晴れ、14度、67%
今でこそ、ピエールエルメだとか、まあフランスのお菓子屋さんのケーキまでが買える香港ですが、以前は、パンヤさんにしかケーキはありませんでした。唯一、ハイエンドなケーキは、ホテルのケーキです。パンだって、今はカイザーのパンが歩いて行って買えるような香港です。この香港、ちょっとお腹が空けば、麺などを小食といって食べます。主食は中国の南ですから、当然お米です。ところが、これまたパンが好きな人たちときています。小さな街のパン屋さんが、街の至る所にありました。夏ともなれば、パン屋の奥では上半身裸のおじさんたちが汗を流してパンを焼いています。そして、これまた甘いものがお好きな香港人、小ぶりなケーキを何かと召し上がります。その代表格は、エッグタルトでしょう。焦げ目が付いたポルトガルスタイルではありません。きれいなプリンのようなタルトです。飲茶にも、少し暖かいエッグタルトが出てきます。
最近は、香港の人たちも口が肥えて来て、街の小さなパン屋さんは、どんどん消えて行きました。まだやっているパン屋だって、並んでいるパンやケーキが以前とは変わってきました。その中で、もう殆ど見かけなくなったケーキが、見出し写真のロールケーキです。名前?名前なんて付いてません。強いていえば、寄せ集めロールケーキです。
寄せ集め、ケーキを作ると端を切り落としたりしてケーキのくずが出ます。このいろんなケーキのくずを薄いロールで巻いたのがこのケーキです。つなぎはバタークリーム、いえ、正確には塩入りのマーガリンクリームです。このマーガリンの塩味といろんなケーキのくずと混ざって、なんか笑いが出て来るような美味しさです。急に懐かしくなって、食べたくなります。探しますがなかなか見つかりません。懐かしく思うのは、私ばかりでなく主人もです。やっと、見つけました。おじいさんとおばさん二人でやっている小さなパン屋さん。昔は賑やかだったフェリー乗り場の近くの店です。今はもうフェリーも廃船となりました。
まだ、このココナッツタルトはあちこちで見られます。エッグタルト程有名ではありませんが、ココナッツのシュレッドがたくさん入ったこのタルトは私の好物です。
今、香港に住む日本人の方達、こんなケーキなんか食べた事がないかもしれません。寄せ集めロールケーキは、きっと、私の食べ物の記憶にずっと住み続けています。