今年の見納めの映画を見る時間はなかった。
その代わりに、今年読んだ本の中で最も印象に残った本を2冊。
両方とも、最近の憲法改正論議にかかわるものである。
1冊目は、樋口陽一・小林節『「憲法改正」の真実』、もう1冊は松竹伸幸『改憲的護憲論』。ともに集英社新書。
私は、子どもの頃から非武装中立論者のつもりであったが、そして第9条と自衛隊が両立しがたい存在であるとともに、少なくとも災害時には国民の生命を守るために最も期待できる組織であるとも思ってきた。
さらに、ソ連・中国かアメリカかどちらか一方を選べと言われれば、間違いなくアメリカを選んだと思う。
しかし、日米安保条約が日本の安全を守ったという一面もあるとは思う一方、ベトナムや沖縄に対するアメリカ(そしてそれに追随する日本政府)の態度には大いに疑問を持ってきた。
私のアメリカとの関係で最も古い事件の記憶は、沖縄でアメリカ兵が屑鉄ひろいをしていた日本人女性を射殺したジラード事件である。
私は、ジラード事件を記憶する最後の世代かもしれない。
そのような私の気持ちを整理する上で、この2冊は最も適切な事実を紹介し、方向性を示唆してくれた。
両書の立論のすべてに賛成という訳ではないが、そして最終的に現在の第9条を維持すべきか、何らかの改正を加えるべきかについての結論を導いたわけではないが、両書がともに主張するように、第9条と自衛隊の関係を議論しなければならないこと、安保法制は違憲であること、真摯な改正論者の意見には耳を傾けなければいけないこと、しかし現在の政権のもとでの改正は決して行うべきではないことについては賛同したい。
小林節がリベラルに思え、内閣法制局長官が自制的に思える時代が来るなどとは大学生の頃は想像だにしなかったが、成長したのか退化したのか知らないが、以上が私の今の偽らざる心境である。
こんなことを書こうという気になったのは、昨日見た“プライベート・ライアン”の影響かもしれない。
その意味では、今年最後の映画が“プライベート・ライアン”でもよかったということだろう。
今年も、お付き合いくださった読者の方に感謝します。良いお年をお迎えください。
2017/12/31 記