白隠和尚のブログ

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「マエストロ」 礼讚

2017-03-23 06:10:50 | 芸術について

昨年11月にドイツの指揮者H・ブロムシュタットとバンベルク交響楽団による名古屋公演があり、そのテレビ録画を改めて聴いた。曲目は「運命」と「田園」だ。
指揮者・ブロムシュタット(以下マエストロと表記)は今年90才、超のつく御高齢でありながら全ての曲目をすべて立ったまま、しかもタクトを手にせず指先と全身でオーケストラを指揮した。無論暗譜である。その若々しい指揮ぶりに驚嘆したのは私だけではあるまい。

演奏もまたマエストロの称号を冠するに相応しい素晴らしい名演だった。特に 「田園」はマエストロとオーケストラの呼吸がぴったりで楽曲に身を委ねて楽しげで、その音色の美しさは20世紀に活躍した大指揮者を凌ぐ名演と云っても良いのではないか。

演奏会の合間に収録されたインタビューもまた、マエストロの謙虚な人柄と豊かな音楽経験に培われた深い洞察に満ちたもので感銘を受けた。
以下はその要旨である。

◇ベートーベンについて
・彼は音画ではない。自然を模写していない
・彼は人が自然から受けた感情を音楽的に表現している
・彼は教会に行かなかったが敬虔な人だった
・彼は胆汁質(激情的で怒りっぽい気質)で意志が強く決然とした
性格だった。人はそこに惹かれる
・彼は音楽で自分を語っていない
・彼は悩み多き人間で聴力が衰え、この2曲を作曲した時(1805~1806年)はほとんど聴こえなかった
・彼は耳ではなく頭で音楽を聴いて作曲を続けた
・しかし、自分自身を語らず語るのは人類の運命だった。

◇指揮法について
人間は年を重ねる程に自由になれる。経験を積めば理想にも縛られなくもなる。若いときは手本となる人から大きな影響を受けるもの、私も先輩を崇拝して模倣はしないものの影響を受けた。誰でもその理想像に近づけようとするが、その理想像はだんだん色褪せてくる。


お わ り


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