飾釦

飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

男達は過剰を目指す。ヘルツォークのシネマ#7 「彼方へ」

2011-08-05 | Weblog

■製作年:1991年
■監督:ヴェルナー・ヘルツォーク   
■出演:ヴィットリオ・メッツォジョルノ、ステファン・グロヴァッツ、マチルダ・メイ、ドナルド・サザーランド、他

ヴェルナー・ヘルツォーク監督の「彼方へ」を見ました。人間がとても太刀打ちできないような雄大な自然と対峙した男を描いた作品が印象的なヘルツォークは、この映画でもかなり険しい雪山を舞台にしていました。映画の冒頭はテレビ局がロッククライミングの大会を放送するというところから始まるのですが、そこでさりげなくディレクターの役で監督のヘルツォークが出ています。最初は見ていて少しかったるい感じがしていたのですが、段々と映画に引き込まれていくのがわかります。何故かというと、圧倒的な自然とそこに挑む人間の映像が凄いのです。当時はCGなんてない時代ですから、実写の迫力です。見ていて大丈夫なの?と思えてくるほど驚かされる映像がさりげなく映し出されるのです。(映画館の大画面で見たらそのスケールのでかさに圧倒されたんだろうな)

 

暑いとか寒いとか冷たいといった映画に映しだされる自然環境による皮膚感覚を、殊更、汗とか小道具とかそうしたもので強調しないで映像から感じさせる監督はそうはいないのではないでしょうか。ヘルツォークの真骨頂の一つだと思います。また、そうした厳しい自然環境に妥協することなく撮影に挑む彼の姿勢もまた、なかなか真似できないんじゃないでしょうか。スタッフも役者も相当過酷な中で撮影しているんだろうなと。さらりと映像を流してしまうにはあまりにもったいない気もします。ヘルツォーク?ああ、私は彼とは撮影するのは御免だというスタッフや役者も多いと思いますよ、きっと。あまりに過酷すぎて…。私の勝手な想像ですけど。まあ、そんな風に思ってしまうほど、この映画は圧倒的な自然とそれに挑む男の映像を映し出していました。命懸けの撮影とはこうした映像を見せられた時に感じるものかと。

 

ところで凄いと感じさせる映像は続くのですが、物語のほうはいたってシンプルで、もう少し捻りがあってもいいんじゃないのかなと思いました。それを考えると残念です。そこが弱いため、山岳ジャンルの映画として映画史に残るような傑作にはなりえなかったのだと思います。DVD化されていませんのでビデオで見るしかない幻?の作品ではあるようですが…。 

 

ザ・クライマー?彼方へ? [VHS]
ドナルド・サザーランド
大映
映画パンフレット 「彼方へ」監督ヴェルナー・ヘルツォーク 出演ヴィットリオ・メッツジョルノ/シュテファン・グロヴァッツ
アットワンダー
アットワンダー

 

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