「もし、ブルドーザーで教会が破壊されたらどうしますか?」原住民のアボリジにとっては、土地は教会と同じような神聖な場所なのです。このようなアプローチの仕方の映画は初めて見たように思いました。

 

大自然とそこに共生しながら住む原住民たち。開発によって彼らの土地には今はスーパーが建っている。そのスーパーの通路の一角に座り込んでいるアボリジニ達、かつてそこには大木が立っていてすごく大切な場所なのだという。今、パワースポット・ブームで神社などの聖地に訪れる人が多いといいます。しかし私達はそこに本当に彼らが見せるほどのパワーを感じているのだろうか?私もそうしたところが好きでよく行ったりするのですが、自省をこめて流行だからでしょ?と問いかけたくなってしまいます。DVD化もされていない古い作品ですが、今に通じるとても心惹かれる映画でした。

 

【映画パンフ】緑のアリが夢見るところ ヴェルナー・ヘルツォーク
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