'14.04.05 『1/11 じゅういちぶんのいち』鑑賞@シネ・リーブル池袋
この春一番期待とドキドキで公開を待っていた作品! 以前から応援している片岡翔監督の長編デビュー作品! ドキドキというのは親心のようなもので、決して出来を心配してたわけじゃない! そんな期待とドキドキで胸躍らせて、公開初日に監督のお姉様でお友達のmigちゃんと、tomocoさんと3人で見に行ってきたー
重要な部分は伏せていますが、ややネタバレありです!
「高校でサッカー部を作り、部員勧誘に励む安藤ソラ。父親に反対されながらも、サッカー部マネージャーを続ける篠森仁菜。彼らを冷めた目で見つつも気になる越川凛哉。演劇部唯一の男子部員野村瞬。演劇部部長の小田麻綾。キラキラした瞬間をカメラに捉えようとする柏木千夜子。そして、なでしこジャパンの11番若宮四季。それぞれが織り成す青春ストーリー」という話。これあらすじ書くの難しかった・・・
もちろん、つまらなかったからじゃない! オムニバス形式をとっているわけではないけれど、それぞれの人物が主軸となるエピソードを描きつつ、それがリンクしあって1つの話となっているから。そして、この作品の中で誰かが何かを成し遂げたり、1つのエピソードが完結したりするわけではないから。でも、余韻を残す終わり方ではあるけれど、結論を見る側に委ねる作品というわけではない。登場人物たちの青春の1ページを切り取ったという感じの作品で、これは本当に良かった。
原作は中村尚儁(たかとし)氏の同名コミック。現在もジャンプSQに連載中で、累計60万部を超える大ヒット作品。自身は原作は未読。各話で主役が変わりリンクしていく形式であるということと、サッカー部員の話だけれどサッカー漫画ではないということは知っていたけれど、それ以外の予備知識はほぼなし。今回、脚本も担当された片岡監督は、各話をつなげて1つの作品とすることに苦労されたそうで、2年間かけて脚本を練り上げたのだそう。なので、コミックとは順番が異なっているエピソードもあるそうだけれど、個人的にはそれが成功していると思う。
舞台となるのは修学院高校。原作でもどこの県の学校かは明らかにされていないそうで、どうやら関東圏ではないらしいとのこと。エンドロールによるとロケ地は関東近県だけれど、映画でもどこにあるのかは描かれていない。映画の中では特に言及はなかったように思うけれど、どうやら進学校らしい。そこそこ大きな学校なのに、サッカー部がないのは珍しいなと思ったけれど、進学校だからなのかもしれない。
冒頭から、安藤ソラと篠森仁菜がビラを配り、サッカー部への勧誘をしている。それを冷やかしながら帰宅する4人組のグループ。容姿がよくカッコイイことをしている(つもり)のイケてるグループ。彼らから見れば頭を下げて部員を勧誘するソラたちや、放課後空気イスをして鍛える演劇部員、地面に這いつくばって自分の撮りたい写真を撮る千夜子はダサいってことになるのでしょう。大人になってしまえば、熱くなれるものもなく、誰と付き合うか、友達になるかってことが重要で、人をバカにすることでしか自分を保てない彼らの方こそかわいそうだと思うのだけど、残念ながらスクールカーストでは、容姿がイケている者や、イケている者と友達であるということが、カースト上位になる条件だったりするわけで・・・
そんなスクールカースト頂点にいる凛哉。原作ではかなりチャラいキャラらしいけれど、映画ではそうは描かれていない。この変更は良かったと思う。実は凛哉は中学時代ソラたちと同じように熱い思いで部活に励んでいた。でも、挫折。高校に入ってからは無気力に過ごしていたけれど、逆にその方がカースト上位に行けるのだから複雑な思いがしていたのかもしれない。映画のキャラはそういう風に描かれていたように思うし、工藤阿須加の演技もそうだったように思う。雑誌で素人モデルとして取り上げられても、どこか冷めている感じ。凛哉はあることがきっかけで、サッカー部入部を決意する。このエピソードは青春ぽくて良かった! 大勢にチヤホヤされることがうれしいんじゃなくて、たった一人に認めてもらいたいっていう思い。
凛哉が登校前に校門で部員募集のチラシを配るソラの前で、サッカー部に入部したいと語るシーンは泣けた。そう、自分を変えることは勇気とエネルギーがいる! それは恥ずかしいことのように思ったりする。でも、ソラのようにきちんと見ていてくれる人がいる! ここの凛哉とソラのセリフはとってもよかった!
マネージャー仁菜の父親は、高校時代に部活で辛い思い出がある。高卒で就職したため、大変な苦労をして家族を養ってきた。だから1人娘の仁菜にはそんな思いはさせたくないと思っている。その気持ちはとても分かる。でも、仁菜には仁菜の夢がある。彼女はソラに恋心を抱いていて、彼の力になりたいとチラシ配りを手伝っている。自分でももそう思っていたと思う。でも、ある日自身が撮影したチームの練習動画を、ソラから見てみるように言われる。そして、彼女は自分がチームをサポートすることが大好きであることに気づく。夢というとどうしても"自分"が何かをしなきゃならない気がしてくるけれど、マネージャーという誰かの夢をサポートすることだって、立派な夢。このエピソードが入っていることが良かったと思う。
野村瞬はサッカーの元中学ユースだった。ユースというのがあまりよく分かっていないのだけど、プロ予備軍みたいな感じなのかな? 残念ながら高校ユースには進めず挫折を味わう。入学した修学院高校で演劇部の芝居を見て、部長の小田麻綾のセリフに感激し、演劇部に入部。彼は一生懸命頑張るけれど、麻綾の思うように演じることが出来ない。たった一人の男子部員である瞬に期待する気持ちも大きかったけれど、自分が思う演劇を追求し過ぎて部員が離れていったことに悩む麻綾は、瞬の本当の気持ちに気づいてしまう。麻綾がとった行動は映画などで何度も見てきたことではあるけれど、王道がゆえに感動する。瞬を試合に借りる代わりとして、演劇部の手伝いをしたソラに麻綾が語ったセリフは原作にはない映画オリジナルだそう。脚本も書かれた監督の思いが伝わってくる言葉で感動した。
ソラは子供の頃からサッカーが上手く、中学のサッカー部ではエースだった。でも、最後の試合で大敗。相手のエースはプロ入りするのではないかと言われていた選手。でも、彼は選ばれなかった。その彼に大敗した自分には才能がないと挫折。サッカーを辞めてしまった時期があった。これ、 『ヤング≒アダルト』(感想は
コチラ)の記事に書いた、ある芸人さんの言葉と重なって驚いた。イヤ、パクリっていうことじゃなくて、誰もがこういう挫折というか、身の丈を知るという経験をしているのだろうと思ったから。芸人さんのエピソードは野球だったし、ソラはサッカーだけど、例えばOLちゃんの仕事だって同じ。自分が一生懸命やってもできないことを、軽々とやってのける人がいる、でもその人よりもさらに上手くやってしまう人がいる。上には上がいる。そこで諦めるか、頑張るかはその人次第。諦めずに頑張ってその人以上になる人もいるかもしれないし、なれない人もいる。でも、それがその人の身の丈なのであって、もしかしたら目標設定が高かったのかもしれない。それは決してダメなわけじゃない! 単純に自分には向いていないだけなのかもしれないし・・・
ソラはなでしこジャパンの11番若宮四季と偶然出会い、彼女のおかげでサッカーの楽しさを再認識することになる。サッカーは一人でやるものではないということも・・・ そして、それはソラの夢へと繋がっていく。そして、タイトルにもリンクする。この四季とのエピソードはファンタジックで、この作品の重要な部分なので、詳しく書くのは止めておく! 実は原作はこの四季のエピソードが一番最初なのだそう。以前読んだ片岡監督のインタビュー記事で、映画化するにあたり、四季のエピソードは最後にする必要があったと語っていらした。とっても納得。最後に見せられた方が、ソラがダサいとか熱過ぎるとバカにされ続けても、自分の信念を曲げずに頑張っていたのは、このためだったのか!と感動の度合いも違うし、すっきり納得することが出来る。
ソラの夢は「チャンピオンリーグで優勝し、世界最強チームの1/11になること」 その夢が叶うかは分からないまま映画は終わる。やっとそろった11人。今はその1/11。これから先、別チームの1/11になり、さらに次のステップの1/11になって行くかもしれない。そして、最終的には世界最強チームの1/11になれるかもしれない。でも、もしかしたら普通のサラリーマンになって、草サッカーチームの1/11になるかもしれない。それは誰にも分からない。壮大な夢に向かって努力し、その夢を成し遂げた人もいる。サッカーで言えば「セリエAの10番になる」と小学生の頃作文に書いて、その夢を叶えた本田圭佑選手のように。夢を持ってそれに突き進むのは、何歳になっても出来ること。ただ、壮大な夢を見るのは年齢と共にできなくなってくる。それは身の丈を知っているから。それが大人になることなので、決して諦めじゃない。でも、若いうちは無限の可能性がある。壮大な夢を語っても許される。だから、夢を大きく持って1歩ずつ進んで行けばいいんだよ!と、その背中に向かって言いたくなるようなラスト。とっても清々しい! そして、これは監督の目線でもあるのかも。常に彼らに寄り添うような、温かく見つめるような、そして彼らと同じく1歩踏み出した監督の思いでもあるのかも・・・
キャストはみんな良かった。若い役者さんたちのまだ不器用だけど一生懸命な演技は、人生に不器用で一生懸命な登場人物たちにリンクしていて、とっても良かった。安藤ソラ役の池岡亮介くんと野村瞬役の阿久津慎太郎くんはD-BOYSの方なのだそう。D-BOYSについては全く知らなかったのだけど、ワタナベエンタープライズ所属の若手俳優の方々のグループとのことで、かつては城田優も所属していたのね? なるほど・・・ 夢に向かってゆるぎない信念を持ちながら、穏やかな表情のソラを池岡くんが好演していたと思うし、瞬という繊細な少年を阿久津くんが繊細に演じていたと思う。仁菜の上野優華さんは主題歌も担当。女の子らしい優しさと、芯の強さのある仁菜を厭味なく演じていたと思う。演劇部部長麻綾役の東亜優さん、カメラ女子千夜子の古畑星夏さんも、人目など気にせずに好きなことに邁進する役柄を、不思議ちゃんになることなく演じていて良かった。若宮四季役の竹富聖花さんのスタイルの良さにビックリ!どんだけ脚長いの?!出演シーンは短いけれど、強烈な印象を残した。彼女の存在が全てを変えたのだから、とっても重要な役。そういう意味でも良かったと思う。そして、一番印象に残ったのが工藤阿須加くん。なんと、あの工藤公康元選手の息子さんだそうで「八重の桜」にも出演していたのね?!全然気づいてなかった・・・
今作は息子さんと知って見たけど、最初はやっぱり似てるなくらいの印象だったのに、野球帽被って出てきたらソックリでビックリ∑(*゚ェ゚*) 前半の冷めてる時も良かったけれど、やっぱりあの入部のシーンが良かった! ホントに瞳がキラキラしてた。
ずっと短編映画を撮ってきた片岡監督。この作品も約80分と短めではあるけれど、これが長編デビュー。その分、出来たことも多かっただろうし、逆に制約もあったかもしれない。でも、やっぱり片岡監督の作品だなと思う。登場人物たちを見つめる目線が優しい。そして子供を撮るのが上手い。もしかしたら、予算の問題なのかもしれないけれど、主人公たちが住んでいる家がとっても庶民的なのが印象的。普通のサラリーマン家庭という設定なのに、リビングが10畳近くあるんじゃないか?という映画とかある。やけにインテリアに凝っていたり。でも、部屋の広さが実感できる。上手く言えないけど・・・ 家具とかも豪華過ぎたり、スタイリッシュ過ぎたりしていない。例えばソラの家は母親がパートに出ているわけだから、そんなに豪華な暮らしではないと思う。ソラが寝ているソファの感じからすると6畳くらいの居間。でも、それが普通の家庭だったりする。その感じが良かった。普通の高校生の話だから。片岡監督の作品からいつも感じていたのはそういうリアル感。リアルでない話の時でも、空間がつかめるというか、だからリアルに感じられるというか・・・ そういう感じ・・・ 上手く言えなくてごめん
豆知識としては、仁菜の部屋のぬいぐるみたちは監督の私物だそう。監督の代表作の1つと言えば『くらげくん』 瞬が感動した麻綾の芝居は「くらげの少女」 これは偶然だったそうだけれど、是非入れたいということで、回想シーンとして出てくる。これは監督ファンなら( ̄ー ̄)ニヤリ 『くらげくん』はとっても好きな作品なので、機会があれば見て欲しいなぁ。
今、彼らと同じくらいの年齢の子達は共感する部分が多いと思うし、登場人物たちの親世代の方々は親目線で見れるし、かつて青春時代に夢を追っていた大人たちも感動できる。夢を持つことの大切さを教えてくれる素敵な作品! お友達の弟さんの作品だからで言うのではなく、本当に素敵な作品です! 若い役者さんたちにとっても、監督ご自身にとっても、きっと今だから出来た作品だと思うし、今じゃなきゃ出来ない作品かもしれない。
是非、たくさんの人に見て欲しい作品! オススメ!!( ・Θ・)ゞピヨッ
元野球選手、サッカー選手×2名の方々がカメオ出演しています!←自分は全く分からなかった(o´ェ`o)ゞ
『1/11 じゅういちぶんのいち』Official site
この春一番期待とドキドキで公開を待っていた作品! 以前から応援している片岡翔監督の長編デビュー作品! ドキドキというのは親心のようなもので、決して出来を心配してたわけじゃない! そんな期待とドキドキで胸躍らせて、公開初日に監督のお姉様でお友達のmigちゃんと、tomocoさんと3人で見に行ってきたー




原作は中村尚儁(たかとし)氏の同名コミック。現在もジャンプSQに連載中で、累計60万部を超える大ヒット作品。自身は原作は未読。各話で主役が変わりリンクしていく形式であるということと、サッカー部員の話だけれどサッカー漫画ではないということは知っていたけれど、それ以外の予備知識はほぼなし。今回、脚本も担当された片岡監督は、各話をつなげて1つの作品とすることに苦労されたそうで、2年間かけて脚本を練り上げたのだそう。なので、コミックとは順番が異なっているエピソードもあるそうだけれど、個人的にはそれが成功していると思う。
舞台となるのは修学院高校。原作でもどこの県の学校かは明らかにされていないそうで、どうやら関東圏ではないらしいとのこと。エンドロールによるとロケ地は関東近県だけれど、映画でもどこにあるのかは描かれていない。映画の中では特に言及はなかったように思うけれど、どうやら進学校らしい。そこそこ大きな学校なのに、サッカー部がないのは珍しいなと思ったけれど、進学校だからなのかもしれない。
冒頭から、安藤ソラと篠森仁菜がビラを配り、サッカー部への勧誘をしている。それを冷やかしながら帰宅する4人組のグループ。容姿がよくカッコイイことをしている(つもり)のイケてるグループ。彼らから見れば頭を下げて部員を勧誘するソラたちや、放課後空気イスをして鍛える演劇部員、地面に這いつくばって自分の撮りたい写真を撮る千夜子はダサいってことになるのでしょう。大人になってしまえば、熱くなれるものもなく、誰と付き合うか、友達になるかってことが重要で、人をバカにすることでしか自分を保てない彼らの方こそかわいそうだと思うのだけど、残念ながらスクールカーストでは、容姿がイケている者や、イケている者と友達であるということが、カースト上位になる条件だったりするわけで・・・
そんなスクールカースト頂点にいる凛哉。原作ではかなりチャラいキャラらしいけれど、映画ではそうは描かれていない。この変更は良かったと思う。実は凛哉は中学時代ソラたちと同じように熱い思いで部活に励んでいた。でも、挫折。高校に入ってからは無気力に過ごしていたけれど、逆にその方がカースト上位に行けるのだから複雑な思いがしていたのかもしれない。映画のキャラはそういう風に描かれていたように思うし、工藤阿須加の演技もそうだったように思う。雑誌で素人モデルとして取り上げられても、どこか冷めている感じ。凛哉はあることがきっかけで、サッカー部入部を決意する。このエピソードは青春ぽくて良かった! 大勢にチヤホヤされることがうれしいんじゃなくて、たった一人に認めてもらいたいっていう思い。
凛哉が登校前に校門で部員募集のチラシを配るソラの前で、サッカー部に入部したいと語るシーンは泣けた。そう、自分を変えることは勇気とエネルギーがいる! それは恥ずかしいことのように思ったりする。でも、ソラのようにきちんと見ていてくれる人がいる! ここの凛哉とソラのセリフはとってもよかった!
マネージャー仁菜の父親は、高校時代に部活で辛い思い出がある。高卒で就職したため、大変な苦労をして家族を養ってきた。だから1人娘の仁菜にはそんな思いはさせたくないと思っている。その気持ちはとても分かる。でも、仁菜には仁菜の夢がある。彼女はソラに恋心を抱いていて、彼の力になりたいとチラシ配りを手伝っている。自分でももそう思っていたと思う。でも、ある日自身が撮影したチームの練習動画を、ソラから見てみるように言われる。そして、彼女は自分がチームをサポートすることが大好きであることに気づく。夢というとどうしても"自分"が何かをしなきゃならない気がしてくるけれど、マネージャーという誰かの夢をサポートすることだって、立派な夢。このエピソードが入っていることが良かったと思う。
野村瞬はサッカーの元中学ユースだった。ユースというのがあまりよく分かっていないのだけど、プロ予備軍みたいな感じなのかな? 残念ながら高校ユースには進めず挫折を味わう。入学した修学院高校で演劇部の芝居を見て、部長の小田麻綾のセリフに感激し、演劇部に入部。彼は一生懸命頑張るけれど、麻綾の思うように演じることが出来ない。たった一人の男子部員である瞬に期待する気持ちも大きかったけれど、自分が思う演劇を追求し過ぎて部員が離れていったことに悩む麻綾は、瞬の本当の気持ちに気づいてしまう。麻綾がとった行動は映画などで何度も見てきたことではあるけれど、王道がゆえに感動する。瞬を試合に借りる代わりとして、演劇部の手伝いをしたソラに麻綾が語ったセリフは原作にはない映画オリジナルだそう。脚本も書かれた監督の思いが伝わってくる言葉で感動した。
ソラは子供の頃からサッカーが上手く、中学のサッカー部ではエースだった。でも、最後の試合で大敗。相手のエースはプロ入りするのではないかと言われていた選手。でも、彼は選ばれなかった。その彼に大敗した自分には才能がないと挫折。サッカーを辞めてしまった時期があった。これ、 『ヤング≒アダルト』(感想は

ソラはなでしこジャパンの11番若宮四季と偶然出会い、彼女のおかげでサッカーの楽しさを再認識することになる。サッカーは一人でやるものではないということも・・・ そして、それはソラの夢へと繋がっていく。そして、タイトルにもリンクする。この四季とのエピソードはファンタジックで、この作品の重要な部分なので、詳しく書くのは止めておく! 実は原作はこの四季のエピソードが一番最初なのだそう。以前読んだ片岡監督のインタビュー記事で、映画化するにあたり、四季のエピソードは最後にする必要があったと語っていらした。とっても納得。最後に見せられた方が、ソラがダサいとか熱過ぎるとバカにされ続けても、自分の信念を曲げずに頑張っていたのは、このためだったのか!と感動の度合いも違うし、すっきり納得することが出来る。
ソラの夢は「チャンピオンリーグで優勝し、世界最強チームの1/11になること」 その夢が叶うかは分からないまま映画は終わる。やっとそろった11人。今はその1/11。これから先、別チームの1/11になり、さらに次のステップの1/11になって行くかもしれない。そして、最終的には世界最強チームの1/11になれるかもしれない。でも、もしかしたら普通のサラリーマンになって、草サッカーチームの1/11になるかもしれない。それは誰にも分からない。壮大な夢に向かって努力し、その夢を成し遂げた人もいる。サッカーで言えば「セリエAの10番になる」と小学生の頃作文に書いて、その夢を叶えた本田圭佑選手のように。夢を持ってそれに突き進むのは、何歳になっても出来ること。ただ、壮大な夢を見るのは年齢と共にできなくなってくる。それは身の丈を知っているから。それが大人になることなので、決して諦めじゃない。でも、若いうちは無限の可能性がある。壮大な夢を語っても許される。だから、夢を大きく持って1歩ずつ進んで行けばいいんだよ!と、その背中に向かって言いたくなるようなラスト。とっても清々しい! そして、これは監督の目線でもあるのかも。常に彼らに寄り添うような、温かく見つめるような、そして彼らと同じく1歩踏み出した監督の思いでもあるのかも・・・
キャストはみんな良かった。若い役者さんたちのまだ不器用だけど一生懸命な演技は、人生に不器用で一生懸命な登場人物たちにリンクしていて、とっても良かった。安藤ソラ役の池岡亮介くんと野村瞬役の阿久津慎太郎くんはD-BOYSの方なのだそう。D-BOYSについては全く知らなかったのだけど、ワタナベエンタープライズ所属の若手俳優の方々のグループとのことで、かつては城田優も所属していたのね? なるほど・・・ 夢に向かってゆるぎない信念を持ちながら、穏やかな表情のソラを池岡くんが好演していたと思うし、瞬という繊細な少年を阿久津くんが繊細に演じていたと思う。仁菜の上野優華さんは主題歌も担当。女の子らしい優しさと、芯の強さのある仁菜を厭味なく演じていたと思う。演劇部部長麻綾役の東亜優さん、カメラ女子千夜子の古畑星夏さんも、人目など気にせずに好きなことに邁進する役柄を、不思議ちゃんになることなく演じていて良かった。若宮四季役の竹富聖花さんのスタイルの良さにビックリ!どんだけ脚長いの?!出演シーンは短いけれど、強烈な印象を残した。彼女の存在が全てを変えたのだから、とっても重要な役。そういう意味でも良かったと思う。そして、一番印象に残ったのが工藤阿須加くん。なんと、あの工藤公康元選手の息子さんだそうで「八重の桜」にも出演していたのね?!全然気づいてなかった・・・

ずっと短編映画を撮ってきた片岡監督。この作品も約80分と短めではあるけれど、これが長編デビュー。その分、出来たことも多かっただろうし、逆に制約もあったかもしれない。でも、やっぱり片岡監督の作品だなと思う。登場人物たちを見つめる目線が優しい。そして子供を撮るのが上手い。もしかしたら、予算の問題なのかもしれないけれど、主人公たちが住んでいる家がとっても庶民的なのが印象的。普通のサラリーマン家庭という設定なのに、リビングが10畳近くあるんじゃないか?という映画とかある。やけにインテリアに凝っていたり。でも、部屋の広さが実感できる。上手く言えないけど・・・ 家具とかも豪華過ぎたり、スタイリッシュ過ぎたりしていない。例えばソラの家は母親がパートに出ているわけだから、そんなに豪華な暮らしではないと思う。ソラが寝ているソファの感じからすると6畳くらいの居間。でも、それが普通の家庭だったりする。その感じが良かった。普通の高校生の話だから。片岡監督の作品からいつも感じていたのはそういうリアル感。リアルでない話の時でも、空間がつかめるというか、だからリアルに感じられるというか・・・ そういう感じ・・・ 上手く言えなくてごめん

豆知識としては、仁菜の部屋のぬいぐるみたちは監督の私物だそう。監督の代表作の1つと言えば『くらげくん』 瞬が感動した麻綾の芝居は「くらげの少女」 これは偶然だったそうだけれど、是非入れたいということで、回想シーンとして出てくる。これは監督ファンなら( ̄ー ̄)ニヤリ 『くらげくん』はとっても好きな作品なので、機会があれば見て欲しいなぁ。
今、彼らと同じくらいの年齢の子達は共感する部分が多いと思うし、登場人物たちの親世代の方々は親目線で見れるし、かつて青春時代に夢を追っていた大人たちも感動できる。夢を持つことの大切さを教えてくれる素敵な作品! お友達の弟さんの作品だからで言うのではなく、本当に素敵な作品です! 若い役者さんたちにとっても、監督ご自身にとっても、きっと今だから出来た作品だと思うし、今じゃなきゃ出来ない作品かもしれない。
是非、たくさんの人に見て欲しい作品! オススメ!!( ・Θ・)ゞピヨッ

