goo blog サービス終了のお知らせ 

飾釦

飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

石川啄木「ローマ字日記」を読む

2013-04-26 | Weblog

石川啄木は日記魔で短い人生において何冊かの日記を残しています。その日記が短い生涯にもかかわらず啄木研究の大きな礎になっているのは間違いないことですし、先日書いた三谷幸喜のお芝居「ろくでなし啄木」のベースになっているのは間違いないでしょう。啄木の日記の中でとくに「ローマ字日記」と呼ばれているものは、彼の性的なことも赤裸々に書いており人間啄木を知るには、かっこうの素材であると言われています。私は三谷幸喜の「ろくでなし啄木」を見て、それは演劇であり多分に作者の想像的な部分が加わっており面白おかしく誇張しているため、そこで描かれている人物がイコール啄木ではないとわかっていながらも、石川啄木とはその歌の世界とは裏腹にずいぶんと勝手な男なんだなあと思ったのでした。そしてそのろくでなさが啄木の親しみやすさや魅力として映ったのです。そんなこともあり、赤裸々な自分を綴ったためワザとローマ字で書いたという啄木の「ローマ字日記」を読んで見ようと思ったのです。

 

『なぜこの日記をローマ字で書くことにしたか?なぜだ?予は妻を愛している。愛しているからこそこの日記を読ませたくないのだ、ーしかしこれはうそだ!愛してるのも事実、読ませたくないのも事実だが、この二つは必ずしも関係していない。そんなら予は弱者か?否、つまりこれは夫婦関係という間違った制度があるために起こるのだ。夫婦!なんという馬鹿な制度だろう!そんならどうすればよいか?悲しいことだ!』(「明治の文学 石川啄木」筑摩書房より引用)と啄木は日記の冒頭に書いているように妻に読まれたらまずいと思うことを書こうと考えているためにワザとローマ字にしたということがストレートに伝わってくる文章です。しかし、本当の隠された内面をローマ字とは言え文字に書こうとするかどうかは難しい判断とも見ることができ、日記も啄木の作為的な部分があるかもなとひねくれて考えてみたりもするのですが…。

 

さて日記の方は確かに啄木の赤裸々な性的な側面も書かれてあり、へえー、そうだったんだねと思わされる部分があります。人は他人の隠された秘め事をのぞき見するのが面白いと感じるのは江戸川乱歩の小説をみるまでもないことで、例外にもれず私も一気にそれを読んでしまいました。他人に読ませるための創作ではなく、日記という体験であるからどこまでが作為的なのかなと思いつつも、歌われる短歌の世界では感じることができない人間・啄木が見え親しみもあろうというものです。啄木が度々売春婦を買っていたこと、それに対する嫌悪と嫌悪しながらも度々足を運んでしまうこと(驚くにフィスト・ファックとおぼしき記載もあります)。今でいうエロ小説もどきを読んで悶々とそれを書き写していること。そうした隠しておきたいことが書き綴られているのでした。ただ、それを読んでも三谷幸喜が描いた「ろくでなし啄木」の世界に近いか?かというとそこまで酷くはなかったというのが印象です。感想は石川啄木も一人の健全なる青年であったということです。

啄木・ローマ字日記 (岩波文庫 緑 54-4)
桑原 武夫
岩波書店
啄木「ローマ字日記」を読む
西連寺 成子
教育評論社
啄木日記を読む
池田 功
新日本出版社
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「ろくでなし啄木」(作・演... | トップ | 映画「ハッシュパピー バスタ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事