'14.3.22 『ラヴレース』@ヒューマントラストシネマ有楽町
気になってたんだけど、多分DVD鑑賞になっちゃうなと思ってた。ちょうど2時間くらい時間潰さなきゃならなくて、ちょうど時間が合ったのと、テアトル系の会員更新したばかりでタダ券あったので、見てみることに! というわけで、行ってきたー
ネタバレありです!
「21歳で結婚したリンダ。結婚当初こそ羽振りの良かった夫チャックの事業は失敗。借金返済のため彼はリンダにポルノ映画出演を強要する。ワラをも掴む思いで出演した作品が大ヒット! 社会現象にまでなってしまうが・・・」という話。ポルノ業界を描く話ではないことは知っていたけれど、ポルノスターの側面よりも、その裏で彼女が受けていた暴力や虐待に焦点を当てた作品。これは、なかなか良かった!
監督はロブ・エプスタイン&ジェフリー・フリードマンのコンビ。主に長編ドキュメンタリーを撮ってきたそうで、なるほど今作もドキュメンタリー的でもある。ちなみに、ジェフリー・フリードマンは『エクソシスト』の編集補助をしていたのだそう!( ゚д゚)ホゥ プロデューサーのジム・ヤングは、センセーショナルな題材を、ジャーナリズムの視点で誠実に掘り下げてくれるだろうと、エプスタイン&フリードマンに監督を依頼したのだそう。2人はどこに焦点を当てるべきかと考え、支配的で信仰深い母親を主軸とし、リンダの人生における重要な局面での"本当の思い"を明らかにすることにしたのだそう。そのために、関係者たちの自伝や、インタビュー記録映画などを検証、実際のポルノ映画の撮影現場へも足を運んだとのこと。なるほど、その辺りのアプローチもドキュメンタリー的なのかも?
リンダ・ラヴレースと『ディープ・スロート』については名前だけは知ってた。尊敬するMJこと、みうらじゅん氏の会話によく出てくるから(笑) 一応、毎度の
Wikipediaで調べてみた! リンダ・ラヴレース(本名:リンダ・スーザン・ボアマン)はブロンクス出身の女優。後にフロリダに移住。1972年の『ディープ・スロート』で有名になり、その後ポルノ反対論者になった。その後、ポルノ作品に出演するも失敗。1973年に夫のチャック・トレーナーと離婚。1980年に出版された自伝では、夫婦の関係は暴力、強姦、売春、ポルノ映画に支配されたものだったとされている。後年は、ポルノ反対の立場から講演を行うなどの活動をしていたが、2002年4月3日に交通事故を起こし重症を負い、4月22日生命維持装置が外されデンバーで死去。となんとも波乱万丈な人生・・・
もう少しリンダ・ラヴレースのことについて触れておく。この映画の中では最初に出演した映画が『ディープ・スロート』のように描かれているけれど、実際は数本のポルノに出演した後の出演だったらしい。まぁ、でもこの作品1本で大スターになったことは間違いないわけだから、ヒットしなかった前の数本は省いても問題ないと思う。ただ、やっぱり若い女性がポルノに出るというのは、普通のことではないから、結構出演していたとなると見る側の印象が違ってくるのは確か。映画の中でリンダが「ポルノ業界で働いたのは17日間だった」と言っているわけで、後に反対論者なった彼女の主張としては、たった数日でポルノ女優の烙印を押されたってことだった。実際の『ディープ・スロート』の撮影はニュージャージーのアパートで7日間で撮影されたそうなので、出演作品全てを合わせても17日だったのかもしれないけれど・・・ うーん、上手く言えないけれど同情方向に持っていくには、出演作品を少なく見えるように演出した方が有利だよね?と思っただけで、別に批判しているつもりはない。ただ、自分の中で少し違和感があったので・・・
『ディープ・スロート』は6億ドルの総収益があったそうだけれど、夫のチャック・トレーナーはリンダの出演料として1,250ドルしか受け取っていないと言われているのだそう。ストーリーがあって、一般劇場用のポルノ映画としては初の試みだったようで、前述したとおり映画は社会現象となった。ジャクリーン・ケネディも見たと言われており、1970年代のポップカルチャーに大きな影響を与えた。日本でも公開されたけれど、映倫によるカットだらけで映画として成り立たなかったそうで、『ミス・ジョーンズの背徳』とくっつけて公開されたとのこと。このくっつけてという意味が分からないのだけど、二本立てってことではないよね? 1本の映画にしてしまったってこと? まぁ、いいけど(o´ェ`o)ゞ 喉の奥に女性器がある女性が主人公ということで、どこにそんなにヒットする要素があるのかは謎なのだけど、どうやら普通の女の子が主演であるという部分も受けた理由の1つで、それが彼女を伝説のポルノスターにした要因だったらしい。
いつにも増して前置きが長くてごめん
イヤ、というのはこの映画DV夫との闘いがメインであり、あくまでリンダ側から描いた作品。しかも、映画だから多少の脚色はあるだろうと思い、本当はどうだったのだろうかと調べてみたのと、DVについては細かく描写するのも気が引けるので、映画についてはサラリと書こうかなと思ったから。だったら、レビューなんて必要ないじゃんとも思うけど、一応見た記録ということで(o´ェ`o)ゞ それに、テーマ的に楽しい映画ではなかったけれど、いろいろ考えさせられる良い作品だったので。一応、自分が調べた範囲内では、元夫チャック・トレーナーから自伝内容についてクレームが出たという記載はなかった。彼は後にポルノ女優マリリン・チェンバースと再婚し、10年後に離婚しているけれど、彼女に対するDVがあったかは不明。どうしてもチャック・トレーナーのことを悪く書かざるを得ないので、一応公平な態度を保っていますという長い断り書き(笑)
映画はリンダがチャック・トレーナーと知り合う前から半年前から始まる。21歳で結婚したそうなので20歳か21歳。 両親と3人暮らしで門限は22時。リンダは不服のようだけれど、この門限自体はビックリするほど厳しいものではないと思う。かなり短いショートパンツをたしなめられたりと、ちょっと口うるさいなと思うれど、彼女の年齢だった頃の自分の親もこんな感じだったので、特別厳しいとも思わない。ただ、門限を破ると無言で平手打ちは、結構厳しいなとも思うけれど、後にこの母親が何故厳しく接しているのかが分かる。ただ、作品全体を通して言えることだけれど、リンダは風紀的に乱れた女性というわけではない。どちらかというと、仲のいい女友達よりも消極的で、むしろ真面目な感じ。ただ、流されやすいというか、依存体質のような気はする。これはもしかすると、母親による過干渉や、支配的な態度によるものだったのかもしれない。
リンダの流されやすさとか、消極的ではあるけれど、実は大胆で危ういところがある感じを、ローラースケートリンクで見せたのは上手いと思った。何故か生バンドが入っていて、その脇のお立ち台のような所で踊らないかと誘われる。リンダは恥ずかしいからと断るけれど、女友達に押されて結局踊ることに。初めはおずおずしているけれど、そのうちノリノリになり、恥ずかしがりながらも見られていることの喜びを味わっている感じ。その様子をジッと見ていたのがチャック・トレーナー。言葉巧みに近づいてくる。積極的で大胆ではあるけれど、実は最終的な部分では賢く立ち回れる女友達のようなタイプならば別だけれど、リンダのような無防備なタイプはまんまと引っかかってしまう。まぁ、この男がDV夫になるって知っているから、見ている側は最初から警戒している部分はあるのだけど、後にチャックは自らリンダの両親に会いたいと言い、「絶対にいい青年だと言わせてやる」とリンダに宣言し、その通りになっていることから、好人物を装い人の心に入り込むのが上手い人物であることは間違いない。
チャックとの交際は進み、リンダは過去の出来事を彼に話す。実は彼女は18歳の時に妊娠、以前いた所に居られなくなり、現在の土地に引っ越してきたのだった。出産した子供は取り上げられ、どこにいるのかも分からない。前述しているとおり、リンダは特別性的に乱れているわけではないけれど、そういう状況になった時に強く拒絶できない部分がある。例えば、チャックが両親に会いに来た時も、いくら死角になっているとはいえ、近くに両親がいるのにキス程度ならまだしも、キッチンでアレコレやり出すチャックに強く抵抗することができない。反抗したり拒絶すると嫌われると思い込んでいるのかもしれない。
母親は1度はチャックを認めたものの、交際や結婚には乗り気ではなかった様子。でも、2人は結婚してしまう。幸せいっぱいなはずの新婚初夜、既にチャックの自分勝手で暴力的な一面が明かされる。数年後にはチャックが経営している店の経営が悪化、多額の借金をしてしまう。もちろん、まともな相手からの借金ではないわけで、それこそ命の危険もある。そこでチャックが一計を案じたのが、自分が秘技を仕込んだリンダをポルノ映画に出演させるというもの。リンダはもちろん嫌がってはいるものの、大金を得るには方法がない。この時点ではまだあまり明らかにされてはいないけれど、後に暴力を振るわれての出演であることが分かる。演技は酷いものだったけれど、リンダの秘技が認められて映画出演を果たす。
実はこれ2重構造のような映画で、最初に見せられていた場面の本当の面を、後から見せるような形で描かれている。リンダが上記のような理由で『ディープ・スロート』に出演し、映画が大ヒットして一躍スターになるまでは、後の伏線となるような描写はあるものの、わりとポップでコメディタッチの軽いトーンで展開する。1970年代のポップカルチャー的な世界が楽しかったりする。よく知らないけど(笑) でも、リンダが自伝を書き始めたという場面から空気が一転する。楽しいはずの新婚初夜で感じた恐怖、ポルノ映画に出演するに至った経緯、 撮影中に隣の部屋でお酒を飲んでた人たちに、お盛んだなと揶揄されたけど、実際は酷い暴力を振るわれていたこと。そして、映画出演前(だったと思う・・・ ちょっと記憶が・・・)に、離婚したいと実家に帰ったけれど、母親に拒否されていたこと・・・
リンダの両親はカトリック教徒で、特に母親は敬虔な信者。だから、規律正しい生活をするという部分はもちろんあった。でも、実はこの母親も18歳でリンダの姉を生み、未婚の母となっていたのだった。この姉は映画には一切登場しないし、公式サイトやWikipeidaなどにも記載はなかったので、実際もそうだったのかは不明。映画の中では、母はリンダの父親である夫と出会うまで、大変な苦労をして姉を育てた。だから、夫はとっても有り難い存在だという考え。だから、どんなに辛くても夫に従えと、家に置いて欲しいと泣いてすがるリンダに言い放つわけなんだけど・・・ リンダがどんな目に遭っているかについては、聞きたくないと拒否する。それはもちろんDVの予感があるからだろうし、それでも夫に従うしかないと考えているから。そして世間体を気にしているのかも。
1970年代ってウーマン・リブ運動の時代だと思うけれど、女性が1人で生きていくのは、まだまだ大変だったのでしょう。母親世代は女性は結婚して夫に従う時代だっただろうし。それに、2014年の独身OLちゃんだって、生きていくのは大変(笑) でも、暴力を振るわれても、レイプされても夫に従えっていうのはまぁ、夫によるレイプや、お金のために複数の男たち相手に売春強要までは想像してなかったとは思うけど、娘に同じ苦労をさせたくないという気持ちも分かるけれど、これを言われてしまったら辛い・・・ 娘としてだけじゃなくて、人としての尊厳も否定された気持ちになる。
結局、チャックの元に戻るしかなかったリンダは、前述したとおり映画に出演して大スターになるのだけど、チャックは完全にヒモ状態。立派な家もリンダの稼いだお金で建てたわけで・・・ リンダは以前よりは強気の発言ができるようになっているけれど、チャックがキレてしまえば暴力を振るわれる。夜中に喧嘩になり外へ飛び出したリンダを追ったチャックは、坂道でリンダを突き飛ばす。転げ落ちていくリンダは当然流血。そこにパトカーが通りかかる。何かあったかと聞かれても、酔って転んだだけだと言い訳するチャックを信じてしまう警官。パトカーに戻りかけて、ふと立ち止まる警官。少し期待するリンダ。でも、警官はリンダ・ラブレースのサインを求めてきただけだった。こういうシーンで彼女の孤独感とか絶望感を表すのが上手い。
我慢の限界に達したリンダは、映画の出資者であるアンソニー・ロマーノの元に駆け込み匿ってもらうことに。ご本人もそうしたのかは不明。『ディープ・スロート』の後にもポルノ映画に出演したそうだけれど、他の作品の撮影風景のような描写はなかったように思う。そして、一気に数年後、スタジオのトーク番組でポルノ反対の立場から話をするリンダ。ポルノ業界で働いたのは17日、その17日でイメージを決められてしまったと語る。まぁ、確かにそうなんだけど、でもやっぱり普通のお嬢さんはポルノ映画には出演しないからねぇ・・・ 大スターだった日々、電話口で父親が「あそこに映っているのが、俺のかわいい娘とは思えない」と涙を流すシーンが胸を打つ。職業に偏見はないつもりだし、いろんな事情があるからポルノ作品に出るなとも言えないし、言わない。もちろん、全て合法前提! でも、やっぱりポルノに出るのであれば、親にこんな思いをさせるかもしれないこと、そしてその後の自分の人生も引き受ける覚悟がなくちゃダメだということだよね。本当にこの映画のように強制されたものなら気の毒としか言いようがない。でも、人は生まれ変われると力強く語るリンダが印象的。そう、人はいくつになっても生まれ変われると信じたい。
映画は別の男性と結婚し、1児の母となったリンダが実家を訪れ、母親と和解するシーンで終わる。公式サイトでもWikipediaでもリンダがその後、結婚したという記述がなかったので、これも実際は不明。母娘との間も実際ここまで確執があったのか、後に和解したのかも不明。でも、このラストは良かったと思う。娘は母親の作品っていう言葉を聞いたことがある。この母親はリンダにとって支配的で、重荷であった時期があったかもしれない。でも、母は自分と同じ道を歩ませまいと思っただけ。結果的に同じ過ちを犯し、さらに茨の道を歩むことになってしまったけれど、でも自らその人生と決別し、新たな運命を切り開いた。それは、やっぱり彼女に正しく生きることを教えた母親のお陰だったのだと思う。母と娘はちょっと複雑。でも、一番近い存在。
キャストが良かった! 母親役がシャロン・ストーンて知らなくて、後から分かってビックリ! 「くたばれアニメだハリッド」(感想は
コチラ)というアニメ番組で、ボトックス注射を打ちまくっているなどとネタにされていた美貌を封印。皺を刻んだ姿で登場。質素で敬虔なカトリック教徒で支配的な母親という、いわゆる"シャロン・ストーン"を必要とされていない役。とっても良かった! 父親役のロバート・パトリックも良かった。あの電話のセリフは泣いた
女友達役のジュノー・テンプルはこういう役やらせたら上手い(笑) そして! チャック役のピーター・サースガードが相変わらず上手い! 上手いからムカつく!!(笑) 何でこんな男にダマされる?と思うけど、やっぱりダマされちゃうかもしれないと思わせる。ホントに上手い。そして何と言っても、形のいいバストを惜しげもなく披露し、文字通り体当たりの演技を見せたアマンダ・セイフライド! もう、どうしてダメな方、ダメな方に行くんだ?!と思うくらい、深く考えることを知らない流されやすかった女性が、後半確かな意思を持ってDV夫や自らの人生に立ち向かう姿を見事に演じた。これは代表作になるのでは?
DV、レイプ、母親との確執など重いテーマを扱っている。でも、どの画面もとってもポップ。リンダの実家の大きなオレンジ色の花柄の壁紙とか、ちょっと安っぽいけどカワイイ! 家具もミッドセンチュリーモダンな感じで素敵
あと、ファッション! スターになってからの真っ赤なドット柄のショート丈のワンピースとかもカワイイけど、娘時代のニットのカーディガンとかもカワイイ! 絶対できないけどアフロヘアみたいなパーマとか! 小柄で色白、大きな目が印象的なアマンダ・セイフライドにピッタリ
そもそも、公開してからけっこう時間経ってから見たし、さらに記事書くのに1ヶ月近くかかっちゃったから。既に上映終了してしまっているね・・・
重いテーマをポップに、でもしっかりと伝えるべきところは伝えていて良い作品。これはオススメ! リンダ・ラブレースファンの方是非! アマンダ・セイフライド ファンの方必見!!
『ラヴレース』Official site
気になってたんだけど、多分DVD鑑賞になっちゃうなと思ってた。ちょうど2時間くらい時間潰さなきゃならなくて、ちょうど時間が合ったのと、テアトル系の会員更新したばかりでタダ券あったので、見てみることに! というわけで、行ってきたー



監督はロブ・エプスタイン&ジェフリー・フリードマンのコンビ。主に長編ドキュメンタリーを撮ってきたそうで、なるほど今作もドキュメンタリー的でもある。ちなみに、ジェフリー・フリードマンは『エクソシスト』の編集補助をしていたのだそう!( ゚д゚)ホゥ プロデューサーのジム・ヤングは、センセーショナルな題材を、ジャーナリズムの視点で誠実に掘り下げてくれるだろうと、エプスタイン&フリードマンに監督を依頼したのだそう。2人はどこに焦点を当てるべきかと考え、支配的で信仰深い母親を主軸とし、リンダの人生における重要な局面での"本当の思い"を明らかにすることにしたのだそう。そのために、関係者たちの自伝や、インタビュー記録映画などを検証、実際のポルノ映画の撮影現場へも足を運んだとのこと。なるほど、その辺りのアプローチもドキュメンタリー的なのかも?
リンダ・ラヴレースと『ディープ・スロート』については名前だけは知ってた。尊敬するMJこと、みうらじゅん氏の会話によく出てくるから(笑) 一応、毎度の


もう少しリンダ・ラヴレースのことについて触れておく。この映画の中では最初に出演した映画が『ディープ・スロート』のように描かれているけれど、実際は数本のポルノに出演した後の出演だったらしい。まぁ、でもこの作品1本で大スターになったことは間違いないわけだから、ヒットしなかった前の数本は省いても問題ないと思う。ただ、やっぱり若い女性がポルノに出るというのは、普通のことではないから、結構出演していたとなると見る側の印象が違ってくるのは確か。映画の中でリンダが「ポルノ業界で働いたのは17日間だった」と言っているわけで、後に反対論者なった彼女の主張としては、たった数日でポルノ女優の烙印を押されたってことだった。実際の『ディープ・スロート』の撮影はニュージャージーのアパートで7日間で撮影されたそうなので、出演作品全てを合わせても17日だったのかもしれないけれど・・・ うーん、上手く言えないけれど同情方向に持っていくには、出演作品を少なく見えるように演出した方が有利だよね?と思っただけで、別に批判しているつもりはない。ただ、自分の中で少し違和感があったので・・・
『ディープ・スロート』は6億ドルの総収益があったそうだけれど、夫のチャック・トレーナーはリンダの出演料として1,250ドルしか受け取っていないと言われているのだそう。ストーリーがあって、一般劇場用のポルノ映画としては初の試みだったようで、前述したとおり映画は社会現象となった。ジャクリーン・ケネディも見たと言われており、1970年代のポップカルチャーに大きな影響を与えた。日本でも公開されたけれど、映倫によるカットだらけで映画として成り立たなかったそうで、『ミス・ジョーンズの背徳』とくっつけて公開されたとのこと。このくっつけてという意味が分からないのだけど、二本立てってことではないよね? 1本の映画にしてしまったってこと? まぁ、いいけど(o´ェ`o)ゞ 喉の奥に女性器がある女性が主人公ということで、どこにそんなにヒットする要素があるのかは謎なのだけど、どうやら普通の女の子が主演であるという部分も受けた理由の1つで、それが彼女を伝説のポルノスターにした要因だったらしい。
いつにも増して前置きが長くてごめん

映画はリンダがチャック・トレーナーと知り合う前から半年前から始まる。21歳で結婚したそうなので20歳か21歳。 両親と3人暮らしで門限は22時。リンダは不服のようだけれど、この門限自体はビックリするほど厳しいものではないと思う。かなり短いショートパンツをたしなめられたりと、ちょっと口うるさいなと思うれど、彼女の年齢だった頃の自分の親もこんな感じだったので、特別厳しいとも思わない。ただ、門限を破ると無言で平手打ちは、結構厳しいなとも思うけれど、後にこの母親が何故厳しく接しているのかが分かる。ただ、作品全体を通して言えることだけれど、リンダは風紀的に乱れた女性というわけではない。どちらかというと、仲のいい女友達よりも消極的で、むしろ真面目な感じ。ただ、流されやすいというか、依存体質のような気はする。これはもしかすると、母親による過干渉や、支配的な態度によるものだったのかもしれない。
リンダの流されやすさとか、消極的ではあるけれど、実は大胆で危ういところがある感じを、ローラースケートリンクで見せたのは上手いと思った。何故か生バンドが入っていて、その脇のお立ち台のような所で踊らないかと誘われる。リンダは恥ずかしいからと断るけれど、女友達に押されて結局踊ることに。初めはおずおずしているけれど、そのうちノリノリになり、恥ずかしがりながらも見られていることの喜びを味わっている感じ。その様子をジッと見ていたのがチャック・トレーナー。言葉巧みに近づいてくる。積極的で大胆ではあるけれど、実は最終的な部分では賢く立ち回れる女友達のようなタイプならば別だけれど、リンダのような無防備なタイプはまんまと引っかかってしまう。まぁ、この男がDV夫になるって知っているから、見ている側は最初から警戒している部分はあるのだけど、後にチャックは自らリンダの両親に会いたいと言い、「絶対にいい青年だと言わせてやる」とリンダに宣言し、その通りになっていることから、好人物を装い人の心に入り込むのが上手い人物であることは間違いない。
チャックとの交際は進み、リンダは過去の出来事を彼に話す。実は彼女は18歳の時に妊娠、以前いた所に居られなくなり、現在の土地に引っ越してきたのだった。出産した子供は取り上げられ、どこにいるのかも分からない。前述しているとおり、リンダは特別性的に乱れているわけではないけれど、そういう状況になった時に強く拒絶できない部分がある。例えば、チャックが両親に会いに来た時も、いくら死角になっているとはいえ、近くに両親がいるのにキス程度ならまだしも、キッチンでアレコレやり出すチャックに強く抵抗することができない。反抗したり拒絶すると嫌われると思い込んでいるのかもしれない。
母親は1度はチャックを認めたものの、交際や結婚には乗り気ではなかった様子。でも、2人は結婚してしまう。幸せいっぱいなはずの新婚初夜、既にチャックの自分勝手で暴力的な一面が明かされる。数年後にはチャックが経営している店の経営が悪化、多額の借金をしてしまう。もちろん、まともな相手からの借金ではないわけで、それこそ命の危険もある。そこでチャックが一計を案じたのが、自分が秘技を仕込んだリンダをポルノ映画に出演させるというもの。リンダはもちろん嫌がってはいるものの、大金を得るには方法がない。この時点ではまだあまり明らかにされてはいないけれど、後に暴力を振るわれての出演であることが分かる。演技は酷いものだったけれど、リンダの秘技が認められて映画出演を果たす。
実はこれ2重構造のような映画で、最初に見せられていた場面の本当の面を、後から見せるような形で描かれている。リンダが上記のような理由で『ディープ・スロート』に出演し、映画が大ヒットして一躍スターになるまでは、後の伏線となるような描写はあるものの、わりとポップでコメディタッチの軽いトーンで展開する。1970年代のポップカルチャー的な世界が楽しかったりする。よく知らないけど(笑) でも、リンダが自伝を書き始めたという場面から空気が一転する。楽しいはずの新婚初夜で感じた恐怖、ポルノ映画に出演するに至った経緯、 撮影中に隣の部屋でお酒を飲んでた人たちに、お盛んだなと揶揄されたけど、実際は酷い暴力を振るわれていたこと。そして、映画出演前(だったと思う・・・ ちょっと記憶が・・・)に、離婚したいと実家に帰ったけれど、母親に拒否されていたこと・・・
リンダの両親はカトリック教徒で、特に母親は敬虔な信者。だから、規律正しい生活をするという部分はもちろんあった。でも、実はこの母親も18歳でリンダの姉を生み、未婚の母となっていたのだった。この姉は映画には一切登場しないし、公式サイトやWikipeidaなどにも記載はなかったので、実際もそうだったのかは不明。映画の中では、母はリンダの父親である夫と出会うまで、大変な苦労をして姉を育てた。だから、夫はとっても有り難い存在だという考え。だから、どんなに辛くても夫に従えと、家に置いて欲しいと泣いてすがるリンダに言い放つわけなんだけど・・・ リンダがどんな目に遭っているかについては、聞きたくないと拒否する。それはもちろんDVの予感があるからだろうし、それでも夫に従うしかないと考えているから。そして世間体を気にしているのかも。
1970年代ってウーマン・リブ運動の時代だと思うけれど、女性が1人で生きていくのは、まだまだ大変だったのでしょう。母親世代は女性は結婚して夫に従う時代だっただろうし。それに、2014年の独身OLちゃんだって、生きていくのは大変(笑) でも、暴力を振るわれても、レイプされても夫に従えっていうのはまぁ、夫によるレイプや、お金のために複数の男たち相手に売春強要までは想像してなかったとは思うけど、娘に同じ苦労をさせたくないという気持ちも分かるけれど、これを言われてしまったら辛い・・・ 娘としてだけじゃなくて、人としての尊厳も否定された気持ちになる。
結局、チャックの元に戻るしかなかったリンダは、前述したとおり映画に出演して大スターになるのだけど、チャックは完全にヒモ状態。立派な家もリンダの稼いだお金で建てたわけで・・・ リンダは以前よりは強気の発言ができるようになっているけれど、チャックがキレてしまえば暴力を振るわれる。夜中に喧嘩になり外へ飛び出したリンダを追ったチャックは、坂道でリンダを突き飛ばす。転げ落ちていくリンダは当然流血。そこにパトカーが通りかかる。何かあったかと聞かれても、酔って転んだだけだと言い訳するチャックを信じてしまう警官。パトカーに戻りかけて、ふと立ち止まる警官。少し期待するリンダ。でも、警官はリンダ・ラブレースのサインを求めてきただけだった。こういうシーンで彼女の孤独感とか絶望感を表すのが上手い。
我慢の限界に達したリンダは、映画の出資者であるアンソニー・ロマーノの元に駆け込み匿ってもらうことに。ご本人もそうしたのかは不明。『ディープ・スロート』の後にもポルノ映画に出演したそうだけれど、他の作品の撮影風景のような描写はなかったように思う。そして、一気に数年後、スタジオのトーク番組でポルノ反対の立場から話をするリンダ。ポルノ業界で働いたのは17日、その17日でイメージを決められてしまったと語る。まぁ、確かにそうなんだけど、でもやっぱり普通のお嬢さんはポルノ映画には出演しないからねぇ・・・ 大スターだった日々、電話口で父親が「あそこに映っているのが、俺のかわいい娘とは思えない」と涙を流すシーンが胸を打つ。職業に偏見はないつもりだし、いろんな事情があるからポルノ作品に出るなとも言えないし、言わない。もちろん、全て合法前提! でも、やっぱりポルノに出るのであれば、親にこんな思いをさせるかもしれないこと、そしてその後の自分の人生も引き受ける覚悟がなくちゃダメだということだよね。本当にこの映画のように強制されたものなら気の毒としか言いようがない。でも、人は生まれ変われると力強く語るリンダが印象的。そう、人はいくつになっても生まれ変われると信じたい。
映画は別の男性と結婚し、1児の母となったリンダが実家を訪れ、母親と和解するシーンで終わる。公式サイトでもWikipediaでもリンダがその後、結婚したという記述がなかったので、これも実際は不明。母娘との間も実際ここまで確執があったのか、後に和解したのかも不明。でも、このラストは良かったと思う。娘は母親の作品っていう言葉を聞いたことがある。この母親はリンダにとって支配的で、重荷であった時期があったかもしれない。でも、母は自分と同じ道を歩ませまいと思っただけ。結果的に同じ過ちを犯し、さらに茨の道を歩むことになってしまったけれど、でも自らその人生と決別し、新たな運命を切り開いた。それは、やっぱり彼女に正しく生きることを教えた母親のお陰だったのだと思う。母と娘はちょっと複雑。でも、一番近い存在。
キャストが良かった! 母親役がシャロン・ストーンて知らなくて、後から分かってビックリ! 「くたばれアニメだハリッド」(感想は


DV、レイプ、母親との確執など重いテーマを扱っている。でも、どの画面もとってもポップ。リンダの実家の大きなオレンジ色の花柄の壁紙とか、ちょっと安っぽいけどカワイイ! 家具もミッドセンチュリーモダンな感じで素敵


そもそも、公開してからけっこう時間経ってから見たし、さらに記事書くのに1ヶ月近くかかっちゃったから。既に上映終了してしまっているね・・・

重いテーマをポップに、でもしっかりと伝えるべきところは伝えていて良い作品。これはオススメ! リンダ・ラブレースファンの方是非! アマンダ・セイフライド ファンの方必見!!
