僕らはみんな生きている♪

生きているから顔がある。花や葉っぱ、酒の肴と独り呑み、ぼっち飯料理、なんちゃって小説みたいなもの…

かすかな希望

2014年09月23日 | SF小説ハートマン









直径13メートルのパラボラアンテナは
近くで見上げると巨大な傘だ

しかし宇宙から見るとそれは
針の先の点にもならない

たまたま研修に来ていた学生が
不思議な信号を捉えたのは偶然だった
彼女はハートマンの存在などまったく知らなかったのだから










JAXAは地球を回る8台の衛星と国際宇宙ステーションを行き来するコウノトリを運営している

鳩山町のひっそりとした山間にある地球観測施設の
通常のミッションとは数百メートル離れた目立たない建物の中で
セクションの解析が行われていることは誰も知らない










学生の発見した信号は良くあるバグとして処理されたが
データを受け取ったセクションの担当者は
それがハートマンからのものだとすぐに気づいた









大型シップで銀河間航行に出発してからもう数年が経過していた
ブラックホールの内側を跳ねていく屈折航行で進んでいる間は
まったく通信はできない

セクションは全員が突然忙しくなった
だが皆その表情は明るい

ある者はモニターに向かい
ある者は耳を澄ました

それぞれが自分の持ち場に集中する中
ひとり屋上から空をじっと見つめる女性がいた


「宇宙(ひろし)君、どこにいるの?」

「星見(ほしみ)ちゃん、僕が見えるかい?」



























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