年下研究

『けいおん!!』トンデモコジツケ連鎖中!涼宮ハルヒの憂鬱の謎解きコジツケの履歴保管庫。

SOS団到着…風前の灯

2008-02-05 02:19:15 | 涼宮ハルヒ
…まあ、こうなるだろうと。
柄谷行人の説では、島崎藤村が「破戒」で進む方向を示した近代日本文学の方向を、田山花袋が「蒲団」で私小説の方向に誤らせたというような解釈が日本文学史の通俗的な見方らしいです。まあ、細かいところはネタで使うつもりですが。
とりあえず、柄谷に触発されて「破戒」を読んでみたのですが、これが私小説を批判する立場の人が理想とする小説、「西洋的な意味での小説」なんですかね。
「破戒」は主人公の成長を描いているので、万が一「主人公の成長を描いていないからダメ」しか言わない批評家がいたらバイブルでしょう。
父親の言いつけを守って、差別される出自を隠していた教師が、自分の運命を切り開くために父の言いつけを「破戒」して、自分の正体を「告白」するのがクライマックス、という展開なのですが、主人公、言葉の上では「差別されてる私が、いままで先生なんかやっててすみません」と謝るんですよね。絶望先生の加賀愛の加害妄想ネタみたいですが。
「残したい江戸仕草でも」、何かトラブルが有ったら当事者の両方が謝れば丸く収まる、というのがあって、江戸時代の日本の美俗なのかもしれません。地方にはそれがまだ残っていた、明治39年の、長野県はそうだったのかもしれません。
ただ、柄谷は「勝者は告白しない、敗者は告白する、何故か」と問うていて、そこには「倒錯した権力欲」があると考えているようです。
これを適用すると、主人公の謝罪は、「謝罪に見せかけた攻撃」であり、その裏には、「謝罪させてしまったという罪悪感を相手に与えることで、苦労せずに口先だけで相手より心理的優位に立とう」という「肥大した自我=支配欲」が有るということになります。楽しようってのがこわいですね。
今までいじめられてたいじめられっこの恨みが屈折させてしまったんですね。逆差別の温床かも。加賀愛さんのことを想起してしまったのはもちろん、ハルヒの古泉やみくるの事を考えてしまいました。
「破戒」の読後感は悪くて、最初は、悪くも無いのに謝ろうだなんて嫌な男だと当時の事情を忘れてただただ主人公を嫌悪してしまいました。それで丸く収まると思う田舎者社会も嫌な感じです。余計なことに柄谷の邪推を想起して、主人公はなんて嘘つきの男だと改めて嫌悪してしまいました。フィクションで熱くなる自分も嫌ですが。
ただ、一晩寝て、あれは敗戦と高度成長で消えてしまった感覚だと仮定したら優しい気持ちになりました。私の実家の方にはまだ残ってるなんてのは百も承知の上ですよ。加賀愛さんの心の闇。
面白かったハルヒ同人紹介
えんぴつ・コ居間ケイ「ねこそうしつ」:コピー本ですが、充実した読み応えです。佐々木団も登場するSOS団大混乱のえんぴつさんの記憶喪失キョンネタ、キョンのために大慌てのSOS団の面々が可愛らしいです。珍しく暴力的なみくる、きょこたんの怯えっぷり、も可愛いですが、他の同人ではこういう森さんの存在感は意外と無いですね。笑いました。チョイ役の九曜さんの食事シーンが衝撃的に可愛いです。
コ居間ケイさんの世界中猫耳ネタ、笑いから恥ずかしまで。ガチ古泉がなんとも。統合思念体も良い性格してます。変な話ですが、終盤のハルヒとキョンのデレシーンを見て「人生勉強」になりました。ラブコメの本当に上手い作家さんはセリフが重い作家さんなのかも。こういうさくさく少ない線で抑制的に描かれたキャラ造形は好きです。ちゃんとキョンは凛々しくハルヒは可愛らしいですし。
漫画的約束に則って表情豊かにどたばたを演出するえんぴつさんと対照的に、コ居間ケイさんは映画的で、キャラ自体は地味な筆致でもカットの切り替えで笑えるシーンもハートフルなシーンも演出していて上手いですね。絵コンテから漫画へ、という応用をするアニメ畑出身漫画家もいますから、そういう系譜なのかも。
SENTIMENTALCREATION「キタコウバカップル」:あいかわらず恥ずかしネタが悶え面白いですが、展開の底にある「5組の女社会」がこれまた良い感じです。こういう作品世界を使いこなしてるという作品は好きですね。
ここのキョンハルヒは一線を越えてる設定なので、そう思いながら読むとまた改めて恥ずかしいです。どんどんやってください!
設定の中に事件の糸口を発見する着眼点の鋭さは、キャラへの愛の深さかと思います。やる夫の学んだ物語創作法は、こういう妄想からのドラマ作りとは対照的ですね。雪ダルマ式にネタを膨らましてゆく機構は内在していないように思います。まあ、あくまであれは入門なんですが。
swallowtailcode「parfectst@&wondesl@nd」:4コマからショートストーリーまで詰まった本。鉛筆描きですが、漫画に必要な技法はやれてます。キャラのデザインは好みの可愛さですし、表情も豊かで、描き続けてれば漫画版を軽く超えちゃうと思います。
サービスカットも間抜けな展開もマジメなテーマも器用に描いていて好きなタイプですね。
ハレハレダンスラストの決めポーズ扉から起こし、映画予告編を下敷きにしたop漫画から本文、「激奏」の舞台袖ネタにつないで、ラキスタop群舞ネタカットで締めるという構造、単に1冊の本だから一体性があるというのではなく、こういう手の込んだ統一コンセプトの本を作ろうと思い、実行できるという力は将来有望です。
さーふみーろ「涼宮ハルヒのお茶請」:ここも統一コンセプトの凄い本ですが、swallowtailcodeが扉やop.ed漫画の統一感なのに対し、ここはページのフォーマットの編集デザイン力ですね。
1ページ漫画を駆使してます。連作も有り。アナログ漫画のフツーを破格してるのが面白いので頑張って欲しいです。妙なノリのキャラのやりとりやたまに読者置いてけぼりの展開もいい感じですが、盛り込まれてる情報が勉強になるのもお得。
なっとうねぎ「あやまれ!!長門さんにあやまれ!!」:長門さんの独占欲、いいですね。キョンのフォローが優しい。こういうネタ、私も描きたいです。キョン妹好きな作者らしく、妙に色気があります。私もこういうの描きたいですね。
オタクを卒業するとか書いておられますが、勿体無い。ご自身の絵も嫌いな様子ですが、これだけ描けるなら、ハルヒのアニメ2期終了まで描き続けてみれば良いのにと思います。妹ちゃんのサービスシーンもあるかもしれないし。
妹ちゃんネタで1冊出すまで続けてみたらいかがでしょうか。
最近の一連のコンピ研部長氏ネタでも描きましたが、「人はパンのみにて生くるに非ず」というのが本当なら、筆を折ってしまったら、描く以外で解決する術の無い心理状態に陥った時の対抗手段が無いので、万が一に備えてゆるゆるでも続けておられるのが良かろうと思います。
まだまだ続きます。