goo blog サービス終了のお知らせ 

僕らはみんな生きている♪

生きているから顔がある。花や葉っぱ、酒の肴と独り呑み、ぼっち飯料理、なんちゃって小説みたいなもの…

前夜

2007年01月09日 | SF小説ハートマン
「お帰りなさい。お父さん今日は早いんだね。」
「宇宙(ひろし)ただ今。おっ、今日は焼き肉か。」
「どうして分かるの?何かにおう?」
玄関でお父さんが笑っている。

「ママー、お父さん帰ってきたよー。焼き肉だって言ってるよー。」
「あらぁ早いのねぇ、お帰りなさい。」
「お父さんが、今日は焼き肉だって言ってるけど本当なの?」
「そうよ、あなたが切ってくれた玉ねぎも沢山焼くわよ。」
「どうして分かるんだろうね。」
「さっき電話で言ったからじゃない?」
「えーっなぁんだぁ、初めっから知ってたのかぁ。」

「はははっ超能力かと思ったか?」
お父さんがキッチンをのぞき込んでウインクした。
「いいけどさ、もうご飯の準備するよ。」
「あぁ、そうしとくれ、お父さんはシャワー浴びてくるから。電車がすごく混んでてね、マフラーはずしたんだけど汗かいちゃったよ。」

明日はいよいよ僕の試験の日だ。高原大学附属、ちょっと心配だけど吉田先生も『宇宙君はいつも通りすれば大丈夫です』って言ってたし…。

「宇宙、なにぼんやりしてるの。こっちに来て手伝って。」
「はーい。」
「ほら、このお肉朝からマーマレード入りのママ特性ダレに漬けといたから、おいしいわよぅ。でも、あなたは玉ねぎだけでいいんだっけ?」
「お肉だってもちろん食べるよ。後さぁアレも作ってよね。」
「アレって?」
「アレだよ、お好み焼きの。」
「あっそうだったわね。あれ美味しいものね。じゃ小麦粉出すから宇宙が作ってくれる?」
「うん、いいよ。お父さんが来るまでに作ろう。」

何も具が入っていないお好み焼きを薄く焼いて餃子の皮みたいにしてお肉を乗せて食べると美味しいんだ。玉ねぎも大好きだけど、これも大好き。

「ママぁ、もうホットプレートのスイッチ入れていい?」
「そうね、そろそろパパも来るかしらね。」
「パパじゃないでしょ。」
「あら、パパって言っちゃったかしら。」
「ママいつも言ってるよ。お父さんって言って下さいって吉田先生が言ってたでしょ。」
「宇宙はママって言ってていいの?」
「僕は面接ないからいいんだよ。」
「はいはい、分かったわ。はい、小麦粉ね。スプーンは自分で出してね。」

鼻歌なんか歌っちゃってママは嬉しそうだった。もちろん僕もだ。
コメント (7)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ワープ

2006年12月19日 | SF小説ハートマン
カウントが0になった瞬間シートに押しつけられる強い加速度を感じた。だがそれはほんの一瞬だけで、すぐに浮き上がり、続いて落ちていく感覚になった。体中の血液が心臓のポンプの力だけで移動する無重力状態だ。

通常スペースギアの室内は床面に対して常に1Gの重力が得られるように調整されている。それは宇宙空間を移動中でも、強大な引力で飛来物を捕らえようとしている大きな惑星の軌道をすり抜ける時も常に同じ状態に保たれている。重力加速度排斥システムの働きだ。
コンソールパネルを見ると、スイッチはオンのままになっている。

「ワープ中は無重力なんですね」
「そうなんだ、3次元の空間を飛び越してしまうからね」
「トンネルですか?」
「いやそうではない。空間の上を飛び跳ねていると言った方がいいだろう。」
「空間の上ですか?」

「宇宙(ひろし)君は川に石を投げたことはあるかな。」
「はい、ちいさい頃。あれは平べったくて丸い形の石がよく跳ねるんです。」
「ワープは空間を移動するトンネルと考えていた時もあったが、今は川の上を飛び跳ねていると考えた方が分かりやすいんだ。」
「空間の外を飛び跳ねているんですか?」

「前に光の速さについて話したね。」
「はい、どの状態でもいつも同じ速さで、何よりも早い。」
「光は屈折したり反射することも知ってるね。」
「はい、プリズムやコップの水で簡単な実験ができます。」
「そうだ。空気中からガラスや水に入ったり出たりする時に光は屈折する。」
「反射もします。」

「それだよ。宇宙君は勘がいいね。ガラスだと42度、水だと49度以上で光は全反射する。3次元空間の境界面に物体を計算通りの角度でぶつけるとそれと同じような事が起こるんだ。」      つづく
コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

DNAのプログラム

2006年12月12日 | SF小説ハートマン
DNAを持つ生命体は皆その体に膨大なメモリーを受け継いでいる、電気的な処理をするコンピュータはプラスとマイナスの組み合わせで作業を行うが、DNAはアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)の4種類の組み合わせでメモリーされ、同時に実行プログラムも自動処理される。

セクションの研究者達が生物の成長に直接関係のないものとされていた一部のDNAに、プログラムをパフ(始動)させるスイッチがあることを発見してまだ数年しか経っていない。だが研究は飛躍的に進み、使われていないと思われていたDNAの全てが未知のプログラムに使われているらしいことが解ってきた。

まだ初期の段階だが、DNAの組み替えによって簡単なプログラムが実行できるようになった。20世紀の終わりに始まった遺伝子操作は子孫の形を作り変える、いわゆるデザインチャイルドに突き進んだが、倫理的大失敗からその方向を変換し、メッセージメモリーの研究へ向かった。

宇宙(ひろし)へのメッセージは将来セクションがその方法を確立したことを教えてくれている。
コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

種のひみつ

2006年12月11日 | SF小説ハートマン
ハートマンは長いお話です。ブログ左側のカテゴリから「SF小説ハートマン①」を選択していただき、最初から読んでいただくと少しは面白いかも知れません。。。

宇宙(ひろし)はセクションの資料室に籠もりメモリの項目を閲覧していた。トントについて知りたかったからだ。フウセンカズラのことが分かれば、きっとトントのことも分かるに違いないという思いがあった。

「トント」「カメムシ」のキーワードではヒットしなかった。銀河のあちこちでハートマンをナビゲートするものは多種多様の生き物だからかも知れない。あきらめかけた時、メモリのカテゴリーの中に「ふうせんかずら」を発見した。

メモリに関するファイルは何層にも積み上がったフォルダーに分類されていた。根気よく探っていく。10分、20分、時間が経つのも忘れて次々にファイルを開いてみた。
そしてついに見つけた。教育補助生物の記録、トントだ。宇宙が眠りについた後、トントは種のメッセージを使い、バイオリストコンピュータの調整を行っていた。それが宇宙の体験した夢だ。
種についての記録もあった。それは外部メモリーであり、未来からのメッセージを受信する通信用モデムの役を果たす。

特殊な配列のDNAがメモリーの機能を持っていることはずいぶん前から分かっていることだ。DNAを持つ生命体は皆その体にメモリーを受け継いでいる。生命体が持つDNAの解析はほぼ終了している。外部からの刺激によってメモリを読み込むことも可能になった。だが情報を書き込む方法については未だ解明されていない。この種のを分析することで答えが見つかるかも知れない。大体そんな内容の記述だった。   つづく
コメント (13)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

蘇生

2006年12月08日 | SF小説ハートマン
半冷凍状態で搬入されたミリンダに蘇生術が施された。
衣服を全て取り去られたミリンダの体はニスを塗る前のマホガニーの様に艶のない褐色だった。鋭い反射神経によって弾けるいつものしなやかさも感じられなかった。だが柔らかな弾力まで失ってしまった訳ではなかった。

それは未だ明らかに生きていた。
医師の滅菌した指と検査用の器具が体のあちこちをはい回る度に、その部分だけが他の組織とは関係なく反応し、蘇生の可能性を示していた。

「いいぞ、始めろ。」

合図と共に数体のオペロイドが一斉に触手を伸ばし、ミリンダの体にケーブルを打ち込んでいく。
数分後、体のいたるところに取り付けられたケーブルが、血液を、神経を、筋肉を、生かしておくために黙々と働いていた。

首の傷にはそこだけで数十本のケーブルと、その先端に取り付けられた医療用ナノマシンがプログラムに従い着実に作業を続けている。声帯を人工物に置き換え、組織の再構築をすすめているのだ。

傷は声帯と気道の大半を押しつぶしていた。あとほんの少し力が加えられていたら、恐らく脊椎が延髄を突き破り最先端医療をもってしても蘇生は難しかったに違いない。

文字通りミリンダは命を拾った。しかし本当に拾ったのはFOXに通常の3倍の報酬を渡して買い取った雇い主の方かも知れなかった。      つづく
コメント (22)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ミリンダ…運命

2006年12月06日 | SF小説ハートマン
ミリンダはぴくりとも動かない。
生命維持装置につながれてはいるが、動作の度にバフーバフーと音を立てる呼吸補助装置と、常にカタカタと震えている血液循環装置だけの旧式のものだ。モニターは力なく不規則な心臓のパルスだけを表示している。

喉に巻かれた包帯らしき物はどす黒く変色した血液で半ば固まり、なおシーツを赤く濡らし続けている。出血は続いている。この状態が続けばあと数時間で致死量の血液が流れ出てしまうだろう。

突然荒々しくドアが開けられ、数人のコマンダーがストレッチャーを押して飛び込んできた。医師らしき一人が瞳孔と首の様子を手早くチェックし、コマンダーにてきぱきと指示を出す。数本の薬剤が体内に注入され、包帯を切り取られむき出しになった喉の傷に止血剤がスプレーされた。

ストレッチャーの左右から透明なカバーが迫り出してきてミリンダの体を閉じこめると、コマンダーはニヤリと笑い数個のボタンを操作した。
小さな数字が光電管に表示され、カウントを始めると、足元から吹き出した乳白色のガスがミリンダの全身を包んだ。  つづく
コメント (14)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

フォックスハンター

2006年12月04日 | SF小説ハートマン
「いや、そんなことはない。バイオリストコンピュータの潜在能力は未知だ。今回の訓練もデータとして整理されたはずだから次はどうなるか分からないよ。<T-3>も昔の武器で攻撃しようなんて、かなり追い込まれていると考えてもいいかも知れないぞ。」

「通常のビーム砲に頼らないで僕も少し研究してみます。」

「その気なら少しフォックスハンターの事を調べてみるといいかも知れないな。」
「フォックスハンターって何ですか?」

「そうか、宇宙君はフォックスハンターを知らなかったな。セクションでミリンダのことを聞いてみるといい。きっと何かの役に立つだろう。」
「フォックスハンターのミリンダですね。覚えておきます。女性ですよね。どんな方なんですか?」
「ま、それは会ってからのお楽しみだ。」

宇宙は教官の指示を受けてフォックスハンターについての資料を調べてみた。活動の内容に関してはよく分かったが、肝心のミリンダに会うことはできなかった。フォックスハンター達の所在はセクションでも分からず、向こうから定期的に入る連絡を待つしかなかった。

活動の実態が分かってくるにつれ、彼女らはハートマンにとって無くてはならないものだと分かった。その意味で収穫は充分満足できるものだったと言えるだろう。

しかし数年後に運命的な出会いが待っていることなど知る由もなかった。
つづく
コメント (10)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

<T-3>

2006年12月02日 | SF小説ハートマン
「では少し難しい質問をしよう。雷と雨はどちらも空から落ちてくるが、雷と雨はどこが違うかな?」
「違うって、全然違うでしょう。雷は電気だし、雨は水だし。」

「それだよ宇宙君。」
「えっ?」
「ビーム砲とガトリング砲だ。」
「・・・・・」

「雷のエネルギーは地下のプロトンサーキットに蓄電され、落雷の危険がある地区にそれを放出することで中和させることができる。この発明で活動範囲が広がった惑星は多いはずだ。」

「雨が降ったら屋根の下に入るか傘をさすんですね。うん、分かりました!電気的エネルギーのバリアーではダメなんだ。」
「そうだ宇宙君、今回使われたガトリング砲は当時ファランクスと呼ばれていたものだ。多少手を加えたが1分間に10000発程の金属弾を発射する。近づければそのうち2-3発は当たるだろう。それで充分だ。」

「宇宙空間で船体に穴があいたら致命的ですね。」
「と言うわけだ、宇宙(ひろし)君。射程内まで接近されなければ全然問題ないのだが。」
「敵に攪乱されました。」
「そうだったね。通常こんなに接近することはあり得ない。敵にとってもリスクが大きいからだ。」
「ということは、ぼくが見限られたってことですね。」
「そうゆうことになるな。」

「あの攻撃機に乗っていたのは誰だったんですか?」
「うーん、あれは<T-3>というサプライチームのスーパーシリコンマシンだ。脳内コンピュータではない。だから宇宙(ひろし)君バイオリストコンピュータとは考え方が違うようだ。だが戦闘専門機だからね、百戦錬磨と言っていいだろう。」

「かなわない訳ですね。」    つづく
コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

バリアー

2006年11月29日 | SF小説ハートマン
「宇宙君のバリアーは完全だったよ。」
「えっ?じゃあなぜ…、そうか、新しい周波数のビームだったんですね。」

「いや、そうではない。バリアーは出力60%で全ての周波数に対応するようになっている。」
「そうすると僕のバリヤーはなぜダメだったんですか?」

「20ミリガトリング砲だ。」
「やっぱり新しい武器を試したんですね。」

「ガトリング砲は19世紀に使われた化石みたいな武器だ。金属の弾丸をぶつけることで敵を破壊する。」
「そんなものでどうして出力全開のバリアーを破れるんですか?」

「宇宙君はサプライチームからビーム砲とバリアーの構造を勉強したんじゃなかったかな。」
「はい、ハンディウエポンについても同じようにしました。基本モデルの制作もやりました。」

「物質エネルギーの性質についてはどうだ?」
「はい、セクションの物理クラスでやったと思います。」

「では聞くが、宇宙君、雷はどうやって防ぐ?」
「えーっと、避雷針ですか?」
「そうだ、では雨は?」
「屋根です、傘かな。」
「どちらも正解だ。」

「簡単すぎると思いますけど。それが何か関係あるんですか?」 
                               つづく
コメント (9)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

訓練終了

2006年11月26日 | SF小説ハートマン
「宇宙(ひろし)君、大丈夫か?しっかりしろ!」

誰かが僕の名を呼んでいる。誰かが肩を揺すっている。真っ暗の空にただ一人放り出されたような感じだ。

コンソールのモニターは冷静さを取り戻し、バイオリストコンピュータのログオフを要求している。要求に応じると、ホストコンピュータは戦闘モードからバイオリストコンピュータの接続を解除した。
包み込んでいたシートが左右にゆっくりと開きながら起き上がり、コックピットから宇宙を解放した。3Dモニターは格納され、マニュアル通り記録の分析が始められた。

ヘッドセットをはずしてもまだ視覚がはっきりしない。吐き気も感じる。何度も経験しているがこの時間だけ慣れることができない。
訓練終了の文字の横を戦闘の分析リストがスクロールしていく。

2-3度首を回し、深呼吸すると感覚が戻ってきた。

「ずいぶん上達したじゃないか。最後は残念だったな。」
教官の声でやっと現実の世界を思い出した。
「あっ、教官、またやられちゃいました。くやしいです。」

最後の攻撃を受けるまでに宇宙が取るべき選択肢はいくつかあったが、それより宇宙が今一番気になっていることは、接近戦を挑んできた敵が使用した武器のことだった。

「防御はきちんとしてたと思うんですけど、最後は何が原因だったんですか。」
        つづく
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

戦闘…②

2006年11月23日 | SF小説ハートマン
パンッと短い破裂音を発して細かい金属片が花火のように広がった。
センサーを攪乱するチャフだ。モニター一面に障害物の表示が広がる。

すり抜けていく敵をロックオンし、その推進装置に衝撃ビームを叩きつけるまで正確に2秒かかった。ビームは狙い通り推進装置を破壊し、航行不能になった船体は激しく回転しながら弾き飛ばされたように遠ざかっていく。

おかしい。空き箱のような軽い手応えだ。
デコイ(囮)か!
しまった。バックを取られた。

チャフの影が消えたモニターが短い警告音を発した。ブルーの座標ラインの中にオレンジの特別色に明滅する敵機マーカーが異常な速さで接近する。
トップスピードで方向転換を繰り返すが振り切れない。ぴたりと追従する新型攻撃機の姿が3Dモニターにもくっきりと浮かび上がった。
ロックオンされたことを示す警告ランプが赤色に光り出した。コンソールはエスケープモードのタイミング計算に結論を出せず、モニターのカウントダウン数値は「3」のまま動かない。

防御バリアーの出力を最大に上げる。これでビーム攻撃にはとりあえず耐えられるはずだ。

意に反して敵は攻撃を仕掛けてこなかった。いつでも打ち落とせるという余裕を示しているのだろうか。逃げられるものなら逃げてみろという挑戦なのか。

実際ワープのタイミングを探しながら逃げ回る30秒はとても長く感じた。やっとの事でコンソールが答えを見つけ出し、エスケープモードへの突入を知らせるタイミングモニターのカウントダウンが「2」「1」と変わるのを確認する。

だが「0」を表示するわずか前、ドンッという衝撃が背後から襲いコックピットの明かりが一瞬で消えた。間をおかず襲ってきた、引きちぎられるような激しい爆風に宇宙(ひろし)は全ての感覚を失った。     つづく
コメント (23)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

戦闘

2006年11月21日 | SF小説ハートマン
戦闘状態に入ってからすでに30分が経過した。油断があったかも知れない。
コンソールの広域モニターに数十機の機影を見つけてからわずか数秒後に攻撃が開始された。

通常のバリアを突き破って船体を焼く高周波の音を感じた。バイオリストコンピュータにコンタクトしているスペースギアが素早く反応し、バリアの強度を上げたと同時に複数のビーム攻撃が襲ってきた。

宇宙(ひろし)は一瞬迷ったが、コンソールが推奨するエスケープモードをキャンセルし攻撃モードを選択した。
防御バリアは攻撃に使われたエネルギーと同量のエネルギーを消費する。1対数十機では圧倒的に不利だが、どうしても危ない時は逃げ出せばよいと簡単に思っていた。

これまでに半数以上の敵を戦闘不能にしてはいたが、3Dモニターに敵機がはっきりと確認できるまで接近したとき、逃げるべきだったことを悟った。敵に最新型の攻撃専用機が数機含まれていたのだ。
スピードはほぼ互角だが、運動性能は明らかに相手が上だ。後悔しても遅い。ただ実際の戦闘では経験と判断力が勝敗を分けるのが常だ。敵の最新型機をあやつっているコマンダーをバイオリストコンピュータがどう判断するかが問題だ。

バリアを全開にしても動き回っていてはワープ空間に逃げ込むことができない。めまぐるしく変わる状況にワープ軌道計算ができないのだ。
広域モニターに点滅するポイントが中心に向かって確実に集まってくる。
こうなったら残った敵を全部まとめて引き寄せて一気に急旋回するしか手はないだろう。そう思ったとき…          つづく
コメント (13)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ハートマン用語解説

2006年11月13日 | SF小説ハートマン
DNAクローン培養: 特定範囲のDNAを培養し、細胞や器官を作り出す、肉体の移植用
ETアンドロイド: 本文中で解説
G: 正方向の加速度
アクセススキャナ: 網膜や指紋を走査する事で個人を特定する機械、通常入り口に設置
アドレスチップ: 身元を確認するための集積回路
アフターバーナー: 宇宙船や戦闘機のターボ機能、一気に加速するとき使う
アンドロイド: 人と同じ肉体を持ったロボット
エーテル: 宇宙を満たすもの、物質ではない媒体
ギガトリップ: 麻薬の一種、本文中で解説
キャリーカート: 軌道を走る小型の車、半自動運転
コマンダー: スペースシップの乗組員
サイコウエーブ: 思考波、大脳の活動期に発生する微振動
サイココスマー: 強力な"念"の力で人の心を操る超能力者
サイバーネット: サイコウエーブを盗聴し分析するアンテナシステム
スペースギア: 個人用の小型宇宙船
スペースポート: 宇宙船の発着場
チタン蒸着: アルミ板にチタンを蒸着メッキして耐久性を増したもの
トリプルチューン: 麻薬の一種、本文中で解説
トレードパス: 密輸を避けるため貿易会社が発行する証明書
ナノマシーン: ナノミリメートル単位の精密さで作られた超微細ロボット、手術用、精密機械修理用がある
ナノワーム: 超微細病原虫
パーセク: 宇宙の距離を測る単位、1パーセク=うん光年
バイオリストコンピュータ: 手首のインターフェースからパルスを発し、未活動の脳を使用する生物コンピュータ
バイソン(フローズン): 独特の香りの付いた酒、20世紀にはズブロッカと呼ばれていた
ハザードスワップシフト: 本文中に解説有り
ハザードボックス: 非常事態の時全員に知らせる非常ベルが格納してある
ハッシーミルク: C-3惑星に生息する哺乳動物"クンクー"のミルクで栄養豊富
ハンディウエポン: 小型携帯武器
フェロモンコロン: 異性を刺激するフェロモンを調合した香水
フリートークカム: 通称テブラデピッチ、こめかみに埋め込まれたトランシーバー
プロトン電池: スタミナ系蓄電池(新世代sony製)
ホログラム: 立体的に見える絵や写真の総称
マクロファージ型ドラッグ: DNA操作されたウイルス状の対生物用の薬、免疫活動を麻痺させる
ミクロバギー: 麻薬の一種、本文中で解説
メディカルプール: 羊水に似た成分の無菌の水で満たしたプール、医療用に使われる
レーザースナップドライバー: 高密度レーザーによってねじの置き換えをするためのねじ回し、ねじらなくても止まる
レセプター: 神経の受容体に取り付いて感覚を麻痺させる科学物質
バーチャルヘッドセット: 視覚・聴覚による刺激で仮想空間に存在させるAV装置

よけい分かんないよ…              

コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

お手伝い

2006年11月12日 | SF小説ハートマン
面接でも良く質問されます。

「お手伝いはどんなことができますか?」

「はい、子どもには食事の前に食器を並べてもらっています。
それから、ポストから新聞や郵便を持ってきてくれます。
あと、洗濯物の片付けをよく手伝ってくれます。」

してくれた時は「ありがとう、良くできたね」と誉めます。


これって何か変じゃありませんか?   つづく
コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ハートマン外伝…①

2006年11月08日 | SF小説ハートマン
その時ハートマンは食事の手を止めてトントからの連絡を聞いた。

彼の思考波に飛び込んでくるトントの言葉は興奮に満ちたものだった。20000パーセクも離れている地球で仲間にすべき子供が見つかったというのだ。

その子の血液を調べてみると、プリン値が異常に高く。高尿酸血漿ではハートマンの師「ヨーナイ」を上回っている。このまま訓練を続ければ必ずTwo-Who(ここではセクションの長老のことなりよ)になるだろうと思われる。
長老達は許可するだろうか。子供は適応できるだろうか。

許可するの?しないの?ねえ、どっちにするのよう。うんもう、最初っから決まってるくせにぃ。いじわる。
おいおい、つねるなよ。痕が付くと女房がうるさいんだよ。

あなたどうなさったのこれ。いやぁこれはな、ちと会社で菜、あのぅそのぅ…
てな。。。    つづきません。
コメント (13)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする