72の2『自然と人間の歴史・世界篇』産業革命の伝搬(電磁気学の基礎確立)
1785年、シャルル・ド・クーロン(フランスの物理学者、1736~1806)は、電荷の間に働く力を測定し,電荷の間には電荷の強さの積とそれらの距離の2乗に反比例する力が働くことを発見した。これをクーロンの法則という。現在のクーロンの定義はアンペアに基づくものであって、1秒間に1アンペアの電流によって運ばれる電荷(電気量)を1クーロンという。このクーロンの考え方は遠隔作用といって,力は遠方に直接作用するというものであったのだが、カール・フリードリヒ・ガウス(1777~1855、ドイツの数学者、天文学者、物理学者)は、電荷の周囲の空間が徐々に変化して力が伝わるという近接作用の立場から、ガウスの法則として電荷と電場の関係の整理していく。
それから、1799年にアレッサンドロ・ボルタ(イタリアの物理学者、1745~1827)は、電池なるものを発明した。これにより、電気は電流という形で取り出すことができるようになり、人間の手でコントロールできるものとなった。電気というものが、実生活に大きく、かつ日常的に役立ちうることがわかった訳だ。
それから世紀が改まってからの1820年、ハンス・クリスティアン・エルステッド(1777~1851、デンマークの物理学者、化学者)は、電流が磁石に力を及ぼす、つまりこれは、電気と磁気の間に何か関係があると気づく。さらに1823年、アンドレ・マリ・アンペール(1775~1836、フランスの物理学者にして数学者)は、電流同士にも力が働くことを見つけ、そこから磁気の起源が電流にあると特定した。これをアンペールの法則と呼ぶ。
1831年、マイケル・ファラデー(1791~1867)は、イギリスの化学者にして物理学者)は、磁気が変化すると電気が生まれる、言い換えると磁場の変化が電流をもたらすことを発見した。これを「ファラデーの電磁誘導の法則」と呼ぶ。この現象における磁界・導体の運動・起電力の方向は、フレミングの右手の法則という。これが、発電機の原理にほかならない。なお、発電するには導体(コイル)を動かす方法と磁界(磁石)を動かす方法とがあり、一般には磁界を動かす方法が多く使用されている。それに、ファラデーの電気分解の法則との混同のおそれのない場合は、単にファラデーの法則と呼称されることもある。
この法則を安易にいうと、電磁誘導において、磁石をコイルに挿入した1つの回路に生じる誘導起電力の大きさはその回路を貫く磁界の変化の割合に比例するというもの。ただし、磁石がコイルの中に入れられたとしても、その磁石が静止したままだと磁場の変動がないことになって、電流は流れず誘導起電力は発生しない。
ファラデーはそればかりではない、この現象を説明するために電気力線・磁力線と電場・磁場という新たな概念を導入した。空間には電場及び磁場が存在し、これらの変化が様々な現象を生み出すと主張したのだ。
1835年にはガウスが、電気には電荷が存在する、言い換えると、電荷があると電場ができると発表する。1種類の電荷の力は放射状に直線的に広がることをいい、これを「電場に関するガウスの法則」という。彼はまた、電流は磁場を生み、その磁気の力はループ状(環状、同心円状)につながっているとした。これを「磁気に関するガウスの法則」という。ここに、磁場とは抽象的な概念にして、空間の各点もつ性質のことであり、その各点の磁場の方向を繋げたものを磁力線と呼ぶ。磁気にはNとSとが分離できるような磁荷は存在しない。
そして迎えた1864年、ジェームズ・クラーク・マクスウェル(1831~1879)が、以上の取りまとめ訳として、電磁気学の表舞台に登場してくる。彼は、スコットランドの貴族の家系に生まれ、イギリス内の大学で教授を務めた間、先達の研究成果を踏まえ電磁場の概念を物理学に導入し、光が電磁波の一種であることを理論的に予想したほか、 気体運動論では速度の分布という統計的概念を用いる。
前者では、ガウスやアンペール、そして及びファラデイの業績などから、電気と磁気の性質を取りまとめを試みる。そして、これまでの法則を次の4つに整理し、発表した。
その1として、電気には電荷が存在する、言い換えると、電荷があると電場ができる。1種類の電荷の力は放射状に直線的に広がることをいい、これは前に述べた「電場に関するガウスの法則」に当たる。
その2として、電流は磁場を生み、その磁気の力はループ状(環状、同心円状)につながっている。これは、先に述べた「磁気に関するガウスの法則」に当たる。
その3として、マクスウェルはこのアンペールの法則(前述)を一般化した。それによれば、あるところに電気が変化すると磁気が生まれる、言い換えると、電場の時間変化と電流が磁場を生み出すというのだ。
その4として、磁気が変化すると電気が生まれる、言い換えると磁場の変化が電流をもたらすという、前に述べたファラデーの電磁誘導の法則を指している。
これらの、つごう4つのマクスウェルの取りまとめた数式(マクスウェルの方程式)は、総体として、電気と磁気が一体となって伝わる電磁波という波が存在することを意味するととともに、1864年、彼はこの成果を基に光は電磁波の一種であることを予言する。
ただし、ここでのマクスウェル自身は電磁気現象をエーテル媒質の力学的状態によるものと捉えていたようで、現代の考え方とはかなり異なっている。1888年、ヘルツが実験によりこれらを確かめ、電磁波が存在することが証明された。
なお、今日「マクスウェル方程式」と呼ばれる一連の方程式は、彼自身が書いたものとは異なっており、後にヘルツやヘヴィサイドらによって整理されたバージョンとして語り継がれているものだ。
(続く)
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