白隠和尚のブログ

今日より明日が幸せでありますように。好奇心旺盛な70代のブログ。

[銭湯]にて 兄を想う

2017-02-17 13:15:51 | 日記
私は銭湯が好きだ。特に冬場は脱衣場の温かい銭湯に限る。ゆったりした気分で衣服を脱いでおもむろに湯舟に浸かる、寒い日の最高の贅沢である。内風呂ではこうはいかない。

かれこれ70年になるか、その頃、風呂と言えば銭湯の事だった。自宅に風呂があるのは御大尽と言われる人達だけで、普通の家庭は銭湯だった。
当時、銭湯は湯を提供するだけで湯加減は客の好みで自由だった。
開店直後の湯を一番風呂と言ったがこれがめっぽう熱かった。常連客が
水を足して湯加減を調節するのだが、それも熱目だった。時々は湯で
真っ赤になった赤入道が壁の向こうの三助に向かって「ぬるいぞー」と大声を掛けた。
私は隙を見ては蛇口を捻って水を入れてよく怒られた

私は頭を洗われることと、肩まで湯に浸かることが嫌だった。兄は湯冷めするからと私に首まで湯に浸かる事を命令してから数を数えさせた。
私は許しが出ると音を立てて湯舟を飛び出すのが常だった。こんな私を見て兄は「カラスの行水」と言って笑っていた。

帰りはいつも身体中が火照っていた。兄は片手に手拭いを容れた洗面具を持ち、空いた方で私を引き、下駄を鳴らして暗闇を家路に向かった。
私が穴ぼこに躓いて下駄の鼻緒が切れると兄はおぶってくれた。
時々はミカン水を買ってくれた。これは砂糖かサッカリンで甘味をつけただけの飲物で3円だった。この頃ラムネは10円したと思う。

兄は私より7歳年上だったが私には大きくて強い憧れだった。時々は意地悪されてよく泣かされたが、大体は上手に遊んでくれた。友達の中に兄と一緒に入っていくと、自分まで強くなった気がした。

この兄も鬼籍に入って久しい。私の兄はもう一人になってしまった。


お わ り

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